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生て遺す 第7節

 友人の家に初めて訪れる時の気持ちなんて覚えてますか?

冬樹はマサシの家に向かう、当然初めて訪れる場所なのでマサシが途中まで迎えに来てくれた。

マサシの家はかなり大型のマンションで、今にして思えばかなり裕福な家庭だったのだろう、この時代では珍しいセキュリティがしっかりしたオートロック付きのエントランスホール(自動ドア前のパネルが何に使うのか当時は不明だった)、自動販売機コーナーに、テニスコートまで完備、部外者が入れない鍵付の駐輪所・・・オイオイオイオイオイオイ

マサシは自宅に向かう道すがら珍しく冬樹に色んな事を話してくれた、家族の事や前の学校ではどんな友人が居たか、また今回の転校を望んで居なかった事も、親の仕事が上手く行っているから大きな家に引越す事になった・・・漠然とした理由しかマサシも理解できていないのだと思った。

 マサシの父親はあまり家族思いな人では無かったらしく、転居は父親が1人で勝手に決めた事や良く母親が殴られている事を冬樹に語った、その時のマサシは今まで以上に無機質で他人事の様だったのを強烈に記憶している、冬樹に取って両親とは尊敬や慈愛の対照なのでマサシの言葉には違和感を残したのだ。

 家に招き入れられた時にまず最初に出会ったのはマサシの母親だった、張り付けた様な笑顔で疲れた目を向け「いらっしゃい」と一言だけ冬樹に発した、「お邪魔します」と返した冬樹にマサシは「こっち」一言だけ言って自室へ直進した。

第8節に続く


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