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【おすすめ本】雨の日に読みたい本!コミカルな死神が織り成す雨と音楽の物語『死神の精度』伊坂幸太郎

梅雨の時期に読んで欲しいオススメの本を紹介します!有名な作品ですが、とても情景のキレイな作品なので、読んで無い方は是非読んでもらいたいなと思います!

本書の紹介

伊坂幸太郎さんの『死神の精度』です。2004年に日本推理作家協会賞短編部門受賞、2006年に本屋大賞3位に輝き、同年に直木賞候補にもなった名作です!

こんな人物が身近に現れたら、彼/彼女は死神かもしれません──
(1)CDショップに入りびたり
(2)苗字が町や市の名前と同じ
(3)会話の受け答えが微妙にずれていて
(4)素手で他人に触ろうとしない。

1週間の調査の後、死神は対象者の死に「可」「否」の判断を下し、「可」ならば翌8日目に死は実行される。ただし、病死や自殺は除外。
まれに死神を感じる人間がいる。

──クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う、6つの人生。

音楽を愛する死神たち。仕事は対象者の死を判定する事

ストーリーについてご紹介をさせて頂きます。

主人公の職業は死神。人間界に人間として現れて対象の周囲で生活をし、その人物が生きるか死ぬをジャッジする事を仕事としています。

この世界では死神がたくさん人間界に居て、人間を観察している事になっています。

死神というとちょっと怖いイメージがありますが、死神はちょっと世間ずれしておらず、音楽が好きでCDショップの視聴コーナーによく溜まっているというコミカルな部分があります。

また、これはたまたまですが、本作の主人公である死神の千葉が人間界に現れる時は決まって雨が降っており、晴れた日を見た事がありません。

その為、作中は常に雨が降っており、千葉の独特の語り口と相まって、しっとりとしたイメージの作品となっております。

死神、特に千葉は人間の心の機微をあまり理解しておらず、それが相まって登場人物との会話がどことなくコミカルであり、それでいて人間の本質をつくような深みのあるストーリーが展開されます。

エピソード紹介①『死神と藤田』死神と古風なヤクザの物語

あらすじだけだと作品のイメージがまだ分かり辛いと思いますので、個人的にオススメのエピソードを2つご紹介します。

1つ目は2番目のエピソード『死神と藤田』です。

主人公の千葉の今回の調査対象はヤクザの藤田。兄貴分をライバルの暴力団に殺された為、復讐を果たそうと考えている仁義に熱い古風なヤクザです。

千葉は、死神の仕事としてヤクザの藤田と、その弟分の阿久津と知り合います。

復讐に燃える藤田と、そんな藤田を尊敬する阿久津、そしてそんな事情は我関せずと飄々としている千葉、この3人を中心に物語が進んでいきます。

雨が降り続く陰鬱な雰囲気がありながら、藤田の熱さや、藤田を信じる阿久津の様子には胸を打たれますし、テンポが良く、圧倒的なスピード感のある作品となっています。

物語のラスト近くで千葉と阿久津が敵対組織にさらわれてしまうシーンがあるのですが、そこでの千葉と阿久津の2人のやり取りは読んでいて心が熱くなってしまいます!

また、結末部分が死神の設定を活かした内容となっています。詳しい事は言えませんが、本エピソードの最後はこの物語の設定が上手く絡むようになっていて、小説としてもとても面白い作品となっております。

エピソード紹介②『吹雪と死神』死神の設定を活かしたミステリー

2つ目は、吹雪の山荘での殺人事件という最も本格ミステリーをしている、ある意味『死神の精度』の中での異色エピソードです。

田村総江という老女の調査の為に吹雪の山荘に訪れた千葉。

そんな中、毒殺事件や刺殺事件などの連続殺人事件が起っていきます。

このように書くと如何にも恐ろしい本格ミステリーなのですが、主人公が死神であり、かつあくまでも仕事は対象の観察であり殺人事件など我関せずという態度なので、緊迫感があまり無く、むしろコミカルな雰囲気が漂います。

また、得られるヒントが、千葉が丸一晩ドアの除き穴から観察していたとか、真相についても死神は死なないという設定が活かされており、どちらかというと本格ミステリーをパロディにしたような面白いお話となっています。

感動的なラストー 切なくも美しい、雨と音楽と死神が彩る物語

おすすめエピソードでは、熱いお話コミカルなお話をご紹介させて頂きましたが、人間の死を判定するという物語上、どちらかというとちょっと切ないお話が多いです。

特にラストのエピソードは、今までの千葉のエピソードが緻密に絡んできて、非常に切なくも感動的なストーリーとなっています。

伊坂幸太郎さんらしく、音楽が物語を彩り雨の描写がしっとりした情景を感じさせる作品となっています。

主人公である死神の千葉も、飄々として人間の心は理解していないと言いつつも、コミカルでいてどこか優しさを感じる、とても良いキャラクターをしています。

評判の通り、この雨の時期だからこそ読んで欲しい名作ですので、是非手にとってみてください!

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