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手にとれば愛おしい気持ちがあふれ出す、贈りものの魔法

以前「自分に贈りものをするということ」という記事を書いた。
その記事はこれまで書いた記事の中でも一番多くの方に届き、noteのおすすめ記事にも選んでいただいた。
また、昨年から「古道具と雑貨 田園」をひらいている(イベントへの出店を行っています)ことで、人とものをつなぐことについての文章を書き残したいとも思うようになったのだ。
今回はタイトルのとおり、まわりの人たちからの贈りもののことについて書いてみる。

オールドコーチのショルダーバッグ

「オールドコーチ、ほしいなぁ」と思いながらちょくちょく古着屋さんをながめていたら、なんと実家で母が若いころに使っていたものを見つけた!
ヴィンテージ品なので古着屋さんでもそれなりのお値段はするしなぁ、と購入をためらっていたし、なによりも母が使っていたものを譲りうけることができたのがうれしい。
むかしの郵便屋さんのバッグのようなかたちもお気に入り。夏はブラウス&デニム、冬はチェックのコートと一緒に。年中使えてどんな服装にもなじんでくれる心強いバッグだ。

わたしのイラスト

BAKE時代の元同僚にイラストレーターの友人がいる。
当時は在宅勤務だったので会社で会うことはほぼなかったが、インスタのDMで急に誘ったり誘われて遊びに行ったり、鎌倉で昼間からビールを飲んだり。仕事でもわたしが弱っている時期にたくさん助けてもらい、支えられてきた。
「いつか自分のイラストを書いてもらおう」と思っていたら、彼女のほうから「やぎさんを描きたい」と言ってくれたのだ。
友人(その友人ともBAKEつながりで知り合った)と一緒にホールケーキを作って食べた時の写真を描いてもらった。いまはデスクの前に飾って「甘いものを食べながら明日もがんばろう」と元気をもらっている。

鳥の楊枝入れ

(となりに写っているのは「鳩車」という長野の郷土玩具。これもかわいいでしょ)

BAKEで担当していたプロジェクトがきっかけで親しくなった友人が誕生日に贈ってくれた鳥さんの楊枝入れ。
「キッチンや食卓まわりのものを贈りたい、ただうつわなどすでに色んなものを持っていそうだな…」と私のInstagramの投稿をさかのぼって見て、持っていなさそうかつわたしの持っているうつわと合いそうなものを、と時間をかけて選んでくれたのがたまらなくうれしい。(ちなみに彼女と彼女のお母さまともお揃い!)
キッチンで必ず目につく棚にちょこんと置いていて、朝起きたら思わず声をかけたくなる可愛さだ。

マッチ箱風のおみくじ

鳥の楊枝入れをくれた友人が仕事で京都の「京都徳力版画館」さんを取材したそう。
そのときに取材先の方にわたしのこと(「古道具と雑貨 田園」をひらいていること、マッチ箱を集めていること)を話してくれたらしく、商品として販売されているおみくじ(見た目がマッチ箱…!)を「その子にあげなよ!」と言って渡してくれたらしい。
自分の知らないところで、自分の話を聞いただれかの心が動く。なんだか照れくさいような、心地よいくすぐったさを感じた。

次に京都に行くときには「京都徳力版画館」さんにも必ず足を運びたい。

ジャズ羊羹が入っていた箱

湯布院の「ジャズ羊羹 classic」が入っていた箱は、友人からの湯布院みやげとしていただいたもの。羊羹そのものもおいしかった(なぜか羊羹の写真を撮りそびれてしまった…泣)のだけれど、食べ終えたあとの箱が重宝している。
私は羊羹をいただいた当時は不眠の症状があったため睡眠導入剤を、いまは頻脈をおさえる薬を飲んでいるのだが、この箱が薬入れにぴったりなのだ!
黒地なので毎日さわっても汚れが目立たず、机の上のインテリアも引き締まる気がするし、ちょっぴりかすれたピアノのイラストもかわいらしい。
できるだけ薬は飲みたくないけれど、すこやかに暮らしていくために服薬が必要になることもこれからもあるだろう。
「薬を飲む」というあまり気が進まないけれど毎日の習慣になることが、この箱にめぐり合えたことでちょっぴり楽しくなった気がしている。

