茅野
今まで作った短歌の分からなくてもいいことをまとめます。私が忘れないために。
過去だったり、今だったり、の日記のようなもの
短歌のいろいろです。
まっさらな滑走路から八月の海の青さを教えてもらう さとうきび畑ばかりの道路にも正しい距離で電柱は建つ 太陽が水平線に近づいて島の空気が濃くなっていく 夕暮れの港湾道を屋仁川へ集団下校のように歩いた ハブ講習を終えて毒吸引器の丸い跡を何度か指でなぞった びっしりとカズラの巻いた電柱のようにつま先ばかり見つめる 玄関から望める海のリゾート地めいた写真を家族へ送る 潮風に晒され続け錆びていく金具のように替えは利くのだ 砂浜に白い珊瑚を並べてはこうして終わりたいと思っ
ずっと待っていた鈴蘭のランプが届いた。 ずっと眺めていたくて、起きているときはリビング、寝るときには寝室に持っていく。 うたの日の題「姿」で、どんな姿を歌にしようか考えていたとき、鈴蘭のランプが目に入った。 微妙に右に傾いている。 構造上傾けてあるわけではなくて、ランプをぶら下げる金具が少し右にずれて傾いてしまっていた。それがなんだか、良いな、と思った。 「ん?」と聞き返すときの傾いだ首みたい。 目の前にある右に傾いた鈴蘭のランプを素直に歌にしたけれど、「読書灯は実用的に
口癖の話。 私は、誰かに何かを言われたとき、何かを教えてもらったようなときに「本当に?」「本当ですか?」と言ってしまう癖がある。 このとき、私はその話を信じていないわけではなくて、「そうなんですね」「そうなんだ〜」と同じ意味合いで言っている。 最近気づいた自分の口癖の一つ。 この口癖に気づいたのは、最近たくさん話す人に「信じてくれないんですか?」と言われたから。 ちなみに、この人の「信じてくれないんですか?」は、たぶん「信じてくれない」と本当には思っていなくて、「なんで信
友達と久しぶりにロフトに行った。 アート作品をモチーフにした木製のポストカードが店頭に並んでいた。 綺麗な桜だなぁ、と思った絵がアーモンドの花だった。 アーモンドの花言葉がよかったら買おうと思って、花言葉を調べてみて、買うことにした。 ゴッホの「花咲くアーモンドの木の枝」 アーモンドの花言葉は「真実の愛」「希望」 2023.9.24
暇を持て余して、気まぐれで野暮に、自分の短歌連作の裏側をつらつら書く。 2021年2月の連作。 運命 1首目 「バス停に着いたらメールして」と来て「着いた」のあとの絵文字を迷う 「バス停に着いたら電話して」とメールが来て、「わかりました」のあとの絵文字を迷ったのは本当。 2首目 アパートの踊場で手を振る君に早く会いたいかかとが軽い アパートの踊場から片手を上げられて階段を駆け上がったのは本当。階段を駆け上がるときはかかとが地面に着かないなって思った。 3首目
名前を言ってはいけないあのウイルスの妖精になってしまい、数日家に引きこもっている。 飲み会が多い弊社では、何度かクラスター一歩手前まで行ったことがあって、周囲では妖精になったことがある人のほうが大半だ。 そんな中で、まだ妖精になっていないのは密かに誇りだったのだけれど。 ほとんど触ることのない新品同様のお薬手帳を開くと、私は年に一回の頻度で体調を崩してしまう人間のようで、身体は丈夫なんだかそうじゃないんだか、よくわからない。 基礎体力がないせいで、旅行のあとや帰
一緒に島を出る後輩と海を見ながら話していた。 私は、三年間を島で過ごして、次はまた遠いところに転勤することになった。 後輩から「次は何年くらいですかね?」と聞かれて、「わからないけど五〜六年くらいじゃないかな?」と何も考えずに答えた。 後輩はもとから大きな目を真ん丸にして、 「長い! 五年後って……私たち三十歳ですよ」 何も考えていなかったので、その数字がぐわんぐわん来た。 三年前に島へ来るときは、年齢のことばかり考えていた。二十代前半がここで終わるのか、と。
1.悩んでるやつはいねがー!なまはげのような部長が吠える飲み会『悩』20200619 2.虫除けのマリーゴールド揺れるたび母の眼差しやわらかくなる『金』20200626 3.鈍器などと呼ばれて不本意だったろう少し歪んだ茶碗を撫でる『鈍』20200715 4.お総菜売場のチキン南蛮は主役気取りで売れ残ってる『総』20200721 5.美しさよりもやさしくすこやかに生きてほしくてひらがなの名を『美』20200823 6.現像を待っている間に思い出のイチョウ並木の彩度が上
