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再訪の鎌倉 下 〜 あれからずっと私は「旅」というものに魅せられたままである。

こちらの続きです。

7年半前の旅行記はこちらからお読みになれます。


7年前の3月、3年続いた浪人を終えようとしていた若者は、大学生になる前に鎌倉へと旅に出た。


その旅が始まったのは、源氏山で遭難しかけた時か、
長谷駅で江ノ電を降りて鎌倉の地を踏んだ時か、車窓から湘南の海を見た時か、
藤沢駅であの濃いグリーンの小さな車体に乗り込んだ時か。

はたまた、ぎゅうぎゅうの荷物を抱えて自分の部屋を出た時か。

あの旅は、3日目の夜、渋谷の空を見上げたあの時に終えたと思っていたが、まだ続いていたようだ。

あれからずっと、私は「旅」というものに魅せられたままである。

松島(宮城県)

大学生になり、何度か友人と共にキャリーケースを転がして行った「旅行」を経て、私はバッグ1つ身一つで転々と場所を移動する「旅」をするようになった。


その行き先は、徐々に海外へと移っていく。

Ko Lipe (Thailand)

Low Cost Carrierの最安値のエアチケットを探し、その手荷物制限に収まるように45Lのバックパックがぱんぱんになるまで、尚且つ7kg以内に荷物を詰め、まだ見ぬ世界を求めてただひたすら歩き回る。

成田空港から何度乗ったかLCCのエアアジア

色々な景色を見に行った。

Ha Long Bay (Viet Nam)

そして数々の素晴らしいものに心を奪われた。

Ayutthaya (Thailand)


そんな私を新たな旅へと誘い続けてきた数々の景色の原点は、湘南の夕日だった。

湘南の夕日

「やばい」「凄い」以外の言葉を失うような何かを求めて、日本を飛び出して旅をするようになってからも、鎌倉には幾度となく足を運んだ。

それは美しい夕日を求めてのことなのか、
歴史ある神社仏閣を求めてのことなのか、
海や山といった自然を求めてのことなのか、
ここでしか食べられないものを求めてのことなのか。

ロンカフェ 江ノ島店のフレンチトースト

学生の頃は近場で旅行気分を味わえる場所だったということ、
卒業してからは大学に進学するように私の背中を押してくれた恩師が眠る場所が鎌倉にあるということも相まって、鎌倉を訪れて宿泊することも多かったが、あれ以来鎌倉ゲストハウスからは足が遠のいていた。

その理由は例えば、
人気宿ゆえに満室だったり、
学割料金で1000円以上安く泊まれる宿があったり、
大部屋に泊まりたくなかったり、
観光地や駅に近い場所を求めていたり、
とその時々で様々だ。

しかし、そうしているうちに「鎌倉ゲストハウス」は、私の中で宿の選択肢というよりも思い出の1つへと変わってしまった。

旅にハマるきっかけとなった景色を教えてくれた場所、
鎌倉に訪れるとほぼ必ず食べに行く美味しいお店を教えてくれた場所、
そしてそんな良い情報を沢山知っていて鎌倉を愛している素敵なスタッフさんのいる宿。

そのうちまた泊まりに行きたい、とは思っていた。

しかしいつからか、数々の旅の記憶の中の、遠い遠い1ページへと追いやってしまっていたようだ。

鎌倉ゲストハウスの男性用ドミトリー

旅人達は、夜遅くまで囲炉裏を囲んで語り合い、翌朝も炬燵に入りながら語り合う。

その輪の中に加わる中で、ふと思った。

鎌倉ゲストハウスが、たぶん私の旅の全ての原点だった、と。


旅をする中で、私は「出会い」を求めるようになった。

最高の景色、美味しい食事、それだけでなくその場所の社会や文化、そこに住む人々との関わり。

Penang (Malaysia)

これまでに見たことのない新しい何かとの出会いを得られることが楽しみだった。

そうした旅の楽しみ方は、全てここ、「鎌倉ゲストハウス」で知ったのかもしれない。

べーぐるもへあるのベーグルとクリームチーズ

朝食のベーグルに合わせて淹れた、卓上のコーヒーが冷める頃、皆さんチェックアウト時間の5分前ですよ、と声がかかる。


随分と話に夢中になっていたようだ、と旅人達は荷物をまとめ出す。

私も荷物をまとめると、宿のスタッフに一宿の礼を述べて建物の外に出る。

一晩同じ宿に泊まるという縁に導かれた旅人達は別れを済ませると、また新たな何かに導かれるように各々の目的地へと向かっていった。

さて、この後どうしようか。

空は秋晴れで心地の良い風が吹いていた。

私は暖かな日差しを浴びながら、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで考える。

鎌倉ゲストハウス

とりあえず、長谷まで行こうかな。
行き先を決めると、ゆっくりと歩き出した。


スーツ姿で鎌倉を歩くのは初めてだ。

だが、こういうのも悪くはない。

2015年3月、鎌倉を訪れた若者はここで旅の面白さと出会う。
そこから7年半後、再びその原点とも言える地へと足を運んだ。

幸運なことに、あれからずっと私は、「旅」というものに魅せられたままである。

鶴岡八幡宮

こちらに続きます。


また、この投稿は2022年12月8日にAmebaで公開した記事の再掲となります。


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