魂を汚す仕事

ずいぶん昔。多分もう10年くらい昔だったか。当時ハマっていた心理学者の本を何気なく読んでいたら、ある表現が胸に突き刺さった。

「売春は、魂を傷つける」

正確な記述も文脈も忘れてしまったけれど、趣旨はそれだったように思う。 当時は援助交際なるもの(まあ、現代で言うところのパパ活だ)が流行っていて、その心理学者はそれについて「体に傷も残らない、お金も稼げる、言わなければ誰にもわからない、だけど、それは魂を傷つける」的なことを書いていたのだ。確か。

当時の私はなぜか「売春は魂を汚す仕事」とインプットしたらしく、ものすごいショックとともに、これまで誰の言葉でもビクともしなかった自分の倫理観みたいなものが初めてぐらりと揺れたのを覚えている。
尊敬する先生だったし、まるで紙面を超えて、心の内を見透かされたようだった。

人には事情があり、信念があり、嗜好がある。
私はその仕事を(短期・長期的にせよ)選んだ本当に素敵な人たちを知っている。優しすぎるくらい優しい人、気高い人、不器用な人、賢い人。みんなそれぞれの人生を真摯に生きていた。その人たちを否定する気はまったくない。

だけど、こうして長い年月を経て振り返ってみると、“それの何が問題なのか”、それがどうやってその人を苦しめるのか、それがどうやってその人の魂を傷つける/汚すのか、少しわかるような気がするのだ。


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