柳生二千翔

劇作家/演出家/映像作家。演劇ユニット『女の子には内緒』主宰、劇団『青年団』演出部所属…

柳生二千翔

劇作家/演出家/映像作家。演劇ユニット『女の子には内緒』主宰、劇団『青年団』演出部所属。[Mail] yagyu.works@gmail.com |[HP] http://nichikayagyu.tumblr.com

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  • 戯曲まとめ

    これまで執筆した戯曲を一部公開しています

  • まばたきの季節

    「まばたきの季節」は、2018-2019年にかけて、四季に合わせて一週間ずつ、計4回京都に滞在し戯曲を執筆する、京都芸術センターとの共催事業です。

最近の記事

短編戯曲「目尻がとろける」

サラリーマンの山崎は、まとまった金が手に入るたびに整形を繰り返し、最良の自分を見つけようとしている。ある日、交通事故をきっかけに彼の右手が意志を持ち始め…。 ひとり多ずもう(監修:松井周[サンプル])参加作品 上演時間/15分 キャスト/3人 ◆登場人物 山崎まひる…商社勤務のサラリーマン。ボーナスが入るたびに、整形をする趣味がある。 右腕 左腕 胃 その他、山崎の体の部位 ウェイター 同窓生…山崎の学生時代の同窓生。仲良くもなかった。 ◆本文山崎、現れる。 山崎

    • 戯曲「Dreams of Dreams」 03(完)/03

      6場 【22】 AM ナイト・クルージング(猫の世界)夜が更けていく。 街の風景が蠢いている。 死んだ猫・みーちゃんが喋り出す。

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      • 戯曲「Dreams of Dreams」 02/03

        3場 【9】PM 及川についての証言⑴ 近所の子・白石実①夕方になる。 白石 及川夕ちゃんは、市営団地の同じ棟に住んでいたんで、小さい頃はよく遊ぶっていうか、一緒にいました。一緒にいるうちの1人でした。世の中的にはもう出生率下がってきた時期だったけど、家賃も低めっていうか、ブルーカラー一色の、まあそういう地域だったんで、ある意味暮らしやすいんですよね。ガラは悪いけど、子供も多かった気がします。 …割と大人しい子だったと思います。…ああ、日曜とか休みの日だったと思うんですけ

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        • 戯曲「Dreams of Dreams」 01(始)/03

          上演時間/60分 キャスト/17人 (自身の上演の際はキャスト3名で上演) ◆あらすじ 再開発が進む地方都市・朝日が丘。冬のある日。深夜0時50分。 不眠症の及川は夜な夜な街を徘徊し、SNS上で動画を生配信している。 彼女は自分が死んでしまったら、その存在はすぐに忘れられてしまうのではないかと恐れ、自分と住んでいる街を記録し続ける。 同じ時刻、その街で暮らす多くの人々が現れ、各々の日常を送る。帰り道を急ぐ者、仕事に勤しむ者、逢引きをする者など、それぞれ思いや悩みを持津ながら

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        短編戯曲「目尻がとろける」

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        • 戯曲まとめ
          19本
        • まばたきの季節
          19本

        記事

          ★戯曲の上演申請について★

          上演を希望する場合は有料、無料公演ともに柳生まで必ずご連絡ください。 ワークショップ、稽古場での使用は自由に行ってもらって構いませんが、一言ご連絡いただければ活動の励みになります。 Mail:yagyu.works●gmail.com (●→@) その際は以下の要綱をお知らせください。 上演料に関しては事前にお問い合わせください。 (無料公演の場合には、企画内容を確認させていただいた上でのご相談となります。) * * * * * (1)上演団体名(学校・部活・劇団

          ★戯曲の上演申請について★

          戯曲「ひたむきな星屑」 03(完)/03

          10 《謝罪・翌日のフードコート裏》 スタッフ控室にて。  大沼が現れる。 大沼  青子さん。 青子  …お疲れ様です。 大沼  お疲れ様。逃げてきちゃった、人すごくて。 青子  まだ落ち着かないですか、避難してるお客さん。 大沼  まあ、ことがことだしね。イライラしちゃってて、みんな。 青子  ですよね。 大沼  やー、怖いよね、ああいうの。 青子  ええ。 大沼  …吸うんだね。 青子  あ、いります? 大沼  いや、もうやめたから。 青子  ああ。  間。 青子 

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          戯曲「ひたむきな星屑」 03(完)/03

          戯曲「ひたむきな星屑」 02/03

          6 《時間経過(二ヶ月後)・メール・フードコート》 大沼、現れる。自室でメールを打っている。 大沼  青子さん。こんばんは。今日もお疲れ様です。夜シフトの方も、引き続き、よろしくお願いします。働き始めて二ヶ月ほど経ちますが、特に困ったことはないでしょうか。何かありましたら私にも遠慮なく聞いてくださいね。  間。返事がない。 大沼  最近冷えてきたので、体調には気をつけて下さい。  間。返事がない。 大沼  もうすぐ試用期間終わるので、今度、昇給の話させてもらいますね

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          戯曲「ひたむきな星屑」 02/03

          戯曲「ひたむきな星屑」 01(始)/01

          第一回 田畑実戯曲賞 受賞作 上演時間/90分 キャスト/5人(女3・男2) ◆あらすじ 私たちは、いったいどこに向かおうとしているのだろうか? この街は、入り口でも出口でもない。 朝日ケ丘には新たに建造された高速道路が敷かれている。 街を縦断するように伸びる道。渋滞の高速道路には赤いテールランプが輝いている。 そこに併設されたサービスエリアが、現在の街の主産業となった。 数年ぶりにこの街に帰ってきた青子は姪の加絵と再会する。久しぶりに再会した加絵は、誰とでも寝る女性

