フェロモンの話

みんなのことがあんまり好きじゃないことがバレてしまった。暑さでぼんやりしていて、脳からトロっと漏れた。帰りに買ったペットボトルの水が腐っていて、口に含んだ瞬間すぐに吐き出した。自分の生まれた季節は、夏は、汚いものが増えすぎる。生命はとても臭いものだ。
時すでに遅く、自分の身体もドロドロに腐敗していく。清潔になりたいと、ただそれだけを祈りながら蛇口をひねるが、消毒された水道水は、ドロドロを押し流していくだけで、溶かすことはできなくて、どんぶらこを続けて次第に海に出る。底へ沈みながら魚やエビ、プランクトンが寄ってたかってつっついてくるので、人生で初めて『モテモテ』を体験するのだった。腐敗臭はフェロモンに変わっていた。

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