七〇八号室

生活のはなし

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これまでとこれからと

台湾で暮らしはじめて2ヶ月弱経った 梅雨も明けて、毎日これでもか、という陽の光を浴びている 生命力の高い大きな大きな木や、見たことのない鳥がいて、夕方になるとスコールが降る 南国を肌で感じる日々  自然と共に生きている感じがする 18年間の地元での暮らし、4年間の一人暮らし、それらの生活の中で意識すらしてこなかった細やかな動作、生活の過程を、ひとつひとつ噛み締めて、確かめている 何をするにも、簡単にはいかない日々 新しくできた友人たちとの他愛のない穏やかな時間が

    • 轟音の中でだけ息が出来た、そんな夜がいくつもあった

      • ここで暮らすということ

        今朝は、真っ青な空と降り注ぐ日差しが眩しかったのに、夕方になるとスコールが降ってきた ここでの暮らしは、便利さや整った暮らしとは遠いけど、天気に一喜一憂して、ありのままを受けてれて、委ねて過ごそうとするそういう豊かさがあると知った 鉄の扉を開けると、古びた匂いがした 夕方17時 薄暗いコンクリートの階段をひたすらのぼると、自然と「ただいま」と口にしていた 真四角の部屋 ここが居場所になるなんて 深夜0時 数千キロ離れた土地でよく聴いていた歌を聴くと、あの時の気温

        • 22度目の夏は台湾で

          深い青がどこまでもどこまでも続いて、 さまざまな虫の音を聞きながら緑をかき分けて進むと、となりの家に辿り着いた そこには、夏の間だけ、アメリカから帰ってくる同い年の女の子がいた お茶犬のおままごとをしたり、かくれんぼをしたり 時には、一緒にミートソーススパゲッティを食べた 生い茂る緑の隙間から、彼女の家が見えて、そこから窓から顔を覗かせて、午後遊べるー?と声をかけるあの時間が好きだった あの頃は暑いねぇと言いながら、少ないお小遣いを握りしめて駄菓子屋に行ってアイス

        これまでとこれからと

          聞かせて

          出会って1ヶ月も経たないけど、一緒にいろんな「はじめて」経験をしたり、小さな冒険をしたりした友人が部屋に泊まりにきた 彼女と朝まで、政治、国、地元のこと、カラオケの十八番、学生時代にハマっていたもの、中華料理屋のバイトのこと 色んな話をした カーテンの隙間から朝が覗いた夜のことを、わたしはずっと忘れたくない どれだけ今が苦しくても、先の未来が見えなくても 大きく口を開けて笑って、「美味しいご飯が食べれたら幸せ」とこぼす友人が、そばにいてくれた そんな日の積み重ねが、

          寝苦しい夜に洗濯を

          心拍数が上がって、鼓膜がぽわぽわと埋まる感覚がした 父からの連絡 その文章たちを読むと、言葉が棘のように刺さって苦しくなった 家族に支援してもらってのうのうと大学生活を送り、今は台湾で学生生活を続けている 周りが就職活動をしている傍らで、わたしは違う国で学生を続けることを選んだ、選ばせてもらった 意気地なしでいつも情けないわたしは、 親元に自由を提示してもらうだけの不甲斐ない人間だ 23歳になるというのに、自立する気配すらない 故郷を離れて、気づけば海も渡って

          寝苦しい夜に洗濯を

          握りしめた日記と雨季の晩

          灰色の空を見上げると、小粒の雨が頬に触れた Tシャツが張り付いたまま歩を進めると、なんか、大丈夫だって思えた 数日前の晩は、鬱の波に溺れて、久しぶりに長い長い孤独で苦しい夜を過ごしたが、そんな波も落ち着いたらしい 思考が蝕まれてる時は、本当に本当に「最悪」なケースの想定しかできず、呼吸が浅くなって、脳みそ全体からSOSが出て、航空券を未漁る 今も120パー元気です!とまでは行かなくても、この暮らしをそれなりに頑張って保てる、ぐらいまでには復活した ---------

          握りしめた日記と雨季の晩

          大丈夫 あの時感じたときめきをまだ持っている 新鮮なあの頃を 新鮮にあの頃を

          大丈夫 あの時感じたときめきをまだ持っている 新鮮なあの頃を 新鮮にあの頃を

          雨時々曇り

          台湾生活14日目 なんとまあ、かなり、精神的にキテいる どこか遠くに逃げたい、どこかどこかと、と 遠くの地で暮らすことを所望していたけど 当たり前に、簡単じゃなかった 心療内科に通いながら繋いでた日々のことを忘れていたらしい すべては経験、前向きに頑張ろう!の自分と、今すぐ日本に帰りたい、もう無理だ、でも帰る場所がないよう、と嘆く自分 台北は薄暗い いつも曇りか、雨 アパートの階段はいつも暗くて、夜のよう あと少しだけ踏ん張ってみる、を繰り返してそれが日常に

