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島根大学病院でWHILL自動運転サービス導入!移動支援の自動運転/DX化で、付き添い業務を専門業務の時間に転換

WHILL社は、自社開発した近距離モビリティWHILL(ウィル)と自動運転システムを組み合わせたWHILL自動運転サービスを、2020年の羽田空港での実用化を皮切りに国内外の空港・病院を中心に展開しています。

この度、2024年6月4日より島根大学医学部附属病院(以下「島根医大」)にて同サービスが導入されました。中四国エリアでの同サービスは初で、高齢化の加速で、医療人材不足が一層課題視され、働き方改革を推進するための法改正も施行された中、院内の医療DX/ロボット化を通じ、患者の安心快適な移動を支援しながら、こうした医療人材の業務負担を軽減するものです。

今回は、病院や医療領域にネットワークや知見を多く持っている帝人と協力し、医療DXを通じた医療現場のサポート体制を新たに構築できた一歩となっています!


島根大学医学部附属病院 概要

島根医大は出雲市にあり、リハビリテーション科は1979年12月に理学療法部が設置されて以降、組織改変を経て2015年4月から現在の形として、院内だけでなく地域に開けたリハビリテーション医療を推進しています。

ちなみに、島根医大に通院するウィルユーザーさんの、クルマとウィルを使い分ける生活についてもnoteに綴っています。

ウィルは病室とリハ室をつなぐ移動インフラとして運用

島根医大でのウィルの運用方法は外来ではなく、整形外科病棟内で病室〜リハビリ室の往復移動で使います。

リハビリ患者さんの中には、身体状況によって自分で歩くことが難しく病室とリハ室の行き来を車椅子に乗って、看護師さんに運んでもらうという方もいらっしゃいます。

看護師さんが往復かけて車椅子を押す・患者さんを運ぶ業務を、安全な自動運転サービスに置き換えることで、身体的負担や業務時間を削減し、その分本来の看護業務の時間を創出する狙いです。

医療現場を取り巻く大きな課題2つ

今回、導入を推進した一人であるリハビリテーション科の酒井教授が説明した医療現場が抱える課題、つまりWHILL自動運転サービスの採用経緯が非常にわかりやすかったので、簡単にまとめてみました。

リハビリ現場で起こっている日常の光景として、受付前でお迎えをじっと待っている患者さんたちをよく見るそうです。

訓練が終わって病室まで自力で戻れない患者さんたちが、看護師さんのお迎えを待っているというのです。

5分10分待っても来ない・・・。

言葉には出さずとも患者さんの中にはいらいら・悶々とする方もいらっしゃるはずですが、ご本人たちも看護師さんたちが忙しいことは十分に理解しているので、強くも言えない

この事象は、病室からリハビリ室へ行くときも同じで、リハビリの予定時刻になっても迎えが来ないので移動できず、時間通りに始められず最終的に遅れがどんどん遅れてしまう現象が発生してしまっているといいます。

酒井先生はこうした光景を見て、なんとか文明の利器も活用しながら解消できないか・・・とずっと思っていたそうです。

記者会見で説明する酒井教授

そもそもこうした課題が横たわる背景を教えていただきました。

①リハビリを重要視する機運で患者数が増加

人生100年時代と長寿化が進む高齢化社会において、健康寿命延伸が日本政府が掲げる重要施策の1つと位置付けられています。

それに伴いリハビリが身体機能の回復や社会参画の促進につながるとして、入院中から積極的にリハビリ訓練を行うトレンドとなり、リハビリを受ける患者数は2005年は1,000人程度だったのが、2023年にはついに4,000人を超えたそうです・・・!

患者さん全員が付き添いや移送を必要としているわけではありませんが、これを1日単位で見てみると、午前中だけでも1時間で約20〜25人を車椅子などで搬送したり介助したりする状況といいます。

(仮に、車椅子に乗ってもらって病室〜リハ室を往復するのに15分かかるとすると、移送にかかる時間だけで350分以上かかる計算になります。もちろん看護師さん一人ではありませんが、とはいえ塵も積もればですね。)

②重くのしかかる看護業務と慢性的な人材不足

一方、看護師さん側の業務も増え続けているそうで、業務内容も多岐にわたります。例えば

  • 書類作業(診療記録や患者さんの状態報告書の作成、データ入力/更新など)

  • 薬剤管理(お薬の準備/投薬、在庫管理、薬剤の副作用や効果の監視)

  • 患者さんのケア(食事介助/移動補助/清拭、血圧・体温測定など)

  • 医療機器の管理(医療機器の準備/メンテナンス/点検、使用後の清掃など)

