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戯曲まとめ

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★戯曲の上演申請について★

上演を希望する場合は有料、無料公演ともに柳生まで必ずご連絡ください。 ワークショップ、稽古場での使用は自由に行ってもらって構いませんが、一言ご連絡いただければ活動の励みになります。 Mail:yagyu.works●gmail.com (●→@) その際は以下の要綱をお知らせください。 上演料に関しては事前にお問い合わせください。 (無料公演の場合には、企画内容を確認させていただいた上でのご相談となります。) * * * * * (1)上演団体名(学校・部活・劇団

短編戯曲「目尻がとろける」

サラリーマンの山崎は、まとまった金が手に入るたびに整形を繰り返し、最良の自分を見つけようとしている。ある日、交通事故をきっかけに彼の右手が意志を持ち始め…。 ひとり多ずもう(監修:松井周[サンプル])参加作品 上演時間/15分 キャスト/3人 ◆登場人物 山崎まひる…商社勤務のサラリーマン。ボーナスが入るたびに、整形をする趣味がある。 右腕 左腕 胃 その他、山崎の体の部位 ウェイター 同窓生…山崎の学生時代の同窓生。仲良くもなかった。 ◆本文山崎、現れる。 山崎

戯曲「Dreams of Dreams」 01(始)/03

上演時間/60分 キャスト/17人 (自身の上演の際はキャスト3名で上演) ◆あらすじ 再開発が進む地方都市・朝日が丘。冬のある日。深夜0時50分。 不眠症の及川は夜な夜な街を徘徊し、SNS上で動画を生配信している。 彼女は自分が死んでしまったら、その存在はすぐに忘れられてしまうのではないかと恐れ、自分と住んでいる街を記録し続ける。 同じ時刻、その街で暮らす多くの人々が現れ、各々の日常を送る。帰り道を急ぐ者、仕事に勤しむ者、逢引きをする者など、それぞれ思いや悩みを持津ながら

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戯曲「Dreams of Dreams」 02/03

3場 【9】PM 及川についての証言⑴ 近所の子・白石実①夕方になる。 白石 及川夕ちゃんは、市営団地の同じ棟に住んでいたんで、小さい頃はよく遊ぶっていうか、一緒にいました。一緒にいるうちの1人でした。世の中的にはもう出生率下がってきた時期だったけど、家賃も低めっていうか、ブルーカラー一色の、まあそういう地域だったんで、ある意味暮らしやすいんですよね。ガラは悪いけど、子供も多かった気がします。 …割と大人しい子だったと思います。…ああ、日曜とか休みの日だったと思うんですけ

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戯曲「Dreams of Dreams」 03(完)/03

6場 【22】 AM ナイト・クルージング(猫の世界)夜が更けていく。 街の風景が蠢いている。 死んだ猫・みーちゃんが喋り出す。

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戯曲「ひたむきな星屑」 01(始)/01

第一回 田畑実戯曲賞 受賞作 上演時間/90分 キャスト/5人(女3・男2) ◆あらすじ 私たちは、いったいどこに向かおうとしているのだろうか? この街は、入り口でも出口でもない。 朝日ケ丘には新たに建造された高速道路が敷かれている。 街を縦断するように伸びる道。渋滞の高速道路には赤いテールランプが輝いている。 そこに併設されたサービスエリアが、現在の街の主産業となった。 数年ぶりにこの街に帰ってきた青子は姪の加絵と再会する。久しぶりに再会した加絵は、誰とでも寝る女性

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戯曲「ひたむきな星屑」 02/03

6 《時間経過(二ヶ月後)・メール・フードコート》 大沼、現れる。自室でメールを打っている。 大沼  青子さん。こんばんは。今日もお疲れ様です。夜シフトの方も、引き続き、よろしくお願いします。働き始めて二ヶ月ほど経ちますが、特に困ったことはないでしょうか。何かありましたら私にも遠慮なく聞いてくださいね。  間。返事がない。 大沼  最近冷えてきたので、体調には気をつけて下さい。  間。返事がない。 大沼  もうすぐ試用期間終わるので、今度、昇給の話させてもらいますね

