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―不登校の憩う場所―大分県玖珠町わかくさ広場を訪れた。


概要

2024年初春、大分県玖珠町立わかくさ広場の見学に行った。
大分県玖珠町は不登校特例校を来年度から開校する予定。
今回訪れたのは、あくまで片草小学校跡を活用した不登校児童・生徒の「居場所」であり、授業をすることが最大の目的ではない。来年度から玖珠町立学びの多様化学校が併設され、専門の教員がつくようになる。これについては以下の記事が既に公開されていたので興味のある方は是非読んでみて頂きたい。

https://note.com/akariwriter3/n/na4dca86f8a99?sub_rt=share_pw

自由な雰囲気

児童・生徒は今までの学校に在籍し、こちらに来たときも出席日数に入れてもらえるようになっている。
月水金と、最大週3回はこちらに来ることができる。火木は自分の学校または自宅で過ごす。
公立星翔中学校のスクールバスが後に廻るので開始は10時頃、帰りは3時半頃となる(因みに職員は9時から5時まで)。
自分の好きなときに来るので、在籍の10数人中今日は3人来ていた。

食は生きる力に繋がる

家庭科室

生きる力の基本に食があるため、概ね月に2回程度調理実習がある。
わかくさの広場は給食が無いのでお弁当持参。中には自分でお弁当を作ってくる子どももいる。
外でホットサンドを作って食べるイベントも以前あったそうだ。
心身の健康という土台なしに、知的好奇心や学ぶ意欲は湧いてこないという理念の下、食べること、食べ物を作ることを活動の一つとして取り入れ、将来台所に立つハードルを下げることを狙っている。
クッキングセラピーといって、誰かと一緒に作った料理を一緒に食べ、相手に喜んで貰えることが自分の幸福にも繋がるそうだ。
他にも夏野菜やさつまいもを育て地域で売るということも行っている。

交流を通して心を開く

他の活動としては運動がある。バドミントンなど、様々な「やりたい」をできる限りやれるようにしている。テニスネットに見立てて壁打ちをしたりすることもある。現在はバスケットボールのゴールを要望して活動の幅を広げようとしている。

体育館

このような様々な活動を異年齢の子どもたちで行うことで、友達関係や兄弟のような関係が生まれる様子を多々目にする。だから、家の中だけで過ごしている子どもをどうやって動かすかが一番の課題であり、一度来てくれさえすれば何かが変わるのではないか、担当者の方はそう語っておられた。

活動としては清水瀑園に散歩に行ったりタデ原湿原に連れて行ったりするなど、自然で心を癒やすこともある。

子どもの意向を何よりも優先

健康が勉強の土台であるので何事も強制はしない。やりたいときにやればいい、という考えで児童生徒の心身の健康を何よりも重視している。

不登校になった原因

メダカ
メダカ

学校に行かなくなった理由は10人いれば10通りの理由、原因が存在している。小学校から中学校への環境の変化、心の成長過程の不安定さも大きな要因の一つと言える。
他にも、「学校の授業がわからない」、また逆に「学校の授業では物足りない」という場合もある。
「何となく」という理由も多い。実際10歳前後の子ども達にとって自分の感情を言葉にして伝えることは想像以上に難しいことなのだろう。
その「何となく」を通常の学校では人数も多く察してあげられないことが多いのではないか。
大変なこととしては、複合的な理由を解決することがある。また、家庭内の問題を解決することは、プライバシー等の障壁があるため、簡単なことではない。

システム

所属する学校の担任が通知表をつけるのは変わらない。月1回在籍している学校の教員も参加して研修会を行い、学校やわかくさでの様子交換をしたりする。
また、わかくさ広場での生活の様子などのメモ書きを渡すことで、通知表をつける際の参考になるようにしている。

町の予算が少ないため、遊具などの設備はあまり整っていない。
体育館、家庭科室など揃った跡地でないと様々な活動を組むのは難しいと、私自身の学校設立に対してアドバイスを頂いた。

それぞれの魅力が出せるのが一番

一人になれる静かな場所

一人での勉強を希望する場合は図書室で行うことが多い。図書室は廃校の蔵書がほとんどであるのでとても古い。だから「わらべの館」(町内の図書館)の移動図書館を利用している。統合で空いた学校の本は比較的新しい。

在籍する学校からただ一人、わかくさの広場にで来るには圧倒的な不安に打ち勝つ必要があり、年齢相応以上の勇気がいる。「不登校」という言葉に対して世間は「失敗」という言葉やネガティブなイメージを関連付けることが多い。しかし、それは違うのではないか、普通の学校ではできない経験がこの学校ではできる、経験値、器、魅力等において、通常の学校に通った子どもの得られないものを確かに獲得しているのがわかくさの子たちであり、必ず数年後自分の進路を考えられるような人間になる、そう強く語って頂いた。

島崎藤村もある!

掃除

「自分の散らかしたものは自分で片付ける」が基本。中には自分の使っていない場所を掃除することに意義を感じられない子どももいるので、掃除に意味を感じ行ってほしいという考えだ。大掃除だけは必ず行う。

日常風景

職員室が居場所になることが多いらしい。今日もScratchのゲームを和気あいあいとパソコンに集って行っていた。2時からバドミントンで体を動かす。私も何故か加わることになった。

私服だと中学生という印象を持てなかったので3人中2人が中学生と聞いてはっとした。だからこの自由な雰囲気が出ていたのかと思った。

人の集め方

私の一番の課題は人集めになるだろうから、それについても意見を伺った。
現在の先生はボランティアで、町が退職した先生に声を掛けたりしていたそう。
私の故郷は高齢化が進んでいるので人生の先輩を集める方が良いかもしれない。

子どもに心を開いてもらうには根気が必要。目が合うか、笑顔が出るか、そういった部分が信頼されているかの指標となる。回を重ねる毎に返事、笑顔が返ってくるようになる。ここの職員さんは漫画をテーブルに置いている(戦略としてではなく、自分が読むため)。それを読む子どもたちが知らない人の前で漫画を読んでクスッと笑える、これも重要なステップで、次第にリラックスしてくるようになる。

まとめ

わかくさ広場は、現在は不登校の子どもたちの憩いの場となっている。子どものことを一番に考え、個人の意向を最大限に尊重している。来年度以降、玖珠町立学びの多様化学校が併設されてからも訪れてみたい。

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