  • コミュニケーション業務(患者さんや家族の対応、他の医療スタッフとの連携など)

  • 緊急対応(急変時、急患受け入れと初期対応)

  • 教育・指導(新人看護師や実習生の指導、患者や家族への健康教育)

  • その他の雑務

さらに、、看護師さんは慢性的な人手不足という課題。全体の職業の有効求人倍率が2022年度で1.19に対し、看護師さんは倍の2.20。需要推計も高齢化の加速に伴い、ずっと右肩上がりです。

島根医大のリハビリテーション科の医療スタッフから聞かれた声

「患者さんの搬送だけで1日が終わってしまう (リハ室、レントゲン室等)」
「搬送業務を軽減したい」
「患者移送で忙しいので、本来の業務に専念したいができない」
「看護業務に集中したい」

トライアル時のアンケート調査より

医療従事者の働き方に関する法改正も2024年4月から施行され、より一層こうした課題に向き合い、解決していく1つに今回、WHILL自動運転サービスに白羽の矢が立てられました!

ウィル導入で1日最大60分の搬送業務を削減、導入を求める声が双方から

導入に先立ち、2023年11月13〜15日に整形外科病棟からリハ室までの通路(約100〜150m)を、病院が選定した患者さんを対象にトライアルを実施しました。

結果として

乗車前はウィルに対して不安を感じられる方も約150名中15名ほどいましたが、1度乗るとその数は5名に減り、乗車への不安が軽減されたほか、むしろ「また利用したい」「病院に導入してほしい」という声も多く!

②病院に導入してほしいという声:95%

③また利用したいか?(患者さんのみ):1人を除いて全員「はい」※その1人は独歩が可能だったため

④総合評価(5点満点):平均4.7

⑤看護師さんの患者さんの付き添い業務について1日最大60分の削減効果
→つまり!より専門の医療業務に従事する時間を60分創出することにつながる!

患者さんたちからの定性的な声も多くいただきました

「自分で車椅子で移動するのは大変で汗も出るので、ウィルはいい」
「自分で車椅子を操作すると肩が痛いが自動運転は楽」
「リハビリで歩いてはいるが歩くときに大変な時に欲しい」
「2回目なので、周りを見る余裕もありリハビリに行くのが楽しかった」
「慣れたら1人でも大丈夫」
「乗り心地も良く安心して乗れた復路も乗りたかった」
「職員の方にお世話にならなくていい」

上3つのコメントは、WHILL社として一貫して提案し続けている「移動とリハビリの分離」の考え方ですね。移動自体も、体力を使い疲れることもありますが、リハビリに集中し効果をしっかり上げるために、移動はWHILL自動運転サービスや近距離モビリティをうまく活用して体力を温存する、というもの。

4つ目の「リハビリが楽しい」もそれに付随する影響かなと考えており、「リハビリを頑張ろう!」と意欲は上がるし、人の気持ちは絶大なのでリハビリの効果も上がりそうです。

また、患者さんは医療従事者の業務状況に左右されず病棟からリハビリ室へスケジュール通りに移動できるため、リハビリ業務を担うスタッフも時間に追われることなく業務に集中することができるようになります。

気持ちの面でも時間の面でも余裕が生まれることはとても大切。

会見では島根医大が最終的に目指したい姿についても触れられました。

向かって右から2人目が椎名浩昭病院長

椎名病院長は
「WHILL自動運転サービスの活用は患者さんの安心な移動支援と、看護師の業務負担軽減につながるもの。最終ゴールとしては医療従事者の働き方改革を進め、より質の高い医療の提供につなげたい。そして当院での取り組みを、同様の課題を抱える他の医療機関への一助になるよう発信していきたい」と意気込みを語ってくださいました。

WHILL自動運転サービス 運用概要

  • 運用開始日:2024年6月4日

  • 運用時間:リハビリのスケジュールに準じる

  • 導入エリア:整形外科病棟

  • 走行ルート:整形外科病棟のWHILLステーション(乗り場)からリハ室・病室間の往復(約100〜150m)

  • 対象:整形外科病棟に入院する患者さん

用途1:リハ室前に待機するウィルを呼び、リハ室から病室へ

ウィルはリハ室前の廊下で待機しています。

リハビリ訓練を終えた方が病室に戻る際、医療スタッフが管理画面からウィルをリハビリ室の中まで呼び寄せ、患者さんの移動距離を短くし、負担を減らし乗ってもらいます。

ウィルがお迎えにあがっています。

自分の病室をタッチパネルから選択し、患者さんは乗って帰るだけ。ウィルはお届け後、待機エリアへ無人で戻って行きます。

用途2:病室から乗ってリハ室へ行く、看護師さんは病室からお見送り

リハへ向かうとき、これまでは看護師さんが車椅子を押して送り届けて、また戻っていくという往復の移動が発生していました。(これだけで10〜15分程度かかるそう)

WHILL自動運転サービスを活用することで、病室から乗っていき安全にリハ室へ送り届けることが可能です。

到着したらリハ室のスタッフさんがお出迎えするので安心です。機体は自動で止まり、無事に患者さんが降車したのを検知し、60秒後無人で待機場所に戻ります。

看護師さんはその間、カルテの確認やお薬の準備、そのほか看護師さんにしかできない業務を進められます!

