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【近距離移動を当たり前に】阿久根市 西平市長×WHILL池田:テクノロジーの力で障害の有無に関わらず「当たり前の特別」をすべての人に

テクノロジーとデザインの力で、誰もが当たり前に、かつ楽しくスマートに近距離移動できる世界を創るーー。

近距離の移動は、多くの人にとって無意識で「普通」に日常生活に組み込まれています。歩いていると小さな段差や斜面、道の狭さなどに意識は向かないことの方が多いはず。

しかし、足腰が弱ってきた/怪我をした/障害がある人が家族にいる、などちょっとしたきっかけで、快適に(つまり無意識的に)近距離移動できること自体が実はとても有り難いことなのだと気づかされることもあります。

WHILL社は「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに、テクノロジーやデザインの力で、障害の有無、年齢、環境などにかかわらず、本人・家族・周囲すべての人が当たり前に移動できる世界にすることを目指しています。

そんな移動のビジョンを共有するステークホルダーと、社会に実装させた先の未来をともに語ります。


鹿児島県阿久根市でウィル採用

鹿児島県阿久根市で、2024年4月に開業したばかりのキャンプ場を併設した番所丘公園といったアウトドア施設でも楽しめるよう、近距離モビリティWHILL(ウィル)が導入されました。

阿久根市の事業として社会に実装させた西平市長と、ウィルの普及を通じて誰もが近距離移動できる社会づくりに邁進する池田が対談。

共通項も多いこの2人の信念と情熱、言葉の重みから、今はまだ少し社会に少し先行したマイナーな取り組みは数年後、当たり前のものになっていることでしょう。

プロフィール

西平良将 鹿児島県阿久根市 市長
九州大学卒業後、西平養鶏に就農。2011年に阿久根市長に初当選、現在4期目を務める。地域の発展と持続可能なまちづくりを目指しており、市を支える多様な人材が交流・社会参画できる施策などにも力を入れている。今回の「よか活動支援事業」は、障害があっても家族と一緒に楽しめる機会創出や社会参画を目指す一環。

池田朋宏 WHILL社 上級執行役員 SVP of Japan Region
立命館大学卒業後、大手印刷会社の企画営業を担当。スポーツ商材の輸出入で世界各国を回る。2017年にWHILL社に入社。西日本拠点の立ち上げや販売網の拡大に携わり、日本事業部のモビリティ販売事業を中心に統括。事業領域拡大に伴い、2023年10月現職に就任。入社時から変わらない情熱を貫き、誰もが快適な近距離移動を当たり前に享受できる世界を支えるエコシステム構築を進めている。

経済状況や環境に左右されず「よか(余暇)」を楽しめる土壌を整えることが大事

ー市として取り組む「よか活動支援事業」の狙いを改めて教えていただけますか?

​西平市長:
よか活動支援事業は、主に障害がある方の社会参加の促進や生きがいづくりに寄与するために組成しました。

具体的には文化やスポーツ、レクリエーション、趣味・娯楽など「よか(余暇)活動」を楽しんでもらうために、便利なツールの購入やサービス利用にかかる費用の一部助成ならびに無料レンタルを行うものです。

障害があると外に出て何かをすることに対して本人も家族にも負荷がかかり、必要最低限以外のお出かけやアクションが億劫になり、控える傾向にあります。

買い物や通学/通勤/通院といった生活に必要なことプラスαで、”楽しいこと”をすることは日々の生活をより活力ある、彩りあるものにすると捉えています。市として余暇を満喫してもらうための事業に取り組むことで、障害がある方もその家族も生きがいを感じられ社会に参画しやすいまちにしたかったんです。

よか活動支援事業の詳細、利用方法はこちら👇

ー貸出事業と購入補助事業の2つがありますが、どちらだけではなく両方を設立したのはなぜですか?​

西平市長:
市民の方の取り巻く環境はさまざまで、経済状況ももちろん異なります。

ご本人と家族がそうした状況に左右されない形で負担少なく、ウィルを利用してもらいたいと考え、2つの事業を用意するに至りました。

例えば、阿久根市で導入したModel C2は487,000円(非課税)です。通勤や通学のルートが悪路で整備されておらず日常的にウィルを必要で使いたいと思っても、金額的にお求めにくい方もいらっしゃいます。

そういう方に対しては市がその費用を一部補助することができます。

それでも購入は厳しい方、また日常的には乗らない方などに対しては、その機会を逸するのではなく、「よか活動」を楽しむときに無料貸出する形でウィルの利用機会を用意しました。

経済的に難しいからと諦めるのではなく、条件や状況に左右されず市民の皆様に幅広い選択肢を以てウィルを使って楽しく過ごしてほしいのです。

池田:
WHILL社も同じ考えです。あらゆる人のニーズに応え、一時・短期・日常における近距離移動を一気通貫で提供できるよう、販売とサービスの2事業を展開しています。

日常的にウィルで移動したい方には販売を行い、購入後も安心快適に長く乗っていただけるようアフターサポート体制も強化しています。

地元の自動車ディーラーが地域の移動を支えている大きな存在となっており、鹿児島県でも、鹿児島トヨタ店舗でウィルの試乗、販売、アフターサービスまで担ってくださっているのは本当にありがたいです。阿久根市へのウィル導入も同社のおかげで、本当に心強い存在です。

一方、普段は乗らないけれど「旅行の間だけ」「家族と出掛けた先で」ウィルを使いたいという要望にも応えるため、4日間から借りられるサービスや、行った先の施設や目的地などでウィルをレンタルできるWHILL SPOTを広げています。