          逃げた先で暮らす

          台湾は現在17時半 光の入りがわるい窓の向こうはまだ明るく、日がのびたなあなんて呑気に思っていた頃を思い出したりする 現在、台湾生活3日目 ベッドでもぞもぞと思考を張り巡らせていた時、久々にnoteを更新しようと思った 台湾に住みたい、そう思ったのは大学3回生の春、周りが着々と就活を進めている中で、私だけ先の未来を想像できなかった頃 旅行じゃなくてここで暮らしたい、そう思った そう思ってしまってからというものの、你好と謝謝しかわからない状態からすべてが始まった

          逃げた先で暮らす

          鏡よ鏡

          鏡を見るたびに、写真に映る自分を見るたびに「醜いなあ」と思う 足りない背丈に、身体中にまとわりつくぜい肉、左右非対称の目に、だんご鼻、何もかもが醜い お菓子をくれた祖母に「太るからいらない」と言うと、もう太ってるじゃんと言われて、この前は知らない飲み屋の店員に太ってると遠回しに笑われた あなたが一番可愛い、という母のお決まりのセリフは「痩せてた頃はもっと可愛かった」「もう少し痩せたらいいのに」 言葉の枷が自分の中で積もっていく 醜い自分を見るたびに掻きむしって全てを消

          宙になげる

          ぼうっと天井を眺める、時刻は12時30分 遮光カーテンの隙間から見える空は灰色で、まるで梅雨のような日が数日続いてるな、なんて漠然と思った 身体が重い、昨晩も、昨晩というか今朝までただただスマホを眺めていたからだろうか 物事が思った通りにいかないと癇癪を起こしてしまうこと、ひとつのことにばかり夢中になってほかが手をつけられないこと、荒れきった部屋 なにもかもが重くて、浅くて、ぬかるんでいる 生活をすること、お金を稼ぐこと、人を大切にすること、愛すること、愛されること

          2023+1

          冷たい空気が、鼻を通って、肺いっぱいに満たされていく感覚がした 少なすぎる街灯と、誰の話し声もしない住宅地 深夜2時半、窓を開けると2年に一度しか使われない神輿が乱雑にビニール袋にかけられているのが目に入った 冷たくて、静かで、嫌いだった 新年明けましておめでとう、なんて誰が言ったものか 明けたって、何もめでたくないし 大体年が明けたからってなんだって言うんだ そんな悪態をついて過ごしたら終わった三が日 年は明けたのに、日本では自然の脅威に襲われ、世界では今日

          百鬼夜行(SS)

          どこか遠くから祭囃子が聞こえる シャンシャンと音を鳴らして、近づいてくる 音はどんどん大きくなる 太鼓の音が、ずっしりと響く ぼやけた視界にうっすらと見える炎と、まんまるなたぬき 小豆あらいも愉快にしゃらりと音を奏でる 今日は、12月の辰日 大天狗さまも、河童もからだを揺らして、闊歩する シャンシャン シャンシャン あっもうすぐ目の前を通る パジャマのままとびだした 「ねえ待って!」 整わない呼吸のまま、声を出す 「よぉ。遅かったじゃない、もう始まっと

          百鬼夜行(SS)

          しろくならない

          師走、とは誰が名づけたのだろうか 終わりも始まりも、意思とは関係なく続いていく 今年もまた、心と身体が追いつかないままであった気がするし、少しは自分を大切にできた気もする 京都の冬は寒い、寒いけど故郷の静かな冬に比べたらまだ暖かい マフラーをして、手袋をして、何重にも着込んでは、足元にを気をつけた、地元のことを思い出す 冬の朝は、しんとしていて、障子戸から白い光が差し込む 起きる時間になるとストーブをつけて、こたつを温めてくれた母は、既に着替えて味噌汁を作っていた

          しろくならない

          あのね、わたし

          煙がわたしのもとにふわっと届いて、その度にあなたは手で何度も払っては、ごめんねと笑った その度にわたしは、決まったように大丈夫です、といった 本当に、本当に大丈夫だったから 禁煙なのに、先輩だけが許された空間では、いつもぷかぷかと彼女の煙が漂っていた 〇〇ちゃんも行く? 彼女は決まって、非喫煙者のわたしを喫煙所に誘ってくれて 会話の輪に混ぜてくれた でも、わたしだけぷかぷかしていない 先輩と同じ、が良かった ただそれだけでたばこをはじめた それなのに、もう

          あのね、わたし