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心に翼を持った人。『国境のない生き方』ヤマザキマリ


ヤマザキマリさんの生まれ育った家庭と子供時代、イタリア留学の極貧時代を中心に、影響を受けた本を紹介する形でまとめた本。

以前の仕事の同僚が、ヤマザキマリさんと同い年&国際結婚で大好きだったので、留学や出産、国際結婚までは、漫画をたくさん貸してもらって知っていました。でも、小さい時に読んだ本とか、お母さんが女で一つで育てた豪快な話、お祖父さんが好きだった外国音楽のレコードを戦争中に燃やさないといけなかった話などなど、漫画には描かれていなかったこと、インタビューでも読んだことがなかった話がたくさん読めました。

あと、マリさんが高校時代に学校に反発していたこととか(つまり不良で手のかかる子だった!?)、イタリア留学時代にむさぼるように読んだ本の話とかがおもしろかった。しかも、しょっぱなからニルスの不思議な旅! ああ、小さいころ大好きだった記憶があります。確か、NHKでもアニメ化していたんじゃなかったっけ?

イタリア留学時代、外国人の知り合いたちから、自分が読んでいない日本文学を指摘されて悔しくて読んだって話は、私も経験があるからわかる!
そう、中国で知り合ったフランス人とかに「ミシマ、いいよね。君は日本人だから当然ゴールデン・テンプル読んでるよね」と言われた時の悔しさは今でも鮮明に覚えている。

この本を読んだ後、ニルスの不思議な旅のオープニングが頭をぐるぐる。
「そういえば、なんかゴダイゴの曲みたい」と思って調べてみたら、これってタケカワユキヒデさんが作曲したらしい。

でも、まあ、ヤマザキさんはやっぱり漫画がいいな。
ご自身でも言っているけれど、例えば国際結婚についてのトーク番組やインタビューは絶対受けないとか。そりゃそうだ。家族だもん、キレイ事だけじゃ済まないし。

自分のプライベートを、フィクションのような笑いに昇華し、それを周囲が楽しく受け止めてくれるのは心地いいけれど、真っ向から自分の置かれている状況を見つめてみると、事実は決して楽観的で安易な構造では成り立っていないからです。なので、デフォルメさせた非現実的登場人物でお笑い漫画として表現する以外に、リアルなイタリア家族を積極的に語りたい、という気持ちにはあまりならないのです。

ヤマザキさんの真面目なお話は、仕事についてのインタビューや、外国での仕事や文化についての専門的なものが好きです。そして、仕事で理不尽な目にあったときは、次のヤマザキマリさんの一言を確認して、自分で自分を応援しています。

他人の目に映る自分は、自分ではないのだから。



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