ご本人やご家族などそれぞれのニーズに合った形で、気軽にウィルを使うことができ、移動そしてその先の目的を果たせるような環境をどんどん整えていきたいですね。

テクノロジーの力を取り入れることで、壁は薄まり、社会はより便利になる

ー「よか活動」にウィルを取り入れた理由について教えていただけますか?​

採用されたのはオフロードもぐんぐん走ることができるプレミアムモデル「WHILL Model C2」。
特殊な大きい前輪(オムニホイール)と高出力モーターで裏打ちされた抜群の安定感と乗り心地、走破性の高さなどが特徴です。

西平市長:
ウィルなら、「よか活動」の1つであるアウトドアのアクティビティを心おきなく楽しめると考えたからです。

芝生や砂利道、凸凹道、勾配がある場所といった悪路では通常の車椅子ではタイヤのコマが小さかったりして、赴きづらいんですよね。

私にも障害がある家族がいてウィルを2023年冬から使い始めたのですが、それまでは通常の車椅子を舗装されていない路面で本人が漕ぐのも、私が押すのも本当に大変でした。慣れていないので押す側も乗っている側も身体的負担がかかってしまうので、せっかく遊びに行ってもその場を十分に楽しめないですし、出向くこと自体を諦めてしまうこともあります。

ウィルなら、道を選んだり段差や勾配を気にしなくていいですし、自分のペースで好きに動くことができます。見た目もかっこいいので外に出たいという気持ちにもなりますよね。

まさに「よか」を満喫できる便利なツールではないでしょうか。

池田:
ウィルは、テクノロジーとデザインの力で物理的な障壁と心理的なハードルを乗り越え、誰もが乗りたいと思えるモビリティを作ろうという思いから誕生しました。

「この段差を乗り越えられるかな?」「周囲の目が気になって・・・」
こうした小さな不安や壁の積み重ねが大きな隔たりとなり、出かける頻度や気持ちそのものがしぼんでしまう。

デザインとテクノロジー(ハードとソフトの両方)の力を駆使することで、移動の観点から社会に潜むあらゆるハードルを乗り越えていけると考えています。

ーお二人の共通項に「家族に車椅子ユーザー」がいらっしゃることがあります。日々の生活を送る中で、課題感や違和感などについて教えてください。​

西平市長:
家族に障害者がいる世界は別世界で、見えていなかったことが見えるようになり、価値観もガラリと変わりました。

今までは、何もないことが普通だと思っていましたが、むしろ逆。
「何もないことが実は特別」であること、世間に横たわる当たり前に対する違和感に気づくことができました。

障害がある家族と一歩外に出るだけで社会には物理的・心理的な障壁がいたるところに潜んでいます。物理的だと、文字通り段差や坂道、施設のバリアフリー設備など。これらはまだ分かりやすいです。

一方で心理的な面では、例えば「車椅子は大変、家族にも負担があるのは”当たり前で仕方がない”」という意識。これは当事者以外は気付きづらいし、根深い。

この”当たり前”という壁を、制度や仕組み、テクノロジーの力でなくしたいんです。

池田:
「車椅子は大変、家族にも負担があるのは”当たり前で仕方がない”」という捉えられ方は、当人にも周囲にも社会にもありますよね。

例えば、同じ野球観戦でも、車椅子ユーザーの家族は車椅子スペースに設けられたパイプ椅子に座って観戦するのが当たり前。この光景に対して誰も疑問や違和感を抱かないし、ゆえに受け入れてしまうんですよね。

私は、障害がある家族がいてくれたおかげで、こうした気づきに至ることができたし、違った価値観を持つことができてよかったと感じています。

実際に違和感があったので、車椅子ユーザーも家族もウィルでスポーツ観戦できる新たな観戦スタイルを社会に実装することもできました。

北海道ボールパークではModel SとModel C2が20台導入されている

ー市長の立場から、WHILL社の立場から、それぞれのありたき世界や社会について教えてください。

西平市長:
昔と比べて今は、テクノロジーや技術が発展し、さまざまな人が社会参画しやすい世界となっています。重複しますが、物理的・心理的含めて社会に潜むあらゆる壁を、制度や仕組み、テクノロジーの力でなくしていきたいんです。

自分の子供含め、次世代が楽しく快適に移動できたり社会参画できたり、そんな未来の当たり前を創っていきたい

よか活動支援事業の財源をふるさと納税の寄附金から賄っていることにも理由があります。市民の方に知ってもらうのはもちろんですが、対外にも、少しずつでも「”当たり前”ではないことが特別」ということを阿久根市の取り組みを通じて伝えたいという思いですね。

阿久根市としてできることは小さな一歩かもしれませんが、先行して取り組むことで、いつかその波が他の自治体や全国各地に波及し、数年後当たり前の未来になっていればいいなと願います。

池田:
西平市長と本当に同じ気持ちです。
さらに言うなれば、近場の移動にこそ価値があることを知ってもらいたいと考えています。

「近距離の移動はできて当たり前、当然、普通なこと」と潜在的に無意識に存在します。障害やハードルが目の前に現れて、近距離移動がしづらくなって初めて、その価値や重要性の特別さに気づきます。

すぐそこなのに、ちょっと散歩に行きたいのに、それが突如として難しくなる。障壁やハードルがあっても、技術や意識改革、デザインなどを駆使することで、快適な近距離移動を当たり前に、あらゆる人が享受できる世界を作りたいです。

ウィルの普及がその実現につながると信じています。

お二人の背後には、この青空と原っぱのように、障壁やハードルがない、無限に広がる自由で快適な移動の世界が見えます。

メディア掲載情報

市井の注目も高く、多くのメディアで取り上げられました。
・鹿児島テレビ

・鹿児島読売テレビ

・鹿児島放送

次回のコンテンツもどうぞお楽しみに!


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