見出し画像

「夜行逍遥」

いつも目の前には何もなかった
あの頃の僕は茫漠とした世界に溺れていた

時折歩いたあの河川敷では
僕の広げた世界とは違う速度で澄んだ水が流れた

あの時紡いだ言葉は
あの日見えていた思いは
幼稚な悪意を持って僕の前に現れる

そういうことじゃなかったんだ

ふとした瞬間に時が止まる
残ったのはこの夏だけだった

そして目の前には何もなくなった
あの頃の僕は茫漠とした世界に溺れていた

ひとり見上げたあの空では
君が広げた世界とは違う温度で澄んだ水が流れた

あの時選んだ言葉は
あの日綺麗だった思いは
曇りのない優しさを僕にふりかざす

ただそれだけでよかったんだ

ふとした瞬間に時が止まる
残ったのは汚れた過去だけだった

きっと
少し進むと未来があって
足を止める意味なんかなくて
そこでは君と同じ速さで走れて

ふとした瞬間に時が止まる
残ったのは淡く深い青だった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?