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コート・ダジュール【CÔTE D’AZUR】



思いがけず、僕は感じた。
心地良いまどろみの向こうに
光あふれる世界があるのだと。


Seaside Hotel の最上階の一室で、僕は夜を明かした。
 時計の針は、もう10時。
体が…、なぜだろう、甘い汗にまみれている。


昨夜のことは、何も覚えていなかった。
ただ、強烈な真夏の誘惑に
僕は、いたたまれ無さを感じていたのだった。
 

ステンドグラスの小窓を、素早く開けてみた。
まぶしい光とともに、聴こえて来るものは
“潮騒” と ”ラ・メール” という名のオーケストラ。


見上げる空は、群青色の魔法のガラスで出来ていた。
海風の妖精たちが、次々と挨拶にやって来る。
 

『おはよう❤』『おはよう❤』『おはよう❤…』
『ところで、海はいかが?』
 僕は、呼ばれるままに、海へ視線をやった。


ザブーン  シュルシュル―   ザブーン  シュルシュル―
シュルシュル  ザブーン
ザブーン  シュルシュル―   ザブーン  シュルシュル―
シュルシュル  ザブーン



泡立つ波、また波。 
それは搾りたてのトロピカルジュース。
灼熱の銀砂と、虹色じゅうたんの織り成す
ロングビーチが眼下に広がる。


乱反射する光の巨大イリュージョン。
水平線の彼方まで、絶え間なく連なるばかり。


常夏の珊瑚海に似て、極上の夢空間に似て
または太陽の楽園に似て
この海はいったい、どこまで熱いのだろう?


やがて、シエールピンクの波打ち際を
はち切れそうな天使達 (サマーガールズ)。
海鳥と戯れながら駆けてきた。 


ビーチパラソルの お花畑の中に。
そしてまた、波打ち際へ。 


Good Day Sunshine  Good Day Sunshine
Good Day Sunshine 


さんさんと降りそそぐ プリズム光線。
数知れない金のつぶてが
海一面を あざやかに染め上げていた。


沖合いには、金と銀のヨットが2艘。
ローズワインの香水を なびかせて。

 
海は、あらゆる生命のふるさと。
我が子を抱く母親そのままに
喜びも悲しみも、包み込むのだった。


幾多の思い出をかたどった雲たちが
大空のキャンバスを駆け巡る。
ストロベリー・ソーダの風———。
Sky of Blue and Sea of Green 


そうだ、どこかで僕は こんな海を見たことがある。
あれは コート・ダジュール。
決して 色褪せはしない遠い日の思い出……。
夏が巡るたび 僕は振り返る。
                          建礼門 葵



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♬BGM1曲目『太陽がいっぱい』/1960年伊仏合作映画
♬BGM2曲目『晩夏』/平原綾香
♬BGM3曲目『モア』/アンディ・ウイリアムス
♬BGM4曲目『ドランの微笑』/リチャードクレイダーマン
♬BGM5曲目『ゴッドファーザー』より≪愛のテーマ≫/ニニ・ロッソ
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