中2の夏の初恋の話

初めて恋をした中学校2年生の夏の話。    彼と私は同じ通学路だった。

彼はいつも一人で帰っていた。遥か遠くを歩いていた。夕焼けで染まる世界で、私は彼の姿を目で追いかけながら友達達と他愛のない会話をして帰っていた。

部活終わりの少し汚れたユニフォームを着ている彼の姿は普段より大人に見えた。



彼の隣で肩を並べて歩くのが夢だった中学2年生の夏。じっとりと暑さの残る夕方の田んぼ道。「ずっと好きだった」            彼の頬は夕焼けのように赤く染まっていた。  

それからの毎日は、彼と二人で帰るようになった。



田んぼ道、無言で私の斜め前を歩く彼の横顔に見惚れながら、一緒に帰った。

オレンジ色に染まる夕陽は私たちを照らしていた。夕焼けが普段より綺麗に見えて、その日から私は夕焼けを見るのが好きになった。



あの頃の懐かしい日々は遥か遠い記憶になってしまった。お互いそれぞれの道に進んだ今でも私はこの遥か遠い記憶を思い出す。



『ソーシャルディスタンス』

新しい生活様式になって、人々は互いに物理的な距離を取り生活をしている。

遠くを一人で歩いている彼との距離を物理的に縮めたいと思っていたのが私の青春だったように思える。

人との距離を取っても心の距離を縮めればいい と大人は言うのかもしれない。        私には、現代の若者達がどうするべきなのかはわからない。青春も大事だけど、人命を優先することが一番重要なのには変わらない。

現代の若者達は手探りの日々の中、学生生活を送っている。答えがない分苦しんでいる若者も多くいるだろう。

変えなければいけない現実を受け止めようと努力しながら若者達は青春の1ページを飾ってほしい、と今日夕焼けを見ながら思った。





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