まばたきの季節

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短編戯曲「私の好きだった週末」

・登場人物 本城拓馬 本城紗和 本城真紀・・・拓馬の母 バニラ・・・拓馬の実家の犬 ◆本編1.車のなか 高速道路。渋滞している。 車中、運転席に紗和、助手席に拓馬。 拓馬のスマートフォンとカーステレオを無線で繋いで、音楽が流れている。 しばらくして、メールの通知がくる。 拓馬、スマートフォンを確認して、視線を窓の外に移す。 拓馬 「何時に着く?」 紗和 え? 拓馬 母さんから。 紗和 あー。…あと100キロだから… 窓の外は良い天気。車が永遠に続いている。 紗

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柳生二千翔「『まばたきの季節』リサーチ報告会+戯曲リーディング」実施にあたって

※イベント詳細:http://www.kac.or.jp/events/25678/ 『まばたきの季節』というプロジェクトの名前は、その街の1年をまばたきのように景色や時間を切り取っていく、というコンセプトに由来します。しかし何度も素早くシャッターを切るというよりは、そのスピードはゆっくりで、そこに映った1枚の景色をじっくりと、しかしぼんやりと眺めるような時間になればと思っていました。 滞在制作を通して何かしらの作品を描く、という経験は何度もしています。 しかし、(一つの

戯曲『ふちどり かたぬき 愛とよべよ』 を書くまえに

(2019年3月京都滞在を通して) 柳生二千翔×京都芸術センターの協働プロジェクト『まばたきの季節』の一環で、 2019年5月に、“許せないことに疲れている” をテーマに、至極個人的な生い立ちや、それに対する私の思いを背景とした戯曲を発表します。タイトルは『ふちどり かたぬき 愛とよべよ』 とします。 これと同一のアプローチをした過去作品は1度あります。しかしその際は失敗しました。思いが強すぎて「私」と「世界」の距離が近すぎたためです。 今回の滞在ではクラブや大衆酒場、銭

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2018/11秋滞在→→→2019/03春の滞在にかけての雑感

2018年の夏と秋の京都での滞在を通して、『ウォーターフロント』という戯曲を書きました。(https://note.mu/yagyunichika/n/n7fc79488bbd4) 夏の滞在については以下にまとめています。 秋の滞在に寄せて(柳生二千翔より) 夏は、その場所に滞在することを通して、浮ついた状態(観光気分)から脱すること/土地に身体を馴染ませる感覚を意識的に大事にしていました。外部の人間が、初めてその土地にやってきて触れる新鮮な体験、一面的なおもしろさを表す

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戯曲「ウォーターフロント」 06(完)/06

◆6場 あたらしい川辺にて(70年後) 【春】・登場人物 見物客(ヌートリアを見る) 飯田 桜井 カップル(男) カップル(女) 女1      他 70年後。氾濫によって、新しく生まれた川辺にて。 見物客 あ、ヌートリア! ヌートリアが泳いで、川岸に現れる。 わらわらと見物客が増え始める。「わー」「すごーい」「ヤバい」「キモい」などを言いながら集まる。。 以降、舞台上には度々人間が通りかかるようになる。川の日常を作る。 ヌートリアは草を食べ続ける。時々移動し

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戯曲「ウォーターフロント」 05/06

◆5場 湖畔にて・登場人物 記憶の人(その土地を覚えている) 川が湖になった。中央に浮かぶ湖畔にて。 以下、記憶の人の言葉。 この湖の前は、川と街がありました。川が流れる前は、そこにたくさんの家が建っていました。建てられる前は、たくさんの自然で満ちていました。その前にも川が流れていました。そして元をたどれば、ここはほとんど海でした。 消え去った大地について想像します。忘れ去られた彼ら彼女らについて想像します。一箇所に留まることしか許されなかったあなた。もしも私が一人一人の

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戯曲「ウォーターフロント」 04/06

◆4場 電車のホームにて 【冬】・登場人物 利信(1場に出てきたカップルの男) 朝。雨が降っている。高架鉄道の電車のホーム。 利信 朝子に振られて初めて迎えるクリスマスの前に、まるでイベントの熱を冷やすように降り出した雨は、一向に止む気配がなくて、それからあっという間に1ヶ月が経った。1週間ぐらいの頃は、テレビも芸能人の不倫問題の方に時間が取られて大した世間の関心も買っていなかったけれど、2週間、3週間となってこれは大変だと、専門家が引っ張りだこになった。 でも、その頃に

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戯曲「ウォーターフロント」 03/06

◆3場 山中にて 【冬】・登場人物 栞(今となっては冷え性) 初(占いアプリに課金した) 早朝だが暗闇。曇天である。 栞 寒すぎませんか。寒すぎますよね。 初 暑くなったり寒くなったり。 栞 …今日雨が降るか知ってます? テレビで天気予報見ましたか? 初 朝はテレビを見ない主義なんです。 栞 ああ、持ってはいるんですね。 初 テレビは好きです。勝手に番組が流れるので、ネットよりも能動的になる必要がありませんから。 栞 それじゃあラジオでも良いのではないですか? 初 そうで

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戯曲「ウォーターフロント」 02/06

◆2場 隣町にて(かつて川があった街) 【秋】・登場人物 母 姉 弟 カエル 一軒家。乱雑な部屋。引越しの途中で段ボールなどが積まれている。大掃除の後。夕方。 カエルの鳴き声がする。 弟 カエル。 鳴き声がする。 姉 え、なにこれ 弟 カエルが鳴いてる。 母 へえ、珍しい。 鳴き声がする。 弟 …家の中じゃない? 姉 え、ウソ最悪、どこ。 鳴き声がする。 家族で家の中を探し始める。 弟 なんの種類だろう。 姉 どうでもいいから早く捕まえてよ。 母 カエルを最

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戯曲「ウォーターフロント」 01(始)/06

この戯曲は、川岸にいる様々な断片的な出来事や思いを羅列している。 人の点(一瞬)を連続で描き、線(川/時間/街)を引いた。 川では多くのもの/ことが流れてくる。けれどその全てを掴むことはできない。 本編◆1場 川辺にて 【夏】・登場人物 男 女1 見物客(ヌートリアを見る見物客) 老人1(生き物が好き) 女2・女3(大学生) サラリーマン 利信・朝子(カップル) 小学生を連れた母親 サッカー少年 ミュージシャン志望 川の清掃員 男・女 野鳥の会 殺し屋 修学旅行生

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