「行ってらっしゃい」と声をかけたり手を振ったり。癒しロボとしても活躍!?

ウィルが導入されてから、興味深いやりとりが起こっているとのこと。

患者さんを病室からリハ室へ送り届ける時、看護師さんは「行ってらっしゃい」と手を振りながらお見送りし、その場に残り別の業務に移っていました。

また、ウィルが送り届ける業務を終えて待機エリアへ戻っていく際、「お仕事お疲れ様!」と帰っていくウィルに手を振ったりするスタッフさんや患者さんもいると聞きました。

癒しマスコットとしてウィルくん愛されています💓

上述でも触れましたが、ウィルの導入で少なからず患者さんにリハビリへの気持ちや体力に余裕が生まれ、看護師さんも時間や業務内容に余白が創出されていることがうかがえます。

筆者なりに思ったのは、こうした余裕が生まれたおかげで、ウィルを愛でたり周囲に目を向けたり、挨拶したりコミュニケーションを取ったり、ほっこりするワンアクションが創出されているのかなということ。

これは自動運転サービスに限らず自分で操作するウィルに乗っている時も、歩くという行為、それによりしんどいな疲れるなという意識が気持ちや脳の多くを占める事象、目の前の業務に追われる緊迫感、などなどからちょっと解放されます。

すると、上を向く余裕、周りの声や雰囲気に意識を向ける余裕、誰かをもっと思いやる余裕….が生まれ、ポジティブサイクルに好転する。

島根医大のリハビリテーション科での現場は、素敵なあたたかい雰囲気で包まれていました。

WHILL自動運転サービスは、広い施設の移動最適化を図る先進的なソリューション

WHILL自動運転サービスは2020年のコロナ禍、羽田空港第1ターミナルで導入されました。人を乗せて自動走行するパーソナルモビリティ(一人用の移動手段)の空港における実用化は世界初として、大きな注目を得ました。
このサービスは、空港や病院を利用されるお客様自身のタッチパネル操作で、自動運転パーソナルモビリティ(一人用の乗り物)を使って、目的の場所まで移動することが可能です。

ウィルの導入病院 一覧

WHILL社では、一時利用、短期利用、日常利用のいずれのシーンにおいても近距離移動を快適に支えるプロダクトとサービスを包括的に提供、医療現場をサポートできる体制を整えています。

一時利用・短期利用では自動運サービスと病院内での一時レンタルがありますが、実際に導入されている病院一覧です。

ー自動運転モデル

移動インフラとして目的地を一直線に結び、患者の安全な移動支援とスタッフの負担軽減を目的

  • 慶應義塾大学病院

  • 成育医療研究センター

  • 熊本中央病院

  • 横浜市立市民病院

  • 島根大学医学部附属病院

ースタンダードモデル

患者が退院後スムーズに日常生活に移行できるように、自分で動かすウィルに乗って訓練する目的

  • 鵜飼リハビリテーション病院

  • 広島大学病院

  • アマノリハビリテーション病院

  • 中伊豆リハビリテーションセンター

医療・介護従事者様向けにも情報発信中!ご自宅試乗も可能

WHILL社では、医療・介護に従事する方々(お医者様や作業療法士様、理学療法士様、ケアマネジャー様など)向けのウェブサイトもご用意し、ユーザー事例や専門家の声などを紹介しています。
人生100年時代において、いつまでも健康的かつ自立的に暮らし続けられる社会を目指し、WHILL社は医療・福祉・介護関係者さんと一緒に、これまでと違う目線や考え方、文化を形成していきたいと考えています。
WHILL社はこれからも、世界中でいつまでも元気に快適に暮らしていただける社会を目指し、積極的に勉強会にも取り組んでいきます!

介護保険制度をご利用希望の場合は、Model C2をご自宅で試乗することが可能です。ぜひこちらもご覧くださいね!

よければ以下もお読みください✨
・広島県で開催されたリハビリテーション学会

・📝全国各地での医療機関向け勉強会

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