「コミットメント」とは何か?
ビジネスの世界でよく言われる「コミットメント」とは?
ビジネスの世界ではよく「コミットメント」とか「コミットが高い」とかいう表現が使われます。とにかく頑張っている人のことを指した表現っぽいというのは共通認識だと思いますが、ベンチャーで80人の時代から1000人の時代を経験し、その中で「本気のコミット」をしてきた人間として、少し言葉の解釈をしてみたいと思います。
コミットメントとは、「スピード」である
コミットの高い人を見るとき、大抵その人は「スピード」が速いことが多いです。これは僕が事業責任者の時にもよく言われたことですし、ソフトバンクの孫さんも言っていることのようです。
要するに、仕事や成果にコミットしている人は、とにかく速いんです。
それは本気であることの表れです。実際ビジネスの世界では、物事は速ければ速いほど有効なのは間違いありません。
取引先や社内での連絡も、即レスした方が商談が決まりやすくなったり意思決定が速く進みますし、変化の激しい世界の中で競合よりも速いスピードで新商品をローンチできたり新たな技術革新を出していけた方が良いですし、多少遅れをとったり問題が生じたとしても、リカバリは速ければ速いほど良いに決まっているわけです。
逆に「来週でいいや」とか「急がなくてもいいか」という発想には少なからず甘えがあり、コミットの低さを表します。本気でその事業やプロジェクト、商品を成功させたいのであれば、「善は急げ」でしかありません。
コミットメントとは、「各論」である
コミットの高い人を見るとき、大抵その人は物事をかなりこと細かく「各論」まで把握している人が多いです。
好きなゲームとかスポーツとかがある人って、本当にゲームの細かい技名や属性などについてめちゃくちゃ詳しかったり、スポーツの細かい選手の特徴や直近の調子までかなり詳しいことが多いと思います。それは彼らが本気でそれらを好きだからです。
仕事においても同じです。本気でその事業やプロジェクト、商品を前進させようとしている人、良くしようとしている人は、めちゃくちゃ細かいところにまで気を配っています。数値が少しでも変動したら過敏に反応し要因を探りますし、顧客からの声は欠かさずに見てネガティブな声が上がれば途端に対策に動き出し、ポジティブな声が上がれば途端にめちゃくちゃ喜びます。商品を作っていれば、かなり細かい仕様や性質にまで詳しい人が、本気の人です。
逆に「あ、その数値の変化は把握していませんでした」とか「そんなトラブルが起きていたのは報告が上がっていませんでした」とかいう人は、本気ではありません。本気で向き合っていたら、自分から積極的にどんな細かな情報でも気になって取りに行くからです。どんなに細かい質問をしてもすぐに応えられます。気になって仕方ないのが、本気の証拠です。
コミットメントとは、「投げ出さないこと」である
上述でスピードとか各論とか、どちらかというと短距離走寄りの説明をしましたが、得てして事業を成長させていこうとする経営者やCxO、事業責任者の道のりは、長距離走、しかもハードル走になることが多いです。
僕の場合は、事業責任者になったその年に大きなインシデントに見舞われ、事業が創業以来の危機に陥り、それを立て直さないといけないというとんでもないハードルにぶつかり、かつその回復までに2年を要しました。様々な関係者が「もうこれは無理でしょ」といった趣旨の発言をし、部内にもあきらめムードのようなものが漂うことも何度もありましたが、僕だって覚悟を持ってわざわざ総合商社から80人のベンチャーにやってきたわけで、とにかく無心で何ができるか考え続け、1年後には大きく回復し、2年後には当時の業績を上回るV字回復を遂げました。
「HARD THINGS」という著名な本で、自身も有名な経営者である著者が、他の有名な経営者たちに「成功の秘訣は何だったか?」と尋ねたところ、皆異口同音に「投げ出さなかったことだ」と答えた、といったエピソードがあります。
僕も自身が上記の史上最大の危機を乗り越えられた秘訣を尋ねられたら、勿論色々ありはするものの、結局つまるところは「投げ出さなかったこと」に尽きるかなと思います。正直、理不尽だなと思っていましたし、転職しようと思えばできたわけだし、実際に「無理でしょ」って言って僕が頑張り続けているのを他の楽な場所から眺めているおいしい立ち位置の人たちだっていたわけで、辞める理由だって逃げ場所だっていくらでもあったと思います。ただ、僕は投げ出さなかった、そして、毎日毎日日付が変わるまでどうしたら事業が伸びるか、どんな打ち手があるか、を考え続けた、それだけです。「こんな打ち手があった」とか「あんな出来事があった」という1つ1つの細かいエピソードはあるものの、結局は投げ出さずに向き合い続けるという一番大事な基盤があったからこそその上に色々なものが乗っかっていっただけなんだと思います。これが、僕の思う本気であり、経営者・CxO・事業責任者が持つべきコミットメントの形です。
そして、コミットメントは「仲間」ありきだった
ただ1つだけ「条件」とか「文脈」のようなものを付け加えるとすると、僕にとってコミットメントという言葉の周辺には常に「仲間」の存在がありました。
上述した最大の危機を乗り越えるとき、あきらめムードが漂い実際に離脱する人も現れる中、数名は「自分たちに何かできることはないのか?」と言ってくれて全力で支えてくれる仲間がいました。彼らが、本来何の得にもならないと思われても仕方ない無理ゲーの中で、それでも僕と一緒に壁を乗り越えようとしてくれたことが嬉しくて、彼らに報いようとモチベーションを保つことができたのは事実ですし、それが僕のコミットメントを支えてくれました。
また、徐々にV字回復を遂げどんどんと組織が大きくなっていくにつれて、本気の人もそうでない人も玉石混合になりがちではありますが、そういう時程僕が最前線で誰よりも熱量持って働き、その背中を見せることで徐々に心に灯をともしてくれる人たちが増え、本気の仲間が増えていく、といったことがありました。それはトップが本気でコミットするからこそ生まれる、コミットの伝播であり、それらが伝播していった人たちが本当の意味での「仲間」となり、それらの「仲間」と一緒になって壁を乗り越えていくのが、経営なんだと僕は思っています。
なので、コミットは仲間によって支えられ、またコミットによって新たな仲間が生まれていく。そんな循環を生み出していくところに、経営の面白さがありますし、経営者・CxO・事業責任者を目指していく方々には、是非覚えておいていただきたい大切な考え方です。
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