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 下北サンデーズ 著:石田衣良

 主人公の里中ゆいかはミニミニシアターでの下北サンデーズの舞台を見て以来、同じように演劇がしたくて堪らなくなって大学を機に上京して来た。

 当然のように下北サンデーズの門を叩く。それが全ての始まりだった。座長のあくたがわ翼の指揮の元、演劇に身を費やす生活が始まったのだ。小劇場を自腹を切って借り、好きな舞台をやってただけの下北サンデーズだったが、ゆいかの加入以来、引も切らない劇団に成長を遂げる。

 芸能事務所の目に留まり、お抱えの劇団に成長し、劇場すごろくの頂点、松田劇場でヌーベル演劇祭を勝ち抜いて行く。ゆいかには200万部越えの原作映画化の主演を務めると言うデヴューも決まっていた。

 作中、舞台俳優同士の恋愛や、自殺未遂、翼の母の死などがサイドストーリーとして展開されるが、ラストは少しだけもやもやしてしまった。

 ちょっと、普通では考えられない出世ぶりの劇団を描く物語だったが、良いのである。普通では考えられない事をフィクションで魅せる。小説の中では作者の自由自在なのだから。

 劇団の危機や成長をエキサイティングに描く。それを読まされたこっちは演劇に身を置くってこう言うことなのかと、舞台や観劇について思いを馳せてしまうのだった。

 こう言う経験は誰しもできるわけじゃない。それをライトに切り取って見せてくれた石田衣良さんの筆は今回も冴え渡っていた。そうなのだ。暗い話じゃない。明るく、楽しく、身軽に演劇の世界の奥深さを追体験させてくれた。下北サンデーズに乾杯。

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