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「自然派ワイン」「オーガニックワイン」「ビオワイン」の違いって?

ほとんどの方が一度は「オーガニック」「サステナブル」「ロハス」といった単語を耳にしたことがあると思います。地球環境や全ての動植物、働く人にやさしいということは、ただのファッションではなく、企業活動や個人消費の責任になっていると感じます。

製品自体は素敵なモノでも、その製造背景に悲しいストーリーがあると、心から楽しめないし、罪悪感すら感じます。

そのような時代の流れは、勿論ワイン業界にも波及しています。今回は、ワイン業界でよく聞く「自然派」「オーガニック」などの定義や違いを整理したいと思います。

※未だ多くの説があり、定まっていないことも多いので、様々な本や記事を読んだ僕個人の考えとして捉えていただけると嬉しいです!

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「自然派ワイン」の定義

最近、特に耳にすることが多い「自然派」という単語。レストランやワインショップでもよく使われていると思います。

結論から・・・

実は、これには明確な定義がないのです。ですが、前提として、化学肥料や除草剤、殺虫剤を極力使用せず、醸造過程においても人工的なケミカルな物質を加えないという"考え方"のもと、作られたワインである ということです。

つまり、後述する自然農法・有機農法・ビオディナミ農法については、全てこの「自然派ワイン」の中の「栽培方法」の種類です。

「ヴァン ナチュール」「ナチュラルワイン 」という単語も聞いたことがある方も多いと思いますが、これは自然派ワインと同じ意味です。一口に「自然派ワイン(=ヴァン ナチュール、ナチュラルワイン)」と言っても、多くの種類の栽培方法や醸造方法があります。

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亜硫酸塩は身体に悪い!?

その他の定義に入る前に、ワインの裏ラベルによく記載されている「亜硫酸塩」という酸化防止剤の話をさせてください。

これは、酸化防止のためはもちろんですが、バクテリアの繁殖を防ぐためにも使われます。

何故これをラベルに表記する必要があるかというと、大量に過剰摂取した場合に、アレルギー反応の原因物質になる可能性があるためです。そのため10ppm(1ppm = 0.0001%)以上の量を添加した場合は、ラベルに表記する義務があります。

ただし、この亜硫酸は発酵の過程で必ず発生する物質です。なので、完全に含有量ゼロのワインは存在しません。スーパーなどでよく販売されている紙パックに入った「酸化防止剤無添加ワイン」にも、"添加"はしていませんが、発酵段階で微量発生しています。

勿論、なるべく使用しない、摂取しない、に越したことはないですが、ワインの熟成には必須ですし、悪いバクテリアの増殖を抑制し味わいを安定させたり、味わいをまろやかにしたりする効果もあるため、得られる効果も大きいです。

また、ワインに含まれる亜硫酸は、ドライフルーツなどの他の食品と比較しても低濃度です。ワインの中に溶けた時点で亜硫酸の約半分は、糖分などの他成分と結合し無害な状態になるので、人体に影響する量は添加量よりも少なくなります。さらにボトリングした後は時間の経過とともに含有量は減っていきます。つまり、人体にはほとんど影響を及ぼさないと言っていいでしょう。(各個人の体質や体調もあるため、断定はできませんが。)

僕個人としては、亜硫酸に神経質になりすぎず、ソムリエやGoogle先生に「そのワインの製造方法」を聞いてみることをお勧めします!

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「オーガニックワイン」の定義

下のマークをみたことがありますか?このようなマーク入りのワインを有機認証を得たオーガニックワインと呼びます。人工的なものは使用せず、有機物質により畑をコントロールし造られたワインです。

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このマークは、発行する団体や国によって異なり、認可されるための条件も大きく異なります。

例えば、先の亜硫酸塩を例に挙げると、アメリカでは添加した時点で認可されません。対してEU圏内では、赤ワインは100ppm以下。辛口の白・ロゼワインは150ppm以下と定めています。

有機認証を受けた添加物質以外の使用を許されないのですが、裏を返すと認証を受けた物質なら何でも加えてOKです。(!!!)

認可を得ているものの1つに、ボルドー液があります。ボルドー液とは、ブドウを病害から守るために散布するものなのですが、その中に硫酸銅が含まれます。

つい先日、ワインインポーターのWine In Styleさんとnakatoさんが共同で開催した「2人の日本人醸造家に聞くマールボロとソノマでのワイン造り」に参加させていただきました。

ニュージーランドのマールボロに位置するFolium Vineyard(フォリウム ヴィンヤード)の岡田岳樹氏と、カリフォルニア ソノマにワイナリーを構えるFreeman Vineyard & Winery(フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー)のアキコ氏による対談形式のオンラインセミナーです。

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主催する2社とワイナリーのお二方、素晴らしい機会をありがとうございました。

