マック日記

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生て遺す プロローグ

この物語はフィクションです。 私は兵庫県の北部で生まれ育った、冬の寒い日に生まれ、名前も冬樹と月並みな命名を受け、優しくも厳しさのある両親に大切に育てられたと思…

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生て遺す 第14節

冬樹の学園生活にまたマサシが加わった、まだ校内での友人は居ないが敵対者は減った。  確実にマサシの影響だろう、他者に話し掛ける事を積極的に始めた冬樹は持ち前の特…

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生て遺す 第13節

 冬樹の心境は複雑だった、元親友マサシから聞く1年間を。 マサシは別人になっていた、元々性格が明るい気さくなタイプでは無かったのがチャラ男になっていた、話題を自…

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生て遺す 第12節

 冬樹が学校でレアモンスター扱いを受け初めてから既に1学期を終えていた。 朝、学校で冬樹を発見できれば激レアである、それぐらいの頻度で登校はマイペースを激化させ…

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生て遺す 第11節

 人生において死ぬ事以外、終わりは始まりである。 1年の終わりは次の1年の始まりで、1月の終りは2月の始まりで、1日の終わりは2日の始まりだ、冬樹にも小学生が終わり…

生て遺す 中間 登場人物紹介

 主人公:冬樹(小学6年生) 特技:目を見た他人の感情を読める・状況把握がスんゴイ・剣術 苦手な事:いっぱい  冬樹の親友:マサシ(小学6年生)冬樹と同様、周り…

生て遺す 第10節

 最上位学年になった冬樹、マサシとはクラスが分かれてしまったが親交は深かった、冬樹と同様マサシもまた周りに上手く馴染む事が出来ず、嫌われ者の称号を獲得していた、…

生て遺す 第9節

 その日マサシは、母親に対し横柄な態度を取り続けた、「うるさいねん」「黙っとけ」「邪魔やねん」・・・マサシ母の反応は終始、「はいはい」といつもの事と言わんばかり…

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生て遺す 第8節

 部屋に入るとベットに勉強机・テレビに、ゲーム機のある大きめの空間が眼に飛び込んで来た、それ以上に勉強机の上の異質な物体にも気づいた冬樹の視線にマサシが珍しく陽…

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生て遺す 第7節

 友人の家に初めて訪れる時の気持ちなんて覚えてますか? 冬樹はマサシの家に向かう、当然初めて訪れる場所なのでマサシが途中まで迎えに来てくれた。 マサシの家はかな…

生て遺す 第6節

 この時期の転校は珍しく、クラス全員が黒板前に立つ彼を凝視していた。 冬樹が彼に抱いた印象は「他の人と違う」だった、やや長めの髪に、目を上から半分隠す前髪、下か…

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生て遺す 第5節

 久方振りの学校、正門前で冬樹の心境は複雑を極めた。 担任からの説教・同級生からの叱責・集団に異物が入り込む際の排斥行動など、だが冬樹の予想は教室に入ると同時に…

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生て遺す 第4節

 状況把握と言っても冬樹のそれは先見の明に近い。 授業中に後ろの浅野さんは後ろの席の佐野君に回す手紙を書いている・2個左隣の北山さんは教科書に落書きしている・1…

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生て遺す 第3節

 冬樹が他人と上手く付き合う事が出来なかった原因の1つに未成熟な精神には過ぎた特技を持っていた事が上げられる。 他者から向けられる感情を過敏に読み取る事ができる特…

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生て遺す 第2節

 目を閉じれば思い浮ぶその姿はまさに女神様・・・は言い過ぎかも知れないが当時の冬樹にしてみれば美千代さんは廃色の世界にただ一筋のカラフルで暖かく優しい色彩をくれ…

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生て遺す 第1節

 2年3組の教室で前から2列目、廊下側で1番端が冬樹の席、春うららかな陽気のその日にクラスのムードメイカー的存在の竹田君は教室に響き渡る程の大声でこう言った。 「…

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生て遺す プロローグ

この物語はフィクションです。 私は兵庫県の北部で生まれ育った、冬の寒い日に生まれ、名前も冬樹と月並みな命名を受け、優しくも厳しさのある両親に大切に育てられたと思う。 そんな私の半生を是非に書き綴りたいと思い、使い慣れないノートパソコンのキーボードを慣れない指使いで右往左往する。  7歳の私が小学2年生の時に気づいた現実は、絶対に抗えない事態が人には必ず起こる事。 「自分の世界は全てが自由」で何もかもが思い通りになると思って外界に出た子供ならではの在り来りな通過儀礼の一つ

