22度目の夏は台湾で



深い青がどこまでもどこまでも続いて、


さまざまな虫の音を聞きながら緑をかき分けて進むと、となりの家に辿り着いた


そこには、夏の間だけ、アメリカから帰ってくる同い年の女の子がいた


お茶犬のおままごとをしたり、かくれんぼをしたり


時には、一緒にミートソーススパゲッティを食べた


生い茂る緑の隙間から、彼女の家が見えて、そこから窓から顔を覗かせて、午後遊べるー?と声をかけるあの時間が好きだった



あの頃は暑いねぇと言いながら、少ないお小遣いを握りしめて駄菓子屋に行ってアイスキャンディを買っていた


そんな夏が数年続いて、あれから15年近く経った


それなのに、いまだに夏になると思い出すのはいつも彼女と遊んだ日々のこと


地元を出て、4年間京都で過ごした


盆地の夏は、暑い、なんて言葉じゃ表せないぐらい暑くて、汗っかきな私は夏が大嫌いだった


それなのに、気づいたら今は南国、台湾にいる


人生は不思議だ、あの頃思い描いていなかった場所で、「今」がある、あの頃の地続きで。



アパートを出ると、サウナのような蒸し暑さが押し寄せて、夕方になるとスコールが降る



なぜこんな過ごしにくい場所にいるのだろう、と思いながらもなんだかんだ嫌いになれない



夏が嫌い、と言いながらずっとあの頃が続いて欲しいと願っているような、そんな暮らし


梅雨が明けて、本格的に夏が始まった


日本で過ごした夏より、長い長い夏が来た


今のこの暮らしも、過去になって、思い出になって、数年後、十数年後の淡い記憶になるのだろう

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