宙になげる



ぼうっと天井を眺める、時刻は12時30分


遮光カーテンの隙間から見える空は灰色で、まるで梅雨のような日が数日続いてるな、なんて漠然と思った


身体が重い、昨晩も、昨晩というか今朝までただただスマホを眺めていたからだろうか


物事が思った通りにいかないと癇癪を起こしてしまうこと、ひとつのことにばかり夢中になってほかが手をつけられないこと、荒れきった部屋


なにもかもが重くて、浅くて、ぬかるんでいる



生活をすること、お金を稼ぐこと、人を大切にすること、愛すること、愛されること


人間の営みのひとつひとつが、重くのしかかる


目を逸らし、夜を延ばしても、必ずのしかかる

__________________________________________

重い身体を起こして、いつだった床に落ちた髪の毛を踏まないように洗面所に向かう


やたら眩しい白い光をつけて、鏡を見ると、もう二十数年共にしているのに、いまだに嫌気がさす顔と向かい合う

贅肉が乗った腹、丸い背中、曲がった口、すべてが疎ましい


可愛いあの子は、自分の姿を鏡で見ても、こんな惨めな気持ちにはならないのだろうか


大学で同世代の波に飲まれても、嘲笑われているような気分にもならないのだろうか


くだらない、ヒトの入れ物ひとつでこんな気持ちになる


せめてもの化粧をして家出る

外に出るともう17時を過ぎていた

相変わらず灰色の空と、冬の痛みが頬にあたる


程よく人間がいる喫茶店に行き、本を開く


ノイズキャンセリングをしたヘッドホンから音楽を流すことで、人の存在を感じながらもひとりの世界に入る


疎ましい、視線も、身体も、何もかも



うるさくて、重くて、どうしようもない


身体を持つということは、こんなにも

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?