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再訪の鎌倉 エピローグ 〜 「いつか絶対にまた出会うから」

一応、こちらの続きです。

7年半前の旅行記はこちらからお読みになれます。


定時で職場を後にした私の手に提げるのは、
やはり、テイクアウトしたかかんの麻婆豆腐丼。


向かう先は鎌倉ゲストハウスである。

「また来ちゃいました」

へへへ、と12月29日の閉業を前にチェックインを済ませる。

泊まりに来るのは1ヶ月ぶり、その前は7年半ぶりだ。

鎌倉ゲストハウスの暖簾


実家のようだ、と誰かが言った。


そんな今宵の鎌倉ゲストハウスは“たこ焼きパーティー”である。

炬燵の卓上には無数の皿。

そこに盛られた熱々のたこ焼きの上では、かつお節が踊る。

「ソース(、マヨネーズ)、青のり、かつお節!
これだけは覚えて帰ってください!(関西弁)」

そんな事を言いながら、オーナーの夏さんは嫁入り道具(でっかいホットプレート)で、

たこ焼きをくるくるくるくると焼いていく。

スタッフだけでは手が足りず、私達ゲストも一緒になってたこ焼きを盛りつける。

実家のようだ、と誰かが言った。

ここから旅立つ時にスタッフと交わす言葉は、

「いってきます」と「いってらっしゃい」

さようなら、ではないのが “鎌ゲス"流の別れ方である。

この日の宿泊客は、
この宿に再訪するために仕事帰りに、
あるいは休みを取って、
“鎌倉の実家"まで足を運んだ人が多かった。

この宿は2010年の開業以来、いったいどれだけの旅人達を家族のように迎え入れ、送り出してきたのだろうか。

空が朱く染まる頃、湘南の釣り人も陸へと向かう


宴もたけなわとなった頃、酩酊している夏さんが言った。

「いつか絶対にまた出会うから」


私達はその言葉に笑って頷いた。

この夜が明けると、私達もまた、次の目的地へと旅立っていく。

そうして皆、その先々で色々なものを目にし、経験し、世界の広さを更に知ることだろう。

そんな私達がいつかまた出会う時、今度はいったいどんな景色が見られるのだろうか。

温かな出迎えを受け、暖かな囲炉裏と炬燵を囲んで語り合う夜は、ゆっくりと更けていく……。

暖かな囲炉裏と炬燵を囲んで語り合う夜は、ゆっくりと更けていく……。


2022年12月29日をもって、鎌倉ゲストハウスは幕を閉じる。


「ただいま」「おかえりなさい」
今日も新たな旅人達がやってくる。

これからも「鎌倉ゲストハウス」は、
その旅を終えることはないと、私は信じている。

ありがとう、鎌倉ゲストハウス。
またどこかで会いましょう、良い旅を!

2022.12.09-10

湘南の夕日

この投稿は2022年12月28日にAmebaで公開した記事の再掲となります。


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