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星新一の父と祖父につながる物語『明治の人物誌』星新一

文句なくおもしろい本でした。初版は30年以上前なので、古書店で購入。この内容で数百円なんて、お得すぎます。

明治時代を生きた中村正直、野口英世、岩下清周、伊藤弘付記、新渡戸稲造、エジソン、後藤猛太郎、花井卓蔵、後藤新平、杉山茂丸。

誰でも名前を知っていながら、実はよく知らない人たち。そして、あまり名前を聞いたこともないけれど、当時は有名だった人たちの一生をとてもおもしろく読ませてくれます。

いいことばかり書いてある伝記を参考にしつつ、著者ならではの視点があるので、人物の裏から、斜めから、興味深い人生や当時の社会を知ることができます。そして、これらの人物をたどっていくと、星新一の父や祖父にたどりきます。

星一(はじめ)は、星薬科大学の創立者で星製薬の創業者。戦前にアメリカのコロンビア大学で修士号をとり、モルヒネの国産化に成功。東洋一の製薬王とよばれたとか。母方の祖父は、帝国大学医科大学長で解剖学者の小金井良精。祖母は森鴎外の妹・小金井喜美子。星新一のSF短編小説は国語の教科書に載っていたけど、こちらの本は、学校の歴史の副読本にしたらいいぐらいおもしろい。

ちなみに、星新一は「世の中のもので要約できないものはない」という意見の持ち主だとか。膨大な資料から自分なりに要所をおさえ、それを幅広い読者に提供しつつ、自分の書きたいものを書ける……つくづく頭がいい人。

こちらの本もおすすめ。星さんの書く伝記は本当におもしろいです。加えて、江戸時代とか明治時代の日本の生活や家族関係がよくわかるのが楽しいです。わたしたちが学校で習ったり、ドラマでみたりしている江戸時代や明治時代って、実はかなり現代的にリフォームされているんですね。あたり雨ですが、全然知りませんでした。


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