さそり座モチーフのブローチ

夜空に浮かぶ星座がモチーフのブローチを贈ってくれたのは、Instagramをとおして知り合た友人。
たまたま近所(西荻)で暮らしていることがわかり会ってみたら、同じ沖縄出身、そして同じ大学で同じゼミのひとつ違いだったことがわかった!(ちなみにゼミの教授も西荻暮らし歴がある)
地元でなにかしら一緒になるタイミングもあっただろうけど、たがいに上京してSNS&西荻の街でめぐり合ったなんて、ひととの出会いは面白いなぁと思う。
わたしは自分に自信がないほうで(多分)、まわりのひとにも「もっと自信持って」と言われることも多いのだが、ブローチを胸につけると、不思議といつもよりも自信を持てる気がしている。
おばあちゃんになってもニットやコートにこのブローチをつけて「さそり座の女が通るわよ」と胸を張って歩きたい。いつまでもかわいらしい装いでお出かけしたいと思わせてくれるブローチだ。
(ブローチの作家さんは失念。西荻窪の「ニヒル牛」さんで購入したそうです。)

ひし形の染付のうつわ

地域おこし協力隊として空き家担当をしていたときに、とある持ち主さんの奥さまからいただいたひし型の染付のうつわ。
私が「古道具と雑貨 田園」をひらいていると話すと、ご自身が集めていたうつわなどをたくさん譲ってくださり、そのなかでも特に心惹かれ、いくつか欠けがあることもあってわたし自身で使うことにした。
「沖縄出身なんだよね?」と持ち主さんが育てたゴーヤーをたくさんいただいたこと、3人でちゃぶ台を囲みながらおしゃべりしたり、奥さまと「これも可愛らしいですねぇ…!」といいながらうつわをひとつずつ梱包したこと。
いただいたものひとつとっても、どれもそれにまつわる物語があるんだよなぁ。
うつわにのっている干し柿は暮らしていた大江町で農業をしている「畝々小農舎」さんお手製。干し柿も山形で暮らしてから好きになった食べもののひとつなのだ。

とんぼ玉のネックレス

山形で知り合った、親子で草木染めをしている「キクス制作室」の芳賀さん。
草木染めのマフラーを見せてもらいに芳賀さんのおうちにはじめてお伺いしたとき「わざわざ新庄まで来てくれたから」とお母さまが作ったとんぼ玉のネックレスを首にかけてくださった。
友人の実家に行くなんてことは大人になってからあまりなかったので緊張していたら「リラックスして」とお母さまがほほ笑んで、森や夜空が映るDVDを流してくれたり、手づくりのパンやジャムでおもてなししてくれたことを思い出す。
芳賀さんのお母さまは草木染めやとんぼ玉、以前は陶芸を学んでいたこともあるそうで、さまざまな手仕事でご自身を表現されている。(息子の芳賀さんも大工さんでとても器用!)
おふたりにとっての「手仕事」はきっと自分を表現することなんだろう。わたしにとって自分を表現する手段は「伝えること」だ。
これから歳を重ねていき、芳賀さん親子とのめぐり合いのようなすてきな出来事がきっとたくさん待っているはず。愛おしい時間や出来事をどんなふうに人々に伝えていくか、生涯学び続けていきたい。

手づくりの絵本

母が余命宣告された直後のわたしの誕生日に、親友が贈ってくれた手づくりの絵本。その年に母の病状がわるくなってから、不安な気持ちになることが増えていた。「結婚もしていないしパートナーもいない、父と兄とはあまり分かり合えない。もし母を失ったらわたしはひとりぼっち」、そんなことを彼女に話していたこともあった気がする。そんな私に寄り添ったものを贈りたいと絵本を探したがピンと来るものが見つからず「だったら自分で作ろう」と思ったのだという。

親友は中学時代からの付き合いだ。10代の多感な時期に友人グループでもめごとがあったとき「美奈子は間違ってない」とグループの中でただひとり、わたしの味方をしてくれたことがきっかけで親しくなったのだ。
大学時代の彼とケンカして、相手の家を夜中に飛び出した(学生だからタクシーに乗るお金もないし、歩いて実家に帰れる距離でもない)ときも、夜中に迎えに来てくれたこともあった。

この絵本を手にとれば、わたしは決してひとりぼっちではないことに気づかされる。
眠れないし消えてしまいたい、そんな夜にはこの絵本を読んで眠りにつく。
30年以上も生きていると、どうもうまくいかないことが続いたり、潜る時期がある。そんなときにでも距離が離れていても、家族のように心はいつもそばにいてくれる親友をずっと大事にしていきたいと思う。

わたしがこれまでに贈ってもらったものには、そのひととのつながりや思い出がたくさんつまっている。
相手を想い贈りもののことを考える時間も、自分をいたわるために贈りものをすることも、どちらもゆたかで美しくて、尊いことだと思う。
お金や時間にも限りがあるけれど、心通うひとや自分のことを想って贈りものをする時間をこれからも大切にしていきたい。


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