面河渓_遊歩道004

負けられない戦いがある

ーオレとアチキの西方漫遊記(21)

面河渓(おもごけい、愛媛県久万高原町)の渓流に沿って続く遊歩道。川遊び狙いのわが夫婦は、マスクやシュノーケルなどを手に歩く。足元は揃ってマリンブーツ。どう見ても、山には似つかわしくないスタイルだ。道中、フル装備の登山客らとすれ違う。そのたびに異様な光景を見る視線を向けられる。ただ、そんなことは気にしない。今回の旅行では、ここが"仁淀ブルー"を存分に楽しむ最後の機会。プライドをかなぐり捨ててでも、楽しみ尽くす:「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」

前回のお話:「限りなく澄んだブルー」/これまでのお話:「INDEX

楽しみ尽くす

鶴ヶ瀬橋からの眺め004

時間は無情だ。たとえ面河渓で川遊びできず、仁淀ブルーを十分に満喫できなかったとしても、太平洋に面した桂浜(高知県高知市)に向かう予定になっている。今回の旅行で、仁淀川の上流方面に戻ってくることはない。終わり良ければすべて良しという。面河渓は締めくくりにふさわしい場所と言える。些細なことは捨て置き、楽しみ尽くそうという思いが膨らむ。

面河渓の入り口付近にある看板で、コースを確認する。五色橋の脇にある道を直進し、鶴ヶ背橋を渡り、渓流に沿って上流方向に歩く。下熊渕、上熊渕、石鎚山の登山口といったポイントを経て、唐獅子橋を渡り、水呑獅子、虎が滝に至る。そんなルートだ。「鶴」に「熊」、さらに「獅子」に「虎」。動物の名前のオンパレードだ。獣臭がしてきそうだ。

鬱蒼と茂る緑の中から、野生動物がひょっこり顔を出す雰囲気は確かにある。ただ、はるか前の時代を含めて鶴や熊はいたかもしれないが、さすがにライオンやトラはいないだろう。映画『もののけ姫』のモデルになった屋久島の白谷雲水峡(鹿児島県屋久島町)のことを思い出した。10年近く前になるが、どこか似た感じがする。

白谷雲水峡を思い起こさせる面河渓_003

振り向けば接写

それを伝えようと、後ろに続く奥さんを振り返ると、遊歩道の手すりにとまったトンボを接写しようと頑張っていた。これを待っていたら、日が暮れる。そう思い、話すのをあきらめて先を急ぐ。下熊渕、上熊渕の周辺では、川に降りられる場所が見つけられなかった。奥さんに意見を求めようと、あらためて振り向く。

遠く離れた後方で、今度は草花を接写していた。

(写真〈上から順に〉:面河渓の渓流に沿って続く遊歩道=りす、鶴ヶ瀬橋から見た上流方向の眺め=りす、屋久島の白谷雲水峡を思い起こさせる面河渓の風景=りす)

関連リンク(前回の話):

「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:


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