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水響自転

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「日々に問うて応うる夜に」

「日々に問うて応うる夜に」

いつも、いつだって何もないと思って
その世界で生きて

サイズの合わない空間で
緩やかに動く秒針を追って
そんな世界で生きて

雨の匂いと 流れる夜景に
痺れた手を見て別れを告げ
響く心音に目蓋の重み
そんな、そんな綺麗だった日々に

行かないで 強く願う
聴き慣れた音楽に揺られて
ここまで夜を描写した
行かないで すぐに強がる
私の気持ちを見透かして
もう少しこのままでいてよ
さよならのために

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「21st Lan」

「21st Lan」

「癒しを感じなくなった」
最後に届いた一言
亀裂が入った画面の向こう側に
今もあなたは居るのかな

どこがいけなかったかなんて
ずっと前から自覚はあった
壊れるまであなたを壊して
責めて 責めて 責めて せめて
一度でもあなたに寄り添えていたら

たった一言が私を薙いで
切り傷から涙が溢れていく
やまない雨が冷たく染み込んで
あなたが大切だと気づいた
頬の熱さで目が覚めた

青い痣のようにあなたが

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「青痣」

「青痣」

雨上がりの空をずっと見ていない
腫れた空を撫でたくて
僕は宙に手をかざす
降り落ちるものにも感情があること
季節が変わりゆく度に君が涙を流すこと

色は鮮やかに
形も確かに
それでも触れられない
その景色に心が揺れたら
すべてが雪崩れてしまうから

君がいいなら共に行こう
僕の価値は僕が決めるから
君が言うならここにいよう
全てを投げ出せる自信はないから
声を殺して
痣をつけて
時よ止まればいいな

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「想像の海」

「想像の海」

東から走る渇いた風は
僕の劣等感を掻き立てる
獣のような衝動を抑えた
魔法の夜はもう終わる

空に浮かぶ白波
霧の黎明
浜に打ち上げられた
砂に塗れた藻屑は
まるで僕のようだった

僕にとってあなたは
居場所を飾りつける据え物
だってそうだろ
君は美しくなりすぎたから

相応の応報 親愛の悪化
弱さばかり目立ってさ
口を出た言葉波に飲まれた
想いを告げる 世界をあげる
どれだけ強く握っても
もうそ

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「溢れ」

「溢れ」

傘をさす群集 甘えたい生き物
できあがるご都合ドーナツホール
「積み上げた努力は自分を裏切らない」
そんな言葉が本当なら
裏切られた“もの”は何だったの

あなたの溶媒では何ひとつ溶けない
張り付いた笑顔はまるで守護霊ね
答えを導き出す方程式は
未知数が少し多めみたい

気づいていたの 視線を集める君だから
刻む心音は秒針を追い越し
寄せる肩 触れた頬には並涙
気づいていたの 痛みに鈍感な私だから

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「明日を奏でる」

「明日を奏でる」

きっと
物語の終わりとか
迎えたくない朝だとか
ずっと続いてく結びとか
そういうものが胸に響いて

淀んだ音しか出せない僕は
ただ目の前の景色を
聴き入れることしかできない

短命の心は中を舞い
進む道は確かに晴れども
担明の空はあまりに綺麗で
眩しい光に目を細めながら
そうやって僕は弦を弾く

ずっと
この世界の果てとか
降り止まない雨だとか
そういうものを考えてた

そう、ひと夏しか持たない命

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「timming」

「timming」

最終列車はいらない
その時間の波に飛び込んで
夜を浴びる
夜を泳ぐ

最終結果は知らない
ただ同じ感情持ち合わせて
夜に浴びる
夜に泳ぐ

迷うことなんて忘れたんだ
君の声が隣にあったから
大丈夫
同じ歩幅で歩けているよ

その水面に響くものは
ただ鮮明に残るものは
君の言葉と
君の足音
今懸命に刻み込んで

その水面に響くものは
ただ鮮明に残るものは
君の描いたあの空へ

大丈夫、同じ歩幅で歩け

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「その君の空描を」

「その君の空描を」

「この世界はどこからが空なの」

語りかける 願い ひとりぼっち
作るのは透 否 光
正しさはない
描く“もの“の全てが私のための青

君が羨ましい
私たちが染めあげる
綺麗なだけの世界
白に刺さるその身の青さよ

迷い込んだ言葉を
探し出して抱える
雲色のキャンバスに空の色で描く
溢れ出した心を
支えたくて流れる
深く沈む街角で君の空を見ている

「この空の真ん中は青だから」

君がつくり 願う

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「胸懐辛苦」

「胸懐辛苦」

それは気づくと目に映って
触れるとそこからは藍が溢れて
君はそれに名前をつけて
仕舞いには夜に雪崩れていく

ああ、下らない
大人になりたい子どもの僕は
そんなことを思ったのだろう

それはまるで
魔法にかけられたようで
緩やかにそれでも確かに
視界は薄れていく

最底辺の感情性能
素足で歩かなければ痛みにも気付けない
最大限の心情溶融
そんな撫でるような言葉で
僕を光に縛らないで

それは気づく

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「夜行逍遥」

「夜行逍遥」

いつも目の前には何もなかった
あの頃の僕は茫漠とした世界に溺れていた

時折歩いたあの河川敷では
僕の広げた世界とは違う速度で澄んだ水が流れた

あの時紡いだ言葉は
あの日見えていた思いは
幼稚な悪意を持って僕の前に現れる

そういうことじゃなかったんだ

ふとした瞬間に時が止まる
残ったのはこの夏だけだった

そして目の前には何もなくなった
あの頃の僕は茫漠とした世界に溺れていた

ひとり見上げ

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