■ 経緯 ■ 好きな漫画の登場人物が17歳のうちにセブンティーンアイスを制覇するエピソードがあった。 いつも気だるそうにしていながら、絵に打ち込むときの真剣な姿には憧れたし、放課後に駅のホームで電車を待ちながらアイスを一個ずつちまちま食べていく姿が可愛くて好きだった。 単純な性格なので、私も17歳になるまでにセブンティーンアイスを制覇したい!と思ったけど挫折して、、17歳のうちには制覇したい!と目標を再設定して挫折して、、それなら2017年の一年の間では制覇する!とまた
若者が集まってお酒を飲めば必然的に恋バナが始まるもので。 後輩の女の子が自分の恋愛観について話しているのを、話せるものを持ち合わせていないわたしは黙って聞いていた。 後輩ちゃんは、恋人から『そうなんだぁ~』しか返信できないようなLINEが来るのが嫌だと、割りとうんざりした感じで話していた。 今日なに食べたとか、なにしたとか、どこ行ったとか。 わたしはわたしでやりたいことをやっているから、別に報告は必要ない、ということらしい。 わたしはそんな話を聞きながら、けっこ
昨日、誕生日を迎えた新しい気持ちのまま、25歳の抱負を残しておきたいと思う。 ①好きを伝える 誕生日といえば、とても好きな短歌がある 私が短歌に興味を持ち始めてすぐの頃、出会った短歌。 この短歌はLINEスタンプにもなっていて、すぐ欲しくなって、すぐ買った。 このスタンプをおくる初めては、好きな人の誕生日がいいなぁと思って、ずっと大切にとっていた。 そして、私にしては珍しく、本当に好きな人の誕生日におくった。 えいっ、てスマホの画面をタップしたのが懐かしい。
■文フリ東京36で買った本の感想① まず上の句がかっこよくて好き。 私はまだ愛もよくわからなくて、愛を手放した経験もない気がする。 けど、過去を抱いて歩いて来たというか、ろくに進めもせずに立ち止まっている感覚はとてもあって、この歌が響いたのかなぁと思った。 短歌にするのも過去のことばっかり……と自分のことを省みつつ、あとがきでお二人がお話されていた〈今の時点で歌えるもの〉〈今だから詠めるもの〉がジーンときちゃった。(脱線) 下の句も気になって、〈空〉とは何に火を着
私はTwitterが大好きで、Twitterがあるから、一人でも生活できている気がする。 人間は一人では生きていけない、とか、そういう厳密なことは今日はいいです。 今日はそういう難しいこと考えないって決めたので、勝手に私の意思で。 悩むことがあって、ぐるぐる考えるうちにどれを選んでも正解がない気がしてきた。 考えるのが面倒くさくなって、考えるのをやめたくなって、半分やめた。 私の眉間には、Windowsのぐるぐるの輪っかが現れて、よく思考が止まる。 そういうなんだかもう無
昨年9月末、歌会始の詠進歌として作った。 この歌は、友達の秋に生まれる予定の赤ちゃんの名前の候補を教えてもらったことと、学生時代は友達とよく一緒に帰っていたことを思いながら作って、宮内庁へ出す前に友達には読んでもらった。 出産予定の一週間前に友達と会えることになった。 友達の実家で少し話したあと、友達が「中学校まで少し散歩しよう」と言ってくれて、短歌が実景になった。 そんな友達と赤ちゃんと半年ぶりに会えた。 本当の意味で生まれてはじめての、赤ちゃんとの初対面。
下手なりに丁寧な字が好きだから君のイタズラ書きが消せない 納豆を思いきりよく混ぜている美味しい笑顔込みで好きです 道端の桜に気づく人だからやっぱり君を好きになりたい 好きなのは等身大のきみだから林檎の皮は千切れてもいい ジェラートを決めかねている横顔が好きだと思うキャラメルハニー 魔法から覚めてもきみと目が合えばきみを好きだと思うはずだよ タイトルを知らないままで眺めてる映画みたいにあなたが好きだ 梅雨生まれだからわたしは雨が好きと思えるように紫陽花を見る 伸
桜餅が好きだ。 私の好きなものは幼い頃の記憶と結び付いているものが多い気がするけれど、桜餅に関しては、特段、子どもの頃から大好きだったなぁという記憶はない。ないんですね。 じゃあ、なんでこんなに好きなのかなぁと考えていて、たぶん前の職場のとなりにあったお団子屋さんの影響だなぁと思い至った。 こじんまりした家族経営のお団子屋さんは、毎朝煙突から白い湯気をもくもくさせていて、たまに近くを通ると、お米やあんこの炊けるような優しい甘い匂いがした。 はじめの頃はそこまで