生て遺す 第14節

冬樹の学園生活にまたマサシが加わった、まだ校内での友人は居ないが敵対者は減った。  確実にマサシの影響だろう、他者に話し掛ける事を積極的に始めた冬樹は持ち前の特技で相手の感情を感じ取り、興味の有無を察知しては正確に話題を変える事ができた、相変わらず他者の敵対心には直球に感情をぶつけてしまう為いざこざは絶えなかったが、確実に高感度は上がって行った。 冬樹の1番の楽しみは放課後にマサシと遊ぶ事だった、服を買いに行ったり、書店に行ったり、ゲームショップに行ったり、駄菓子屋に行っ

生て遺す 第13節

 冬樹の心境は複雑だった、元親友マサシから聞く1年間を。 マサシは別人になっていた、元々性格が明るい気さくなタイプでは無かったのがチャラ男になっていた、話題を自分から差し出し、しっかり笑いを取る、話し易いナイスガイになっていたが、色々話す内に些か無理をしてしるのも冬樹は感じ取っていた。  久方振りにマサシの家に遊びに行く約束をした、足早にマサシのマンションに向かい、玄関前に来る、チャイムを鳴らすと即座にマサシが「入って」とチャイム越しに答える、部屋に入ると以前と変わらない

生て遺す 第12節

 冬樹が学校でレアモンスター扱いを受け初めてから既に1学期を終えていた。 朝、学校で冬樹を発見できれば激レアである、それぐらいの頻度で登校はマイペースを激化させていた、登校しても授業中は眠っている事の方が多い始末、勉学についていけなかった事もあり、もう何をしに学校に通って居るのか分からない程である、冬樹自身の頭の中にも寝る事と食べる事、家に帰ってゲームやテレビで何を見るかを考える事以外しなくなっていた。  教師からの評判も良く無かったのだろう、下校時に部活の顧問が大声で「

生て遺す 第11節

 人生において死ぬ事以外、終わりは始まりである。 1年の終わりは次の1年の始まりで、1月の終りは2月の始まりで、1日の終わりは2日の始まりだ、冬樹にも小学生が終わり中学生が始まる。  冬樹の通う中学校は2つの学区の集合型で、同じ同郷のクラスメイトは1年生の役半数となった、もう半数は初対面な訳だが、圧倒的に悪童と化していた冬樹の小学生時代の痴態や悪態が他の生徒に知れ渡るのに2ヶ月も掛からなかった。 中学に入りマサシとはクラスが分かれてしまい、新たな環境に馴染む為、お互いが

生て遺す 中間 登場人物紹介

 主人公:冬樹(小学6年生) 特技:目を見た他人の感情を読める・状況把握がスんゴイ・剣術 苦手な事:いっぱい  冬樹の親友:マサシ(小学6年生)冬樹と同様、周りに馴染めない嫌われ者、家庭環境が特殊で、マサシもまた自分に積極的に関わって来る冬樹に特別な感情を抱く様になる、冬樹の人生端の中で特別な存在  冬樹の初恋の相手:東 美千代(あずま みちよ)冬樹の3歳年上のお姉さん、剣術道場の同輩、先い中学校に進学した為道場通いが減少した為疎遠気味になる 『あらすじ』 幼少期から

生て遺す 第10節

 最上位学年になった冬樹、マサシとはクラスが分かれてしまったが親交は深かった、冬樹と同様マサシもまた周りに上手く馴染む事が出来ず、嫌われ者の称号を獲得していた、だからこそお互いの親交は途切れる事はなかった。  冬樹の小学6年生時代を一言で表すなら正に修羅であった、上学年ともなると男子生徒同士の衝突は熾烈な物となり、血を流す事も珍しく無くなった、校門で3人組に待ち伏せされた事も有った。 毎日違う人間と殴り合いをして居ると心も自然に荒む物で、冬樹は一層人間不審を募らせた、また

生て遺す 第9節

 その日マサシは、母親に対し横柄な態度を取り続けた、「うるさいねん」「黙っとけ」「邪魔やねん」・・・マサシ母の反応は終始、「はいはい」といつもの事と言わんばかりに生返事をして、感情には悲しみ、嫌悪や怒りは全く無かった、当然マサシにも憎しみや嫌悪、怒りなどは無く、挨拶をしているかの様に無機質な感情だけを冬樹は双方から感じ取っていた。 「ええの?こんな事してて?」 マサシ母が部屋を出た後、冬樹はマサシに直接問い掛けた、子供ながらに冬樹は不安感や、言い知れぬ恐怖を感じていたから

生て遺す 第8節

 部屋に入るとベットに勉強机・テレビに、ゲーム機のある大きめの空間が眼に飛び込んで来た、それ以上に勉強机の上の異質な物体にも気づいた冬樹の視線にマサシが珍しく陽気な声で言った。 「面白い物見せてあげるよ」  マサシの母親がジュースとお菓子を持って部屋に入って来たタイミングは正に神がかっているのだろう、またマサシがそのタイミングすらも計算して居たのならコイツは何度と無く繰り返した行動なのだろうと少し恐怖すら覚えた。  「ノックしろよ!ババァ!!」 と部屋に入った母親に向

