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【詩】世界線をまたぐ声


テレパシーではなにも伝わらないよ
あなたの怒りや悲しみを湧きあがらせて
声になる

澄んだ歌声は 残響が跳ねかえる
最短距離できみを目指し 草原を駆けぬけていく
憂いなき自由の国で 薬莢が飛び交う
地面に落ちて カツンッと 渇いた音がした

ぼくたちは両耳を塞いで 
何も聞くまいと歩いている
こどもたちは無言で前を向き
黒板を睨んでは給食を食べる

公営のシェルターは 暑さでむせ返る
祈りに意志なんてなくてもいいさ
もう一度、笑い声のする方角へ

やあ そっちはどうだい
そっちの世界線では 
もう少しうまくやれているかい
歌うように、踊るように
立ち回れているかい
ぼくの声は届いているかい
聞こえたら返事をしてくれないか


グレープ味のガム 甘ったるい現実をかみ殺して
味がなくなればそれでおわり

こころと身体をべつの場所に置いて
つんざく声 雷鳴は がらんどうの身体に
どうしようもなく響いて
気づいたら 泣いていた

テレパシーではなにも伝わらないよ
あなたの怒りや悲しみを湧きあがらせて
声になる 叫びになる





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