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生て遺す 第13節

 冬樹の心境は複雑だった、元親友マサシから聞く1年間を。

マサシは別人になっていた、元々性格が明るい気さくなタイプでは無かったのがチャラ男になっていた、話題を自分から差し出し、しっかり笑いを取る、話し易いナイスガイになっていたが、色々話す内に些か無理をしてしるのも冬樹は感じ取っていた。

 久方振りにマサシの家に遊びに行く約束をした、足早にマサシのマンションに向かい、玄関前に来る、チャイムを鳴らすと即座にマサシが「入って」とチャイム越しに答える、部屋に入ると以前と変わらない家具配置、衣類や書籍やコミックスが新しく増えた物だがきっちり整理整頓されていた、マサシはお片付け上手で綺麗好きなのは1年前から変わって居ないと安心した。

相変わらずマサシ母へは態度が酷いが手は出さなくなっていた。

「久しぶりやねー冬樹君」

マサシ母は今までよりも更に窶れた様に見えた・・・

「ご無沙汰してます」

挨拶も早々にマサシの話に戻る、1番興味を引いたのは何故マサシが激変したのかである、子供ながらに自分も変わるヒントがそこにある気がしたからだ。

 マサシの話は面白かった、1日では全て聞き終えれない程に、まずマサシ本人から「小学生の時俺もお前も周りからめっちゃ嫌われてたよな〜」

自らその純然たる事実を語って来た事に冬樹は内心驚愕した、冬樹が当時1番出来無かった事、自己認識・客観的に自分を見る事・認める事、それらが全て詰まった一言だった。

 「俺、中学生なってまでそんなん嫌やから自分からクラスの奴に話に行く事にしてん、当然いきなり同郷の奴等はハードル高いから初対面のクラスメイトに休み時間になる度に違う奴に話して回ってんやんか、そんなら同じゲームしてる奴とか好きな漫画の話しなって、人と仲良くなるんなんて簡単や思ったわ」

「えっ、じゃあ今はクラスに友達おんの?」

「そら1年も経つしおるよ、でも友達の作り方は冬樹が教えてくれたんやんか」

「教えてへんわ!てか俺まだ友達おらんわ!!」

冬樹の淋しいセリフがマサシの部屋に響く・・・

「小学校の時、転校したての俺に1番最初に話しかけて直ぐ友達なってくれたやん」

「・・・・そうやったっけ??」・・・第6節参照

「覚えてへんならええけど、そんなんがあって友達は待ってても出来ひん事は小学校で学んだ、だから中学では自分で話しかける事にしたんや、あん時の冬樹みたいに」

 マサシが語った衝撃の話に嫌な気は全くしないが、自分には依然友人がいない事実に複雑な心境の冬樹、だがこれ以降、少しずつ冬樹の心境には変化が現れ、自分も変われる事を確信して行く事になる。

第14節に続く


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