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ロマンチックスタイルに慣れるには?【#37マッチングサイトリポート】

QPさんは自ら"I am a romantic guy."と言うだけありロマンチストです。わたしは逆に超リアリストなので彼の発言や行動に戸惑います。文化の違いも大きいのでしょうが、昭和的夫婦像の中で、言わなくてもわかる阿吽の呼吸で生きてきたわたしにとって、褒められることが苦手です。

ところが、QPさんにはその概念は理解できません。

見たこと、感じたことはストレートに言葉にします。面と向かってbeautiful, sexy, cute, wonderful, lovely…..と賛辞が並ぶとわたしはくすぐったくてのけぞりたくなります。 

"Good morning,  you are beautiful this morning, I love you."は米国人にとっては挨拶のようなものでも、日本語回路のわたしにとってはピンと来ません。

アラ還オヤジがアラ還妻に「おはよう、今日もあなたは美しい。愛してるよ」ときたらやっぱちょっとキモくないですか?って感覚です……。😆

なので、余分な言葉はわたしに向けないように伝えているのですが、QPさんはその類の言葉を制限されると困るようです。

米国ではスーパーで買い物をしていても、見ず知らずの人から"I like your shoes, so cute!!". (あなたの靴好き、かわいい)なんてことはよくあることです。気楽に賛辞をいうのは悪いことではないと思うものの、それほど美味しくもないのに「こんなに美味しいケーキは生まれて初めて食べました」と大げさに褒める、“言葉の軽さ”にわたしは閉口します。

背中のあいたドレスを着て、キラキラのハイヒールを履いてディナーに向かおうとしたとき、エレベーターの前で、

"You are so beautiful, and very very sexy!!"

わたしに"STOP IT!"と言われて、とっさに舌を出しています。

かなり頑張って賛辞の言葉を言わないように心がけても自然に出てきてしまうようです。

もちろん、褒め言葉なので言われて悪い気はしませんが、それでもとにかく慣れていなので気恥ずかしくて心地悪い。理屈では素直に"Thank you!"と返せばいいとわかっているのに、思わず赤面して下を向いてしまいます。

そのうちに、QPさんが自分の言いたいことを言わせてほしいと言い出しました。

「わかった。あなたの表現の自由を尊重しましょう。わたしも言われることに慣れるように努力します」

国民性や文化の違いから、わたしには照れくさいとか、恥ずかしいといった感覚があるので、人を上手く褒めることも褒められることもとことん下手だと再認識しました。

思い返せば、ここで登場したCEOのDaveさんの歯の浮くようなお世辞に違和感を覚えました。うれしいよりもキモいと思ってしまう感覚です。よくよく考えればそれは相手の問題ではなく、わたしの問題ですが逃げ出したくなる感覚が芽生えればQPさんともアウトです。😅

夫が他界するまで毎年、夫婦仲良く暮らすためのスパイスとしてカリビアンリゾートを楽しんできましたが、ふだんの暮らしでは見ることのない妻のドレスアップした姿を見て夫は喜んだものです。わたしとて、ときにはそんなスタイルを楽しめることにワクワクしました。でも、褒めてもらいたかったわけではありません。

ある日のディナーのあと、ピアノバーで飲んでいました。たまたま他のお客さんが途絶えバーテンダーとわたしたち二人だけになりました。ワインを何杯もいただいたあとで気分もよくて、わたしはピアノを弾き始めました。QPさんはワイングラスを片手に、傍らでわたしの演奏を聴いていました。

数曲弾いて席に戻ったときに耳元で「あなたが聞くことが苦手なことを今から言います」と前置きして話し始めました。

「昼間はビーチでのビキニ姿がとってもかわいい。夜はうってかわってセクシーで美しい女性に変身。会話は際限なくおもしろい。そしてピアノ演奏。あなたと今いっしょにバケーションを楽しんでいることが、ただただ夢のようでミラクルだ。ありがとう。ほんとうにありがとう。ボクはとてつもなくわくわくでうれしいです」(You are so cute and pretty in a bikini on the beach in the daytime. At night, you transform into a sexy beautiful woman. The conversation is endlessly interesting. And playing the piano for me!! To me, it's just a miracle to be enjoying a vacation with you right now. Thank you, thank YOU very much. I am thrilled and delighted right now.)

正確な表現は忘れてしまいましたが、概ねそんな感じでした。

いやはや、こういうことをサラッと言うわけです。

61歳の保守的昭和女としては、どんな顔して聞けばいいのかもわからないほどうろたえます。

QP さんは、気持ちを伝えないまま過ごすなんて苦しいし、それはボクがボク自身でいられないのと同じこと。言わないままバケーションを終えれば感情を表現しなかったことを後悔することになるからそれは無理と続けました。

老人学や家族学を専門分野としていたわたしの夫は、夫婦関係などについてもリサーチの課題として晩年取り組んでいました。それもあり、よく日本の夫婦関係と米国を比較しては夫婦で話題にしたものです。

長年、阿吽の呼吸で暮らしている日本の老夫婦の間では、美しいとかセクシーだとかの会話はなかなかうまれないと思います。日々の暮らしに追われ、年齢も重ねていけば男女としての情熱なんかどこかに消えてしまうものです。

それでもそんな言葉を掛け合える環境を持つ工夫をしたり、気持ちを言葉にする勇気をもつことは素敵なことだよね、という話をリゾートにでかけるたびしていたのでわたしも、理屈ではわかっているのです。この記事でもそんなことに触れていました。

夫は家が完成したら、そんなことをテーマにした本を書きたいなんてこともよく言っていました。夫が他界し、新たに米国人のQPさんと付き合いはじめて、思ったことは恥ずかしがらずに素直に表現することに慣れなければと思い始めています。


"還暦過ぎてもビキニライフね"は亡き夫との約束だから夫が買ってくれたビキニで。photo byQP



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