今回の趣旨から外れてしまいますので、テイスティングした4銘柄については後日Instagram上でまとめたいと思います。始めて間もないですが、フォローいただけると嬉しいです。

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今回のセミナーの中で、岡田氏もボルドー液の件に触れていました。やはり土壌に硫酸銅を散布するのは好ましくないようで、アキコ氏も同意されていました。

ボルドー液の過度な使用は「オーガニック」の考えから外れるため、2019年1月からEC(欧州委員会)によって、畑に散布できる硫酸銅の上限を削減されています。今後、この流れは世界中にさらに広がっていくでしょう。


「ビオワイン」の定義

今回のnoteを書くにあたって、非常に難しかったのがこの定義です。他の方のブログや記事を読むと「オーガニックワイン」の規制をより厳しくした製造方法から造られるワイン、とする方も見られました。国によっても異なるようです。

僕個人の考えとしては、「ビオワイン」は「オーガニックワイン」と同じ意味として捉えています。では、なぜ2つの単語が存在するのか。あくまで推測ですが、「ビオディナミ農法」という製造方法から転じているのでは?と考えています。

オーガニックワイン=ビオワインには、「有機農法」と「ビオディナミ農法」という2つの製法があります。また、同じ自然派ワイン(という考え方の中にいる仲間)ですが、オーガニックワイン=ビオワインとは考え方の違う、「自然農法」についてもご紹介します。


「有機農法」とは

オーガニックワインの生産者の多くが、人工的な殺虫剤や除草剤、化学肥料の使用を禁じています。そして、有機的手法(例えば動物の糞や、発酵した植物を肥料にしたり、ニワトリで害虫駆除をしたり)によって、ブドウを病害から守ります。

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ビオディナミ農法」とは

別名バイオダイナミクス農法とも呼ばれ、「有機農法」をより発展させたもの。宇宙規模でブドウ栽培を捉え、星の動きや月の満ち欠けによって収穫時期を決めたり、水晶を砕き粉状にしたものを雌の牛角に詰めて土中に埋めたりすることもあります。

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ホメオパシーとよばれる調合剤を適時散布し、そこに蓄えられたエネルギーが水に伝わり、染み込んだ土壌の力が強まり、宇宙の諸天体と大地の呼応関係が活発になる…と信じられています。並大抵ではないブドウへの注意や努力を要するため、これを徹底するワイナリーは少数です。

また、その年の天候によってこの農法を採用したり、しなかったりすることがあるため、ラベルにはビオディナミ農法であることを表記をしない生産者も多いです。

亜硫酸塩の使用は、基本的に100ppm以下。ヨーロッパ圏内は特に厳しく、赤ワインは70ppm以下。白ワインは90ppm以下と定められています。

かの有名なロマネコンティやルロワ、ルフレーヴといった珠玉のワインたちも、現在この製法を採用しています。

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「自然農法」とは

先述の通り、「有機農法」では有機物質(動物の糞など)を使うことで畑をコントロールしますが、「自然農法」は、人の介入自体を極力避けます。つまり、有機的なものであっても肥料を散布したりしません。

本当の意味で、他の動植物と共生、そして競争させ、その土地のテロワール※を大事にします。(※テロワールとは、その土地本来の土壌、気候、地形などが作物に与える影響を意味します。)

両者とも自然環境を考え、人工的な物質を使わない という点は一致し、同じ「自然派ワイン」に属しますが、畑へのアプローチの仕方が真逆です。

「自然農法」は、とにかく自然の流れに身を任せる というスタイルなのです。

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まとめと個人的考え

文章を読んでいてとても混乱したと思います。書いている僕自身も混乱しましたので・・・。今までのお話を簡単に図解しましたので参考にしてください。

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※白字は製造方法です。さらに細分化しようと思えば、他にも多くの製造方法があると思いますが、僕自身農業の専門家ではないため、割愛させていただきます。詳しい方はコメントいただけると嬉しいです!


国や団体によって定義が異なるだけではなく、「自然派」という言葉が「自然農法」に似ており、「ビオワイン」が「ビオディナミ農法」と混同しやすく、非常に紛らわしいですよね・・・。分からなくなったら、僕個人の考えですがお伝えできるので、いつでもコメントくださいね。

オーガニック認証マークを過信することなく、実際にどのような方法で作られているのかを調べることが大切だと思います。条件を満たしていても、強いこだわりからあえてマークを記載しない生産者も多いです。そんな時のためのソムリエですので、お気軽にご相談ください。

多くの大手有名ワイナリーも、続々と自然環境にやさしいワイン造りを実践し始めています。飲んで美味しいのは勿論ですが、背景にある地球を思うストーリーを思い浮かべながら楽しめるワインが、今以上に増えることを願います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!!


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