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馨佳観察

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馨佳(けいか)という人にまつわる話。
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馨佳観察 12月8日

馨佳観察 12月8日

 生まれる場所や家族を選ぶのは自分自身だと聞いたことがある。
 それを信じるなら、俺はどういう意図を持ってあの家に生まれたんだろう……ということを、この部屋に来るたびに思う。
 先輩の部屋は学生の一人暮らしにしては十分すぎる広さの1DK。大学まで3駅の人気エリアにあり、なぜか気に入られている俺はたびたびお邪魔させてもらっていた。
 ただ、今日は他にも客人がいる。
「――という感じで、まあこんなふう

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馨佳観察 4月8日

馨佳観察 4月8日

「しっかし、今日は大変だったなあ」
 着替えを終えた店長が、首を回しながらフロアに出てきた。
 先に帰り支度を整えた俺と馨佳さんは、近所のコンビニで調達してきたつまみと缶ビールを開けている。この店では、始発が動くまでの間、こうして時間を潰すのが恒例だ。
「そうですね。永山さん、もう来なくなっちゃいますかねえ」
「ウチは変わらず来てほしいけど、他のお客さんもいたから、しばらくは足が遠退くかもな」
 

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馨佳観察 3月8日

 ここのところ、冬物のコートじゃ少し汗ばむような陽気が続いている。
 どうしようか迷ったものの、今日はバイトもなく真っ直ぐ帰宅する予定だったので、厚手のパーカーを上着代わりに羽織ることにした。

 時刻は午前7時50分。これから10分歩いて最寄り駅へ向かい、8時の電車に乗り、8時15分に乗り換えの駅に着く。そこからさらに満員電車に揺られること15分、正門まで5分で大学に到着。講義が始まるのは9時か

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馨佳観察 11月29日

馨佳観察 11月29日

 バックヤードに入ると、ちょうど店長が丸椅子から立ち上がったところだった。
「お、来たな」
「半月も休んですみません」
「いんや。どうだったよ?」
「はあ、まあ、良かったんじゃないかと……馨佳さんが観に来てくれたのはちょっとびっくりしましたけど」
 細長いロッカーの扉を開け、ハンガーに上着を掛ける。リュックの中から引っ張り出したユニフォームは、まだほんの少し柔軟剤の香りが残っている気がした。
「あ

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馨佳観察 5月8日

馨佳観察 5月8日

 バタン、という扉の音が室内に響くと、壁際に丸まった布団がもぞもぞと動き出した。
「けーかー。まだ寝てんのかー」
 たった3歩の廊下を抜け、弁当屋のロゴが入った袋をデスクの上に置いて振り返る。
 布団の塊の脇にある目覚まし時計が指しているのは、11時を少し過ぎたあたり。カーテンが開かれた南向きの窓からは、明るい日差しが降り注ぎ、少しずつ室内の空気を温め始めている。
「ほら馨佳、起きろって」
 しゃ

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