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生て遺す 第11節

 人生において死ぬ事以外、終わりは始まりである。

1年の終わりは次の1年の始まりで、1月の終りは2月の始まりで、1日の終わりは2日の始まりだ、冬樹にも小学生が終わり中学生が始まる。

 冬樹の通う中学校は2つの学区の集合型で、同じ同郷のクラスメイトは1年生の役半数となった、もう半数は初対面な訳だが、圧倒的に悪童と化していた冬樹の小学生時代の痴態や悪態が他の生徒に知れ渡るのに2ヶ月も掛からなかった。

中学に入りマサシとはクラスが分かれてしまい、新たな環境に馴染む為、お互いが今まで同様の交友関係を維持するのに困難を極めた、それも自然な成り行きなのだろう、冬樹は1組でマサシは5組、同じ校舎でも階層が1階違うだけで疎遠になってしまったのは成程、子供の空蝉ならではである。

 冬樹自身も小学校から中学校に移り変わる事に少なからず期待と少し大人に近付いたと言う高揚感を感じてはいたが、正直、小学校時代から何一つと変わり映えしない他者の感情に晒せて正直うんざりしていた、アニメやドラマは所詮フィクションだと更に捻じ曲がった。

 学校規定で生徒は必ず1つの部活動に所属が義務化されており、冬樹はかなり悩んだが幼少期から学んでいた剣道部を選択した、この時代先輩は絶対、後輩は何をされても絶対服従が暗黙の了解だった、想像出来るだろうか当たり前の様に3年に竹刀で突かれ壁に打付けられる2年、更衣室で陰湿に2年から罵倒され殴られる1年、社会の縮図が一気に垣間見えた気にすらなる、排他的で個を誇示する事に優越感を覚え、年長者=絶対強者と君臨していた。

冬樹が朝の1限、2限の授業をサボる様になり、部活動にも顔を出さなくなっていったのは剣道部において3年の部員全員を練習試合で負かし、その後陰湿な報復を受け始めた日から程なくの事だった。

第12節に続く


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