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アートチャレンジなドキュメンタリー映画。『ベルリンフィルと子どもたち』ドイツ、2004年。


2002年、名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督兼首席指揮者に就任したサイモン・ラトル。初めて取り組んだ大きなプロジェクトは、オーケストラの演奏に合わせて、ダンス経験のない250名の子供たちが踊るという教育プログラム。

このドキュメンタリーは、東西ドイツの合併で貧富の格差が拡大し、しかも世界各地から移民や難民が流れ込んでくる大都会ベルリンが舞台。言葉も文化も違う、25の国からやってきた子供たちが、6週間のダンスレッスンを受けて世界ナンバーワンのオーケストラと共演するというもの。

映画を見ながら気になっていたのは、どういう基準で子供を選抜したんだろう、ということ。「社会の各層から」とはいっていたものの、一定の水準はありそうな子供たち。最底辺では、絶対なさそう。もちろん、あまり乗り気じゃない子供たちが多かったけど、印象として「中の下」くらいかな?

ダンスに選ばれた中学くらいの男の子が、タバコ吸う反対の手でキャンディ持っていたのが印象的。そうそう、近所の公園でもガムとタバコを同時に持ってる中学生をよくみます。先進国は子供のつっぱりぐあいも、わりと同じなんですね。

この映画公開当時は、いろんな国が地続きのヨーロッパと違って、島国の日本にいろんな国の人が来るようになるのはまだまだ先だと思っていました。でも、いずれは社会格差の拡大とか、難民の問題とか多くなったりとかあるのかなとも思ったり。今みたいに、近くの工場で働く東南アジアの人たちとか、スーパーで普通にご一緒するようになるなんて、想像もしてなかったです。

あと、映画では太った子供が目につきました。途上国だと、貧しい人たちはやせているけど、先進国だとジャンク(ファースト)フードでが主食で、親は忙しいので子供を放置なんですよね。

子供に気をくばって教育して、スポーツもやらせてあげることができるのは一定レベルの人たちだけ。どこかの映画批評では「こんなダンス以前に、もっとスポーツでも何でもやらせるべきなんじゃなかろうか」と書かれていたのも少し納得。

でも、例えば、精神的にもボロボロで、家も散らかり放題の人に、あたたかいご飯やカウンセラーを1回だけ提供するよりも、花を一輪プレゼントするほうが、なんとなくいいような気がするのに似ています。

家に花をかざると、その周りを掃除したくなるし、掃除して整理整頓しているうちに、心も少しづつ落ち着いて、自分を取り戻して、再チャレンジしようって気になるみたいな。芸術って、そういう効果があると思うんです。

邦題:ベルリン・フィルと子どもたち(原題:RHYTHM IS IT!)
監督:トマス・グルベ、 エンリケ・サンチェス・ランチ
制作:ドイツ(2004年)105分


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