あのね、わたし


煙がわたしのもとにふわっと届いて、その度にあなたは手で何度も払っては、ごめんねと笑った


その度にわたしは、決まったように大丈夫です、といった


本当に、本当に大丈夫だったから


禁煙なのに、先輩だけが許された空間では、いつもぷかぷかと彼女の煙が漂っていた


〇〇ちゃんも行く?


彼女は決まって、非喫煙者のわたしを喫煙所に誘ってくれて


会話の輪に混ぜてくれた


でも、わたしだけぷかぷかしていない


先輩と同じ、が良かった


ただそれだけでたばこをはじめた



それなのに、もう、先輩は遠い場所に引っ越した


ずっとそうだった 彼女はいつも自由で、彼女の背には羽が生えていた


今頃、瀬戸内の海が綺麗な場所で、きっとニカっと笑って歌を歌って過ごしているのだろう


だから、わたし、もう吸う理由がないんです


でも、何故か手放せない


あの頃にずっと、取り残されているの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?