生て遺す 第7節

 友人の家に初めて訪れる時の気持ちなんて覚えてますか? 冬樹はマサシの家に向かう、当然初めて訪れる場所なのでマサシが途中まで迎えに来てくれた。 マサシの家はかなり大型のマンションで、今にして思えばかなり裕福な家庭だったのだろう、この時代では珍しいセキュリティがしっかりしたオートロック付きのエントランスホール(自動ドア前のパネルが何に使うのか当時は不明だった)、自動販売機コーナーに、テニスコートまで完備、部外者が入れない鍵付の駐輪所・・・オイオイオイオイオイオイ マサシは

生て遺す 第6節

 この時期の転校は珍しく、クラス全員が黒板前に立つ彼を凝視していた。 冬樹が彼に抱いた印象は「他の人と違う」だった、やや長めの髪に、目を上から半分隠す前髪、下から上に見上げる様に人を視るその独特の雰囲気は他者から見て異質・不気味・根暗などだろう、だが冬樹に取って彼は初めて見る興味の対照だった。 「はじめまして、マサシくん、冬樹って言います」 「・・・・はじめまして」 「いきなりやけど友達ならへん?」  冬樹が彼に感じた印象は親近感、でも自分に無い、周りにも無い特別な

生て遺す 第5節

 久方振りの学校、正門前で冬樹の心境は複雑を極めた。 担任からの説教・同級生からの叱責・集団に異物が入り込む際の排斥行動など、だが冬樹の予想は教室に入ると同時に大きく変化した。 教室内の全生徒から感じたのは冬樹が予想したネガティブな感情では無く、久しぶりに見る同級生の、しかも子供ながらに不登校生は未知の存在と思っているのだろう、興味津々な感情、他者を思い遣る慈愛、そんな感情が冬樹に流れ込む。 休み時間の為、担任教師は居ない、そしてクラス替で竹田君は1組に冬樹は3組なって

生て遺す 第4節

 状況把握と言っても冬樹のそれは先見の明に近い。 授業中に後ろの浅野さんは後ろの席の佐野君に回す手紙を書いている・2個左隣の北山さんは教科書に落書きしている・1番後ろ窓際の竹内君は下を向いて今にも眠るだろう、そして約5分後には、現在授業を担当する丹野先生が竹内君の居眠りを嗜めるだろう。  冬樹の特技の真髄はこれを全て同時に把握している事である、そして同時に嫌な先見もある。今正に、斜め後ろの席、佐藤君が自分に投げ付ける消しゴムのカスを量産している・・・  冬樹がこの特技を

生て遺す 第3節

 冬樹が他人と上手く付き合う事が出来なかった原因の1つに未成熟な精神には過ぎた特技を持っていた事が上げられる。 他者から向けられる感情を過敏に読み取る事ができる特技なんて誰しも多少は持ち合わせているが、冬樹のそれは大人顔負けの精度を誇るものだった。  初対面の人間同士が他者に抱く感情は疑心・期待・不安・無関心など状況や出逢い方一つで多種多様であり、大抵の大人が関係を構築する上で自然に行う挨拶や自己紹介、今日の天気の話なんて在り来りな会話でも良い訳で・・・そんな会話の中で相手

生て遺す 第2節

 目を閉じれば思い浮ぶその姿はまさに女神様・・・は言い過ぎかも知れないが当時の冬樹にしてみれば美千代さんは廃色の世界にただ一筋のカラフルで暖かく優しい色彩をくれる存在だった。 美千代「ふゆき!元気?」 優しい笑顔に明るい声、道着に身を包み、長い髪を後ろで束ねるその姿は、当時の冬樹には特別な雰囲気を纏って見えた。 冬樹「んっ・・・元気」 ぶっきらぼうに返事を返すが正しくは緊張から会話をまともにできないだけである。 そもそも道場には毎週通っていたが決して習い事に真剣だったのでは

生て遺す 第1節

 2年3組の教室で前から2列目、廊下側で1番端が冬樹の席、春うららかな陽気のその日にクラスのムードメイカー的存在の竹田君は教室に響き渡る程の大声でこう言った。 「クラスで1番のバカは冬樹だよな〜みんな」  これは酷いと思った方!大丈夫、悪い所だけ書くと竹田君は最低であるが、日頃から竹田君にチマチマ嫌がらせや否定をしていたのは冬樹本人です・・・因果応報・やった事はやり返される。 クラスの皆も当然の様に冬樹の敵に回る、授業中に冬樹が間違った漢字や計算を此処ぞとばかりに冬樹に問い