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戯曲「ひたむきな星屑」 03(完)/03

10 《謝罪・翌日のフードコート裏》 スタッフ控室にて。  大沼が現れる。 大沼  青子さん。 青子  …お疲れ様です。 大沼  お疲れ様。逃げてきちゃった、人すごくて。 青子  まだ落ち着かないですか、避難してるお客さん。 大沼  まあ、ことがことだしね。イライラしちゃってて、みんな。 青子  ですよね。 大沼  やー、怖いよね、ああいうの。 青子  ええ。 大沼  …吸うんだね。 青子  あ、いります? 大沼  いや、もうやめたから。 青子  ああ。  間。 青子 

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短編戯曲「私の好きだった週末」

・登場人物 本城拓馬 本城紗和 本城真紀・・・拓馬の母 バニラ・・・拓馬の実家の犬 ◆本編1.車のなか 高速道路。渋滞している。 車中、運転席に紗和、助手席に拓馬。 拓馬のスマートフォンとカーステレオを無線で繋いで、音楽が流れている。 しばらくして、メールの通知がくる。 拓馬、スマートフォンを確認して、視線を窓の外に移す。 拓馬 「何時に着く?」 紗和 え? 拓馬 母さんから。 紗和 あー。…あと100キロだから… 窓の外は良い天気。車が永遠に続いている。 紗

戯曲「ウォーターフロント」 01(始)/06

この戯曲は、川岸にいる様々な断片的な出来事や思いを羅列している。 人の点(一瞬)を連続で描き、線(川/時間/街)を引いた。 川では多くのもの/ことが流れてくる。けれどその全てを掴むことはできない。 本編◆1場 川辺にて 【夏】・登場人物 男 女1 見物客(ヌートリアを見る見物客) 老人1(生き物が好き) 女2・女3(大学生) サラリーマン 利信・朝子(カップル) 小学生を連れた母親 サッカー少年 ミュージシャン志望 川の清掃員 男・女 野鳥の会 殺し屋 修学旅行生

戯曲「ウォーターフロント」 02/06

◆2場 隣町にて(かつて川があった街) 【秋】・登場人物 母 姉 弟 カエル 一軒家。乱雑な部屋。引越しの途中で段ボールなどが積まれている。大掃除の後。夕方。 カエルの鳴き声がする。 弟 カエル。 鳴き声がする。 姉 え、なにこれ 弟 カエルが鳴いてる。 母 へえ、珍しい。 鳴き声がする。 弟 …家の中じゃない? 姉 え、ウソ最悪、どこ。 鳴き声がする。 家族で家の中を探し始める。 弟 なんの種類だろう。 姉 どうでもいいから早く捕まえてよ。 母 カエルを最

戯曲「ウォーターフロント」 03/06

◆3場 山中にて 【冬】・登場人物 栞(今となっては冷え性) 初(占いアプリに課金した) 早朝だが暗闇。曇天である。 栞 寒すぎませんか。寒すぎますよね。 初 暑くなったり寒くなったり。 栞 …今日雨が降るか知ってます? テレビで天気予報見ましたか? 初 朝はテレビを見ない主義なんです。 栞 ああ、持ってはいるんですね。 初 テレビは好きです。勝手に番組が流れるので、ネットよりも能動的になる必要がありませんから。 栞 それじゃあラジオでも良いのではないですか? 初 そうで

戯曲「ウォーターフロント」 04/06

◆4場 電車のホームにて 【冬】・登場人物 利信(1場に出てきたカップルの男) 朝。雨が降っている。高架鉄道の電車のホーム。 利信 朝子に振られて初めて迎えるクリスマスの前に、まるでイベントの熱を冷やすように降り出した雨は、一向に止む気配がなくて、それからあっという間に1ヶ月が経った。1週間ぐらいの頃は、テレビも芸能人の不倫問題の方に時間が取られて大した世間の関心も買っていなかったけれど、2週間、3週間となってこれは大変だと、専門家が引っ張りだこになった。 でも、その頃に

戯曲「ウォーターフロント」 05/06

◆5場 湖畔にて・登場人物 記憶の人(その土地を覚えている) 川が湖になった。中央に浮かぶ湖畔にて。 以下、記憶の人の言葉。 この湖の前は、川と街がありました。川が流れる前は、そこにたくさんの家が建っていました。建てられる前は、たくさんの自然で満ちていました。その前にも川が流れていました。そして元をたどれば、ここはほとんど海でした。 消え去った大地について想像します。忘れ去られた彼ら彼女らについて想像します。一箇所に留まることしか許されなかったあなた。もしも私が一人一人の