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          戯曲「ひたむきな星屑」 01(始)/01

          戯曲「メゾンの泡」 04(完)/04

          4場【11】 再会  綿貫、バイトが終わり、帰ろうとエレベーターを待っている。   エレベーターに入る。   遅れて、真矢が滑り込んで来る。 真矢 すみません、乗ります。 綿貫 あ。   間。   綿貫、ドアを開けっ放しにする。   真矢、無事乗れるが、綿貫と気づいて気まずくなる。 真矢 あ…こんにちは。 綿貫 こんにちは。…62階でいいですか。 真矢 あ、はい。   間。 綿貫 お久しぶりですね。 真矢 あ、はい。

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          戯曲「メゾンの泡」 04(完)/04

          戯曲「メゾンの泡」 03/04

          3場【7】 ハッピーバーズデー  綿貫、自室に帰って来て、京子の家に悠介の私物を投げ込む。 京子 それから何度も、悠介さんの私物が届くようになり、彼は、ますます家に帰ってこなくなっていた。隣の部屋に入り浸っているのか、私にはもうよく分からない。生活費は振り込んでくれる。それ以外は音沙汰なし。このまま、ひっそりと息ができるくらいの隙間で、毎日過ごせたらいいのに。死んでいないだけでも嬉しい。死んでいたら悲しい。例え破綻していたとしても、私はこの、ままごとを続けたかった。   

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          戯曲「メゾンの泡」 03/04

          戯曲「メゾンの泡」 02/04

          2場【4】 隣の部屋  京子と真矢、部屋の整理を続ける。   やがて真矢は就活に向かう。   京子、椅子に座る。 綿貫 新暦73年10月5日、最近、隣の部屋が騒がしくなってきた。今まではむしろ静かすぎたのだが、どうも声の大きい女が新しく増えたようで、壁も薄いから割と筒抜け。何だ、急に楽しそうだな。その賑やかな部屋の横で、K太郎は寝ている。K太郎がここに通うようになったのは半年ほど前で、頻度はその時々によって変わるけど、最近はよほど寂しいのかよく顔を見かける。彼は私に対して嘘

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          戯曲「メゾンの泡」 02/04

          短編戯曲「私の好きだった週末」

          ・登場人物 本城拓馬 本城紗和 本城真紀・・・拓馬の母 バニラ・・・拓馬の実家の犬 ◆本編1.車のなか 高速道路。渋滞している。 車中、運転席に紗和、助手席に拓馬。 拓馬のスマートフォンとカーステレオを無線で繋いで、音楽が流れている。 しばらくして、メールの通知がくる。 拓馬、スマートフォンを確認して、視線を窓の外に移す。 拓馬 「何時に着く?」 紗和 え? 拓馬 母さんから。 紗和 あー。…あと100キロだから… 窓の外は良い天気。車が永遠に続いている。 紗

          短編戯曲「私の好きだった週末」

          柳生二千翔「『まばたきの季節』リサーチ報告会+戯曲リーディング」実施にあたって

          ※イベント詳細:http://www.kac.or.jp/events/25678/ 『まばたきの季節』というプロジェクトの名前は、その街の1年をまばたきのように景色や時間を切り取っていく、というコンセプトに由来します。しかし何度も素早くシャッターを切るというよりは、そのスピードはゆっくりで、そこに映った1枚の景色をじっくりと、しかしぼんやりと眺めるような時間になればと思っていました。 滞在制作を通して何かしらの作品を描く、という経験は何度もしています。 しかし、(一つの

          柳生二千翔「『まばたきの季節』リサーチ報告会+戯曲リーディング」実施にあたって

          戯曲『ふちどり かたぬき 愛とよべよ』 を書くまえに

          (2019年3月京都滞在を通して) 柳生二千翔×京都芸術センターの協働プロジェクト『まばたきの季節』の一環で、 2019年5月に、“許せないことに疲れている” をテーマに、至極個人的な生い立ちや、それに対する私の思いを背景とした戯曲を発表します。タイトルは『ふちどり かたぬき 愛とよべよ』 とします。 これと同一のアプローチをした過去作品は1度あります。しかしその際は失敗しました。思いが強すぎて「私」と「世界」の距離が近すぎたためです。 今回の滞在ではクラブや大衆酒場、銭

          戯曲『ふちどり かたぬき 愛とよべよ』 を書くまえに

          2018/11秋滞在→→→2019/03春の滞在にかけての雑感

          2018年の夏と秋の京都での滞在を通して、『ウォーターフロント』という戯曲を書きました。(https://note.mu/yagyunichika/n/n7fc79488bbd4) 夏の滞在については以下にまとめています。 秋の滞在に寄せて(柳生二千翔より) 夏は、その場所に滞在することを通して、浮ついた状態(観光気分)から脱すること/土地に身体を馴染ませる感覚を意識的に大事にしていました。外部の人間が、初めてその土地にやってきて触れる新鮮な体験、一面的なおもしろさを表す

          2018/11秋滞在→→→2019/03春の滞在にかけての雑感

          戯曲「ウォーターフロント」 06(完)/06

          ◆6場 あたらしい川辺にて(70年後) 【春】・登場人物 見物客(ヌートリアを見る) 飯田 桜井 カップル(男) カップル(女) 女1      他 70年後。氾濫によって、新しく生まれた川辺にて。 見物客 あ、ヌートリア! ヌートリアが泳いで、川岸に現れる。 わらわらと見物客が増え始める。「わー」「すごーい」「ヤバい」「キモい」などを言いながら集まる。。 以降、舞台上には度々人間が通りかかるようになる。川の日常を作る。 ヌートリアは草を食べ続ける。時々移動し

          戯曲「ウォーターフロント」 06(完)/06