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【小説】「きみはオフィーリアになれない」

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謎の魚「オフィーリア」をめぐる、現代社会を生きる3人の群像劇。
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2020年8月の記事一覧

「きみはオフィーリアになれない」あとがき

こんにちは、やひろです。 長きにわたりここで連載してきました、「きみはオフィーリアになれ…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 最終話

「なに?」  女性は、珍しい花でも見るような目つきでこちらを見ている。この女はすべてをわ…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #111

 朝になると起き出さないわけにはいかず、美穪子は自室を出てリビングに向かう。コーヒーを淹…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #112

 三人で朝食を取ったが、会話らしい会話はない。もっとも、これはいつものことだ。私たちは、…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #113

 もちろん、それはそうだろう。瀧本が二人いるわけではない。ふたりとも同じ人間なのだ。  …

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #114

 玄関のカギを開け、ドアをゆっくりと開く。目を丸くしてこちらを見ている顔があった。安達凛…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #115

 自分と全く同じだ、と美穪子は思った。自分と同じように、安達凛子の腕は白く変色している。 「確かに、『魚』を使うな、とは言わなかったけれど……」と安達凛子は呟いた。「そうなのね。じゃあ、瀧本先生も、そうなのよね、きっと」 「違うんです。その、なんというか、偶然、はずみで、その」 「別に責めてるわけじゃないわ。別にいいの。もともと、あたしだって似たような立場なんだし。ただ、私は、この『魚』を返してもらいたいだけなの」  魚を返してしまっても構わないのではないか、と美穪子は一瞬思

「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #116

「気は済んだ?」  気付くと、美穪子は仰向けになっていて、安達凛子が馬乗りになり、美穪子…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #117

 美穪子は自分の手首が白くなっていることを思った。そして、「向こうの世界」で、スピカと名…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #118

 安達凛子はゆっくりと振り返ると、じっと美穪子の目を見た。そして、美穪子の手首に目をやる…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #119

 もうごちゃごちゃ考えることは辞めよう、と思った。もう一度、向こうの世界に行けばいいのだ…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #120

 玄関のドアを開けるのも恐ろしかったが、ここから出ないことには何もはじまらない。美穪子は…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #121

 その人に手を引かれてクリニックの中へと入る。女性に薦められるがままに、ソファに腰掛けた…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 #122

 自分がいる場所がわからないから、帰ることもできない。電車に乗ろうにも、駅の名前もわからない。お金も持っていないし、おまけに靴もない。  美穪子は力が抜け、その場に座り込んだ。 「どうしましたか?」  気付くと、人に囲まれていた。顏を上げると、警察官だということがわかった。しかも、三人もいる。中年の警官二人と、若い警官で、話しかけてきたのは若い警官だということがわかった。  美穪子は黙って俯いている。 「立てますか?」  警官はさらに話しかけてくる。若い警官は、かがみ込んで、