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あそびが解き放つ生命のエネルギー:あそびの精舎訪問記 Part 2/5

2024年4月に應典院のあそびの精舎構想が始動した。「葬式をしない寺」として、人の心に寄り添う本来のお寺の営みに立ち戻り、地域の暮らしに根差したライフコモンズの在り方を探ってきた應典院の新たな挑戦である。共に遊ぶことで、世代を超えて、生命の繋がりに気づき、生きることを見つめ直すというその構想に心打たれて、3月23日に開催されたオープン記念プログラム「子どもいろいろ探究フェス」に参加した。当日の5つの探究プログラムを通して、「あそび」について考えてみる。

目次
1. 空間と空気感に触発されるエネルギー
2. あそびが培う身体感覚の豊かさ:「日本と海外の伝承遊びで体幹作り」
3. 子どもから学ぶ創造力:「紙皿大変身!~自然の枝葉や実で工作しよう~」
4. 身体技法で培う心の持ち方:「合気道の動きを入れた体操と呼吸法に挑戦!」
5. コミュニケーションの基本に立ち戻る:「海外の人ってどんな人?留学生と対話してみよう!」
6. 音楽と静寂が調える陰陽のエネルギー:「リトミック音楽&キューバの歌ってどんなの?」
7. 大人の日常にこそ、あそびを

3. 子どもから学ぶ創造力:「紙皿大変身!~自然の枝葉や実で工作しよう~」

主宰するのは、キャンプが好きという女性二人。紙皿を台紙に、山から集めてきた豊富な素材を使って工作する。好奇心をもって、子どもたちは、机に盛られた自然の素材を眺め、触って選ぶ。「同じ形が欲しい」という子どもに対して「うーん、自然のものだから同じ形はないなあ」。それも学びの過程。

工作で活用するのは、触覚や手先の器用さだけではない。使いやすい長さに枝を折ったり葉をちぎったりするには、握力も試される。様々な木の葉や枝を組み合わせて「何に見えるかな」と想像力を働かせる。紙皿の上で素材をいじりながら、自分の思考をそのまま言葉にしながら、形を作っていく子どももいれば、ちょっと工作しては、他のことをしに席を立ち、また戻って断続的に作り上げていく子どももいる。弟の工作を助けていたお兄ちゃんは、ふと何か閃いたように自分でも工作を始める。車好きの男の子は、紙皿に枝葉で軽トラックを作り、仕上げにピンクの色を塗る。色のセンスや視覚も培われる。すると、周囲の子どもも影響されて、紙皿を塗りつぶし始める。子どもの創作の過程は、創作物以上に個性的で面白い。

創作の場には、様々な相互作用が働いている。子どもは、思い思いに手を動かしつつ、見守ってくれている大人や周囲の子どもとの関わりのなかで、作品を仕上げていく。「できたよ」と誇らしげに親に完成品を見せに行き、親を子どもの世界観に巻き込んで行く。ある母親は、子どもの作品を見て、「こんなことできるんだ」と気づきになったという。お片付けまで含めて、工作の工程。今度は大人の意識が向く方向に子どもが巻き込まれていく。

4. 身体技法で培う心の持ち方:「合気道の動きを入れた体操と呼吸法に挑戦!」

合気道衣と袴姿の女性講師が迎えてくれる。それだけでも、背筋が伸びる。

「合気道と空手の違いは?」と問われて、答えられる大人も子どももいない。空手は格闘技であるのに対して、合気道は、相手の力を受け止めて流す。

軽く身体をほぐして、体験してみる。まず呼吸・気に意識を向ける。「えいほ」の掛け声とともに身体を動かすと、力の入り方が違う。気を入れることは、自分を強く持つことにも繋がる。だが、その強さを以て闘うのではない。相手と気を通わせて、自分に向かってくる力を受け流す。ひとつひとつ動きを分解しながら、親子のペアで体の転換を練習する。片足を軸に身体を転換する動きは、私が以前習っていたサルサの動きに似ている。

「体の転換」は、子ども心にも響いたようだった。幼い子どもからは、「強くなった」「身体を守れる」という感想が聞かれた一方、「やられたらやり返す必要はない」という学びを得た小学生もあった。小学生の世界は意外に大人の世界に近いのかもしれない。子どもたちの感想から、自分が中心にある幼少期から、他者を意識し始める学童期への子どもの心の在り様の変化が垣間見れた。

年齢を問わず、合気道の奥議には普遍性がある。

(続く)

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