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紙芝居の奇跡

◇◇ショートショートストーリー

絵本作家の沙希さんが書く絵本はとても温かく優しいと評判です。沙希さんは、子育てと、創作活動の合間を縫って、ボランティアをしています。レクリエーション介護士の資格を取って介護施設で、自作の紙芝居を披露しているのです。

この日沙希さんが訪れたのはグループホームです。

紙芝居のレクリエーションに参加したのは、8人のお年寄りでした。それぞれの状態もさまざまで、車いすの人、認知症や麻痺、失語症の人もいます。
沙希さんは、一人一人に、声をかけながら、お年よりの心に寄り添うアプローチをしています。

沙希さんの紙芝居は毎回、ストーリーが違っていてオリジナリティに溢れています。参加する人たちのエピソードを事前にリサーチしてそれをヒントに、創作しているのです。

沙希さんの表現力や、伝え方が楽しいのでお年寄りはいつも物語に夢中になります。この日の紙芝居は「ピアノをあきらめた女の子」のお話です。始まって10分、紙芝居は、クライマックスを向かえていました。

沙希さんの語りに引き込まれてお年寄りたちは紙芝居の世界に入り込んでいました。

「その女の子が、ピアノを習い始めて10年経った頃、彼女の才能を見出した有名なピアニストが支援してくれることになりました・・・・」

「そして、特別な演奏会でたくさんの人に腕前を披露することになったのです。その日はしとしとと雨が降っていました。彼女はタクシーに乗ることにしました。ところがその時、大変なことが起こったのです」

沙希さんがそう語って、次の絵を引き抜こうとした時です。前の席に座っていたおばあちゃんが、「ダメ、乗ったらダメ、ダメ」とびっくりするくらいの大きな声で叫びました。

そのおばあちゃんは、失語症で言葉が出ないはずでした。

ところが、大きな声が出たのです。奇跡が起きました。


おばあちゃんは、みどりさんと言いました。ピアニストを目指していました。ある演奏会に行く途中に交通事故にあってしまい、夢を諦めた過去がありました。

この紙芝居は、みどりさんのエピソードをもとに作ったものだったのです。

だから、みどりさんは「ダメ、乗ったらダメ」と車に乗ろうとする自分自身を止めたのです。出るはずのない声を振り絞って。その事故で指を怪我してしまったみどりさんはピアニストになる事をあきらめたのです。

みどりさんは、辛い経験を思い出すことで声を取り戻しました。


沙希さんは、みどりさんに近づいて声をかけました。「みどりさん、声が、出ましたねー、声が出ましたねー、よかった、本当によかったです・・・」


みどりさんは、暫くの間、呆然とその場に立ち尽くしていました。


沙希さんの紙芝居で奇跡が起きた瞬間でした。


【毎日がバトル:山田家の女たち】

 《紙芝居、懐かしいね思い出さい》


リビングでコーヒータイム、リラックスしているばあばとの会話です。

「おばあさん声が出て良かったねー、そんなこともあらいね、紙芝居を見なかったらそんなことは無かったんよ、私には分かる」


「お母さん紙芝居懐かしい・・・


「私らも子供の頃に飴を買うて、ようみ見よったよ、来るんが楽しみじゃった、拍子木を打ってからお話が始まるんよ上手なおじさんのお話にはのめり込みよった、ホント懐かしいわい」


私の幼い頃の思い出と母の思い出が繋がっている、昭和の時代はまだまだ様々なものの変化が緩やかだったな―と改めて感じました。私にとっても紙芝居は懐かしい幼き頃の思い出です。



 【ばあばの俳句】 

早起きのブログ親子や夏の朝          


私たち親子はぞれぞれにやりたいことがあって早起きをしています。母はイラストを描き、私はnoteの投稿の準備と記事を書いています。お互いが思い思いに充実した楽しい朝を向かえているのです。母はそんな状況を詠みました。




これから、日が長くなる分、楽しめる時間が増えました。また明日もブログに夢中な親子は、楽しい朝を向かえ、一日を始めます。


「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。

たくさんの記事の中から、「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただきありがとうございます。


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私のアルバムの中の写真から

また明日お会いしましょう。💗

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