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なぜ日本では男性アイドルが少ないのか。

日本における女性アイドルの人気の高さと多様性は男性アイドルを圧倒しており、女性アイドルは一過性の流行を超えて多くの人の生活に深く根ざしたものとなっていると言われている。その一方で男性アイドルと言えば「ジャニーズ」の存在が大きいですが、それ以外の男性アイドルグループの活躍やブームなどはあまり見られないことも少なくない。一体それはなぜなのか...

日本で男性アイドルの人口が少ないのはジャニーズが独占しているからではなく戦後(ジャニーズもまだ存在していない時代)、日本はロックンロールやロカビリーといったロック音楽から強く影響を受けたためです。そのため、男性アイドルの数が少ない代わりにバンドの数が多いという文化が定着しました。

日本では「男性が歌って踊る文化」が根付いていなかった

1960年代に人気を博したグループ・サウンズ

日本では女性の場合、「バレエ」・「チアダンス」・「スクールメイツ」・「宝塚歌劇団」・「西野バレエ団」のように¨女性が歌って踊る¨という文化が既にありました。1960年代、1970年代に活躍した由美かおる、金井克子、奈美悦子、キャンディーズのメンバーなどの女優や女性歌手たちもバレエ団やスクールメイツ出身だった。一方で、男性の場合は終戦後~1950年代以降、ロックンロールやロカビリーブームがあり、平尾昌晃、ミッキー・カーチス、山下敬二郎らが若い女性たちから黄色い声援を浴びるなど戦後最初期の男性アイドルとして人気を博しました。それに続いて1960年代~1970年代には欧米におけるベンチャーズ、ビートルズ、ローリング・ストーンズなどのロック・グループの影響を受けたグループ・サウンズブームが起こります。以後、男性歌手側にはロックンロール=ロカビリー=ロック文化を受け入れる土壌が出来上がりました。そしてその流れがそのまんま1980年代のバンドブーム、1990年代のヴィジュアル系バンドブームなどに繋がります。
■1950年代=ロカビリーブーム
■1960年代~1970年代=GSブーム
■1980年代=バンドブーム
■1990年代=V系ブーム

このように男性歌手にはバンドが求められてきた一方で、ダンスブームまたは男性アイドルのブームといったような事例はなく、「歌って踊れる男性アーティスト」の需要が日本ではあまり無かった。これは終戦後、「男が踊るのはカッコ悪い」・「ダサい」といった風潮が密かにあり、ヒップホップ・ストリートダンス・ラップといった黒人文化は受け入れなかったので男性歌手にダンスを求められることが少なかったためである(男性がダンスに憧れを持つことや歌とダンスで活躍できる場も少なかった)。こういった終戦後から続いていた状況によって日本の音楽界またはアイドル界では、女性は歌って踊る = かわいい男性は楽器を弾く = かっこいい、という構図が出来上がりました。

1962年にジャニーズ事務所からデビューした初代ジャニーズ 

そこで、「若い女性たちが歌って踊る文化があるのなら、若い男性も歌って踊れる活躍場があったら面白いのではないか?」と思い立ち台頭したのがジャニーズ事務所の存在です。当時は、男性が歌って踊るスタイルは一般的には不慣れだった時代であるため、初代ジャニーズのメンバーだったあおい輝彦は、後年にテレビ番組へ出演した際に「僕たちがデビューしたとき、なんで男が踊ってるんだ、男が踊るなんておかしいって言われることもありました」と明かしたことがある。しかし、活動を継続させていくうちに徐々に人気を集め、ジャニーズの第1号グループとして成功を収めた。以後、「歌って踊れる10代の少年」・「白馬に乗った王子様」といったイメージを掲げ、一般的にも「男の子が歌いながら踊ってる姿がかっこいい」と浸透していき、男性アイドルというジャンルを広めた。

●フランスのアイドルから影響を受けた

(上)フランスの女性アイドル歌手 / 日本の女性アイドル歌手(下)

日本のアイドルはもともとフランスから影響を受けました。
例えばシルヴィ・バルタン、ダニエル・ビダル、フランス・ギャル、フランソワーズ・アルディが代表的ですが、これらのフランスの女性歌手たちは、10代の少女+未完成+ロリータコンセプトという要素を持っており、1950年代~1960年代にかけて日本でも大きな人気を集めました。このフランス歌手たちの人気に影響を受け、日本でも「10代の女の子+未熟+清純派+ロリータコンセプト = アイドル」と定義されました。それから日本のアイドル文化が発展していきました。つまりフランスのアイドルが女性ばかりだったから、日本も女性アイドルの数が圧倒的に多いということなんです。歌やダンスなどが未完成な点もフランスの歌手たちに似ていますね。

●男性アイドル以外にも女性ファンを獲得できるジャンルが多い

男性アイドル以外に女性ファンを獲得している芸人・ヴィジュアル系、Youtuberなど

男性アイドルは基本的に10代の女性(中高生)をターゲットにしています。
しかし、アイドルに限らずジャンルを広げてみると、バンド・俳優・スポーツ選手・歌手、お笑い芸人、タレント、モデル、Youtuber、声優など男性アイドル以外でも女性ファン層を多く獲得できる有名人がたくさん存在します。特に俳優・バンド・お笑い芸人・スポーツ選手といったジャンルで活躍している男性有名人は、「男性らしさ」・「面白さ」・「かっこよさ」といった点で女性層はより異性の対象として見ることが出来ます。一方で男性アイドルの場合は、「可愛さ」・「未熟さ」・「親しみやすさ」・「キャラクター性」・「若さ」が求められているため、ファン層が10代~20代などの若年層に限られてしまいます。また男性アイドルのファンは女性アイドルのファンに比べて忠誠心が低く、アイドル本人たちが事件を起こしたり、熱愛など異性との性的スキャンダル発覚・既婚や結婚などした場合、ファンが離れてしまい人気が短命に終わることも少なくありません。

※まとめ
戦後、日本の芸能界および音楽界では、男性 = バンド女性 = アイドルといったように男女で棲み分けられた構造が出来上がりました。男性の場合はバンドやお笑い芸人の数が多く、女性の場合はアイドルの数が多いという他国とは少し変わった市場であることも、日本特有の文化と言えるかもしれませんね。

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