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戯曲「メゾンの泡」 03/04

3場

【7】 ハッピーバーズデー

  綿貫、自室に帰って来て、京子の家に悠介の私物を投げ込む。

京子 それから何度も、悠介さんの私物が届くようになり、彼は、ますます家に帰ってこなくなっていた。隣の部屋に入り浸っているのか、私にはもうよく分からない。生活費は振り込んでくれる。それ以外は音沙汰なし。このまま、ひっそりと息ができるくらいの隙間で、毎日過ごせたらいいのに。死んでいないだけでも嬉しい。死んでいたら悲しい。例え破綻していたとしても、私はこの、ままごとを続けたかった。

  川上、報告書を渡すために京子の部屋に現れる。
  どこかの部屋から、パーティーのように騒がしい音が漏れ聞こえる。

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