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猫&ミステリー小説のパイオニア。『猫は手がかりを読む』(ココ&ヤムヤムシリーズ)リリアン・J・ブラウン


猫好きには超おなじみのシリーズ。古典的な名作といってもいいかもしれません。その後、猫がからむミステリ作品のベースになった作品です。

人間にはない予知能力と第六感を持つ猫。そして、猫の中でもとりわけ賢いシャム猫のココが活躍する物語。シェークスピアとシャム猫、独身貴族の元新聞記者の組み合わせはあまりにも魅力的。猫を飼っていない時から、しっかり全冊読破していた私です。

主人公はジム・クィララン。
最初に登場したときの彼は、物騒な都会の新聞記者で事件に巻き込まれていました。過去に新聞記者としての賞も受賞したことがあるけれど、グルメとか美術の記事担当を任されているので、あまり生々しい殺人事件とか、ドロドロした愛憎劇でないところが、私の好みに合っています。

彼のヤクドコロは、名探偵ホームズでいうところのワトソン助手。事件解決の決定的な活躍をするのは、普段気まぐれで、グルメで、優美なスタイルのシャム猫のココ。ただし、猫離れした超能力を持つわけでもないし、もちろんしゃべるわけでもないので、ワトソン助手と読者は、ココの魅力に振り回され、かわいいヤムヤムにうっとりし、ようやく最後に事件解決にたどり着くのです。猫好きには、もうたまらないシチュエーション。

作者のブラウン女史は、1979年に長年勤めた新聞社を退職し、愛猫と一緒に田舎に住み、執筆活動に専念しているとか。それは、主人公のクィラランとほぼ重なります。だから、都会での新聞記者生活だけでなく、田舎に引っ越したあとの生活や人間関係なんかも、エピソード1つ1つがとてもリアルで魅力的です。

クィラランは、シリーズ途中で田舎に引っ越して、地方新聞にコラムを連載しながら、小説の執筆活動に専念……するつもりでなかなかできないでいます。知り合った人々にたのまれて、あちこちでかけて、いろんな事件に首をつっこむクィララン。ただ、友人たちとシェークスピアの演劇をやるあたりは、英語圏のインテリさんたちっぽくていいですね。物語でも、シェークスピアのセリフがちょくちょく出てきます。

本格ミステリを期待する人だと、ちょっと不満が残るかもしれませんが、のんびりしたい午後とか、楽しい気分になりたい週末なんかだと絶対オススメです。






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