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医学生は何を学んでる? ②基礎医学ver.

すぐ終わってしまう一般教養と、ついにはじまる医学

 前回記事の続きです。では、2年生になる頃から、医学生は何を学ぶのでしょうか?一般教養はだいたいこのあたりで終わりになってしまいます。経済学・経営学などを学ばないケースは多々あります。

 だいたい、医学生は2年生の一年間で、「基礎医学」というジャンルを学ぶケースが多いと思います。

「医学」と付くからには、やる気を復活させようとする医学生たち

 医学生の大半はここで「やっと本格的に医学を学び始めるぞ」とちょっとだけ「やる気」を回復させつつ、またちょっと目を輝かせるような気持ちで授業に「舞い戻って」くるのです。とはいえ、すでに部活中心・バイト中心の大学生活に染まってしまっており、授業をまともに聞いて学ぶ体力はほとんど「失って」しまっています。

医学生をおそう「基礎医学の難関」と、またしても「儀式」的な授業

 そして、その「体力を失った」医学生に待ち受けているのが「難しすぎる、何言ってるかわからない(なんなら教えてくれている先生も分かってる?教科書読み上げてるだけじゃない?)」授業です。

 一言でいえば、「難しいことを難しいまま」教えて、形式的な授業をしている(ようにしか見えない)先生たちの授業が、「あまりにも面白くない」のです。ちょっと「医学」とついたから「そろそろ勉強にもちゃんと向き合おう」と思い始めた医学生たちも、すぐ興ざめして、あっという間に「単位だけ取れればいいや」状態になってしまうのです。

「基礎医学」こそめっちゃ難しい

 たぶん、基礎医学を学び始めたばかりの医学生も、一般の方々にとっても、この感覚はないと思うのですが、「実は『基礎』医学という学問こそ最難関」なのです。
 物理工学部の学生が大学で学問として量子力学を学ぶ、あるいは経済学部の学生が大学で学問としてマクロ経済学を学ぶときのような、ガチな学問なのです。大学の授業「らしい」といえばそうかもしれません。
 そして、教員も、「教育を専門としていない」ため、それらの学問をわかりやすく噛み砕いて説明することもしません。教員にとっては実験がメインで、授業は片手間だからです。

「フツーの大学教育」の光景となんら変わりない

 つまり、「医学部といえど、建物の内部で繰り広げられている光景は『フツーの大学とほとんど変わりない』」というわけです。サボっている学生、寝ている学生、儀式的な授業をしている教員。大学の自由な学風に僕はすごく憧れますし、大学の良さも知っている。
 だけど、「将来医師を目指して、そこそこモチベーションのある学生たち」に「もっと将来の医療を任せられるような良い教育」はできないのだろうか?と強い葛藤をいだいていました。

 「いまだにこんな授業をしていては、彼らのモチベーションはどんどん失われていくぞ。」と声を大にして言いたいのです。

「医学生」なのに「医学」に本気になれないジレンマ

 一般大学と違うところといえば、このジレンマかもしれません。「基礎医学」というのはあくまでも実験・研究や学問としての側面が強く、「臨床ですぐ役立つ」知識というよりは『潜在的に、将来役立つ可能性がある知識』」なのです。「卒業後に医師として社会に貢献したい」というモチベーションだけは、「ちゃんとある」医学生にとってここがジレンマです。

 もちろん、教員は学生の出席率が低かったり授業で寝ている学生がいると怒鳴ることもあります。「将来、医者になろうとしている者たちが、こんな不真面目で良いのか?」と罵声を浴びせることもよくありました。医学生達はこの殺し文句を言われると「ぐうのね」も出ません。

 「やる気が無いわけじゃないし、将来立派な医者にはなりたいと思ってる。だけど、そんなモチベーションだけでこの授業をずっと集中して聞き続けていられないよ」というのが本音だったように思います。

 こうして、「将来医者になろうとしている医学生はロクなやつがおらん」と思いこむ教員 v.s. 「こんなわかりにくい授業されても、しかも将来どう役に立つか全然分かんないし」と授業から逃げ出す学生の不毛な対立(冷戦?)が生まれていたような気がします。そんな対立があった、と自覚していた学生や教員はおそらくほとんどいなかったと思いますが、、、

余談:この時期の学生に「基礎医学こそ面白い」と思わせたい

 かなり余談なのですが、許可さえもらえたら、この時期の医学生に対し基礎医学を教える立場になりたいなと本気で思っています。

 「『基礎医学の内容』って実は臨床でこんな風に役立っているんだよ。今はツライけど、こうやって役立つこともあるよ。」と、今学んでいる知識が将来にどう役立つかを伝えながら、面白いと思ってもらいたい。イキイキと、「今日の授業はなにが学べるのかな?」と思ってもらえるような授業を繰り広げられる存在になりたいです。

 もちろん、学生には大学生ライフをエンジョイしてほしい。部活に熱中してほしい。それらからかけがえのない学びがあるのは心底同意できます。
 むしろ将来に直結しているのは部活の経験やバイトの経験、恋愛経験だったりします。

 だけど、そこに「勉強が不在」でいいとは思わない。授業は授業で楽しんでほしい。眠気と戦って数時間、椅子に座り続けるだけの苦痛で無駄な時間にしてほしくない。大学ライフを「ただの思い出作り」にはしてほしくないのです。

提案:現役若手医師へ気軽に相談できるサービス(?)

 どうでしょうか、医学生の皆さん。「現役の医師にオンラインで相談できる医学生のためのチャンネル」とか?
 反響があれば、小さく始めてみてもいいかなーと本気で思っています。研修医のための、というのもやりたいですね。僕の経験とか想いが、みなさんを勇気づけたり、日々のモチベーションを高める助けになったらこれ以上の喜びはないなあと考えています。

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