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エールッフ年代記

「エール、エローヒーム、エローホー……」

聖都エルフリムに、神を讃える声がこだまする。今朝はひときわ音高く。

「主に選ばれしエールッフの民よ、いと高きところにいます方に感謝せよ」

皇帝の司式のもと、戦勝を祝う荘厳な儀式が行われる。
臣民は涙を流して喜び、ひれ伏す。都は活気を取り戻す。

使徒到来紀元1022年。
三大陸の覇者、エールッフ帝国皇帝ミカエルフ2世は、冬をようやく平穏に迎えた。先年よりの土矮夫の乱と、オルキスタンからの侵掠。オウグリアの軍事援助と、フーマニア人の傭兵団の働きがなければ、帝都も危ういところであった。彼らへの支払いで、税は更に重くなる。農奴の反乱も増えよう。

だが全ては神の思し召しだ。世はなべて事も無し。

皇帝は臣民を眺め、言う。

「エールッフ・アクバル……!」


同日午後。
「陛下。ガブリエルフ将軍より、火急の報せが」
平伏する奴隷から宦官に書簡が渡され、文机に広げられる。

皇帝は柳眉を顰めた。

▼続く▼

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