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第二回ブルタツアーの記憶 Memory of Buruta tour

7月某日早朝、私は全裸で目覚めた。いよいよツアー参戦の時である。興奮した。

身支度を調え、「ここへ集え」と地図に赤丸で指定された場所に向かう。駅前の市営駐車場だ。ここにあの男がやってくるのか。武者震いがする。興奮した。

駐車場で待っていると黒光りするワンボックスカーが到着。中から長身の黒服が出てきた。「どうもこんにちは、田原総一朗です」。間違いない。この男がブルタだ。興奮した。

初めて来た栃木。見渡してもコンビニも辺りに見当たらぬカントリーな駅で残りの二名を待った。すると、改札の向こうから、眼鏡の二人がやってきた。片方はポーチを肩からかけた人当たりのよさそうな男性、もうひとりはやや背は低いが眼光が鋭い。皇宮警察か。興奮した。

ポーチの男性はダツオと名乗った。これがあのダツオ・・・…。聞けば魚(うを)のダツに似ていることからその名がついたのだという。正直、思ったより顔は丸っこいと思ってしまった。興奮した。

そして眼光の鋭い男は特徴的な甘ったるい声を出して挨拶してきた。なんだ、あの〝まぁ坊〟さんか……。しかし握手するとあり得ないところに血マメが潰れた跡があるように感じられた。これはイスラエル系の格闘技をやっているに違いない。興奮した。

道中

四人みな眼鏡だ。車中に乗り込む。前回のツアーでは道を大間違いしたこともあるそうで、ドライバーのブルタは慎重に助手席のダツオに道を確認しながら分岐をクリアしていく。
ダツオ「事故ったら死にやすいのは助手席のオレなんだからな! 居眠りせずに運転してくれよ!」
ブルタ「申し訳ないがあきらめてくれ」
興奮した。まぁ坊はタブレットに夢中である。

サービスエリアに到着してフードコートでみんなで昼食。トイレに行ったりしていると、早々に行方をくらますまぁ坊。ブルタ・ダツオ・ふかくさの三人で土産物売り場を探し回るも一向にみつからない。連絡もつかぬ。ダツオ「あいつは単独行動が好きだからな」。もしや今頃光の巨人と化しているのか──。しかし、駐車場に戻る手前でソフトクリームを貪っているまぁ坊を発見することができた。まぁ坊「みんな遅いよ!遊びじゃないんやぞ!!」。興奮した。

ブルタカーはぐんぐん進んでいよいよ宮城だ。日帰り入浴できるという「絶景の館」に向かう。温泉娘もおり、ブルタは一緒に撮影してご満悦。

温泉娘とツーショット!

露天風呂はまさに松島とそこへ至る橋を行き交う人々、周辺の奇岩も一望できる素晴らしいロケーションだ。反対に言えば、向こうの橋の人々からもこちらが丸見えだとも言える。露天風呂の一番いい一角には鋼の錬金術師の主人公のような細マッチョの男が湯につかっていた。眼光の鋭いその男を我々は知っている。まぁ坊だ。週に五日はジム通いだという。興奮した。

そのほか、松島の港では「トリックアート展」や港からみえる景色を楽しんだ。いよいよ民宿にログインする。女将が我々を迎えてくれ、通されたのは15畳ほどある部屋。男4人にはゆったりし過ぎるほどだ。宿の外に広がる入り江の眺めは抜群にいい。「紅の豚」に出てきたあの地中海の入り江を連想させる。我々は何度もそれを眺めに外へ出た。興奮した。

宿の飯はシャコ尽くしだ。このエビに似た魚介類が何なのかさだかではないが、魚介がニガテな私でも完食することができた。刺身もおいしい。ダツオ氏は丁寧に味わって綺麗に食すため、食べ切るのが遅かったが、ブルタからネット映えのために数回「食べ終える」ところを撮影されていた。それを後方に腕組みしてどっしり座って監視していたのがまぁ坊だ。興奮した。

豪勢な夕食であった。

入り江に夜の静寂(しじま)が訪れる。持ってきた花火をやりたいとブルタが言うと民宿のダンナが水入りバケツを快く貸してくれた。はしゃぎだす面々。

宿の前で花火に打ち興じる

入り江の手前のコンクリートの階段に行き、チャッカマンで花火をつけようとするが、風が強くてなかなか点かない。こういう場合は既に点いている花火から火をもらうのがいい。そしてオレたちは連鎖的に花火をつけ散らかす。ブルタがやたらに火を怖がるので、私は両手で花火を振り回しながら堤防まで追いかけ回した。そしたら海に落ちてブルタは死んだ。興奮した。

一風呂浴びてから、まぁ坊が持参してきたアナログゲームをいくつかプレイした。いわゆるインディアンポーカーに近い「コヨーテ」が一番盛り上がったと言えるだろう。しかし、後半になると酒の入ったブルタがゲームそっちのけで浴衣で寝っ転がって安田鋲太郎とスマホで話し始め、まぁ坊がキレた。興奮した。

典型的な旅館での寝相

翌朝、宿の女将からお守りをもらって奥松島の島へと出発する。島は中心が山となっており、海岸線上に分断された入り江があるようだ。山道を通ってそれぞれの入り江に陸路で行くことができるようだが、なかなか入り口が見つからない。駐車場で降りて山の周りを見渡して「向こう側に駐めるべきだったんじゃないか」などと言っているとブルタが山道の入り口を発見。入り口からは心臓破りのような急勾配が続き、体力もなくサンダル履きだった私には堪えた。さらに登ると道は分岐し、山の屋上(展望台)や別の入り江にも寄り道した。道の両脇には海がほとんどみえないほど樹木が生い茂っているが、その狭間からこの島の周辺に点々と存在する奇岩「軍艦島」「マンボウ島」なども幾つか確認することができた。これがリアス式海岸か……。

まるで獣道だ。標識もないところで右か左か決断を迫られる。

ついに最終目的地である乙女が浜に到着する。民宿の前の五倍はあろうかというほど大きな砂浜であり入り江だ。遙か彼方の水平線とゴロゴロした岩、そして緑。風が気持ちいい。この迫力は撮影ぐらいでは伝えることができない。興奮した。

オトメガハマで茫然とたたずむ。

もちろん、山道は往復しなければならない。決して帰りも楽では無かったが、往路の寄り道が無かったので思ったほどではなかった。「ま、俺はこれぐらいなら後2往復できるぐらい体力あるぜ」とまぁ坊氏。しかし帰りの後部座席では爆睡していた。興奮した。

駅で降車し、ブルタに別れを告げる。その後、私は新幹線のチケットを買うのに時間を食っていたが、ダツオとまぁ坊は同じ電車で帰路についたそうだ。しかし道中、一言も交わすことはなかったという──。

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