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小説・「塔とパイン」

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作:よわ🔎 概要:45歳、片田舎の洋菓子店のパティシエが、紆余曲折、海を渡ってドイツでバームクーヘンを焼き始めた。 ※毎週日曜日更新(予定) ※作品は全てフィクションです。著…
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#菓子

小説・「塔とパイン」 #23

小説・「塔とパイン」 #23

18歳になるころ、僕は進路として「製菓」の道に進むことを決めた。実家が「製菓店である」という一点で、興味があったし、手伝いもしてたから、すんなり決めた。

学校生活はどうだったかというとあまり覚えていない。勉強はそれほどできたほうでもなかったし、興味も持てなかった。スポーツはと言えばこれも大したことはなく、クラスの中では「苦手もなければ、得意もない」微妙な位置にいた。

18歳までの学校生活、振り

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小説・「塔とパイン」 #22

小説・「塔とパイン」 #22

毎日、毎日、異国の地で、菓子を焼く。飽きないのか?と問われれば、そりゃふと「飽きる」瞬間もある。だけど僕にはもう、これしかない。好きか嫌いかと問われれば「好きな」ほうなのだろう。

嫌いだったらこの業界で働いているのは考えにくい。いや、ほんとうにそうだろうか?

ーーー泡だて器を使って、生地をブレンドする。

お菓子作りに目覚めたのはいつだっただろうか?いや、目覚めたというのは聞こえがいいけれど、

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小説・「塔とパイン」 #14

小説・「塔とパイン」 #14

昼休憩のささやかなひとときを終えてまた仕事場に戻る。「Konditorei Weise」は焼き菓子もさることながらケーキも焼いている。

工場で一貫生産することもできるようになっているが、この店のこだわりで、職人がひとつひとつ丁寧に作ることを心がけている。伝統を重んじてここまで来た自負もあるのだろう。

店舗を増やしてもいいし、多角的な経営をしても良かったはずだけど、この店はそういうのに興味はない

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