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 流浪の月 著:凪良ゆう

 いやぁ〜面白かった。二日で読了。もっと時間がかかると思いきや三章が長くてそれ以外の章は短かった。1日一章は読もうと昨日二章まで読んで、今日三章を読んだらもうラスト間近だったので読んでしまった。

 浮世離れしてると言われる両親に自由に育てられた更紗だったが父親は病死し、母親は男を作って逃げてしまった。伯母に預けられた更紗だったが従兄弟の孝弘に夜な夜な身体を弄ばれる苦痛に耐えなければいけない生活になった。学校帰りの友達との公園での遊びが終わるとまた公園に戻り一人で本を読む。その公園には大学生の文が居て、ある雨の日に傘を差して一緒に来るかと言う誘いに乗って更紗は文の自宅でストレスの無い自由な生活を取り戻して行った。少女誘拐として捜査される事になるのだが、更紗と文の関係は良好だった。パンダを見に行きたいと更紗が言い出し、これでこの生活も終わる事を覚悟して文は更紗をパンダの居る動物園に連れて行く。そこで警察に捕まり、文は医療少年院に更紗は児童養護施設に離れ離れになるのだった。

 更紗は大人になり、ファミレスで働き、亮君と言うフィアンセも居た。しかしこの男がDVで夜逃げする。文はカフェをオープンさせていてそこに更紗は通うようになっていた。なんと夜逃げ先は文と同じマンションの隣に引っ越した。また繋がれ始める二人の絆。文にも谷さんと言う記者の彼女が居たが亮の方ではカフェ店員の文が怪しい。谷さんは更紗が文のストーカーだと警察沙汰になる。お互いに別れを告げ、文と更紗は性愛を伴わないカップルになって長崎でカフェをオープンしたという話だった。

 ざっくり書いてしまえば筋書きはそう言うものだ。しかし、更紗が背負った傷、文が抱えた傷、それらを丁寧に描写し、二人の幸せをどうか邪魔しないで欲しいと読者は願わずにはいられない。もどかしい男女の数奇な運命を描き切っている。描写の中でクエンティンタランティーノの『トゥルーロマンス』が何度も出て来る。二人にとって幸せなのは映画を見ながら宅配のピザを食べ、指がベトベトになりながらも自堕落な自由を謳歌する事なのだ。二人のささやかな幸せを邪魔しないで欲しい。そんな関係が唯一無二の二人の二人にしかわからない暮らしなのだった。

 小児性愛、第二次成長の欠落、誘拐事件、それらのデジタルタトゥーが障壁となりながらも二人の思いやる関係はハッピーエンドだった。

 次々に文章を繰り出してくる凪良ゆうさんの筆力は凄い物がある。どうして次々と文章を繰り出せるのだろう。実力派作家の傑作は私の日常を別世界に誘ってくれた。

 以上

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