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中村憲剛が語る、本当にサッカーがうまい選手とは?|サッカーパパ・ママが知るべき最先端理論

6月22日・23日に開催された「WHITE BOARD CONFERENCE」では、「親が変われば、子供の未来が変わる」をテーマに、日本トップクラスの講師陣が登壇。世界で戦う選手の育成に必要なメソッドやマインドを余すことなく伝えた。

6月23日のセッション1に登壇したのは、中村憲剛だ。18年間にわたって川崎フロンターレ一筋でプレーし、日本代表としてW杯にも出場したバンディエラは「うまい選手」という形容詞がピタリと当てはまる。日本屈指の司令塔が考える、うまい選手とは。どうすればうまい選手が育つのか。独自の視点と考えを語った。

うまい選手=性格の悪い選手?

「僕は、性格が悪かったと思います」

川崎Fのバンディエラは穏やかな口調で告げた。無論、ピッチ内での話だ。

中村憲剛が“川崎Fの先輩”中西哲生と「ピッチの問題を解決する“サッカー”がうまい選手とは?」のテーマで対談した。

「うまさの定義が人によって違うので難しいですけど、僕が考えるうまい選手をお話します」と前置きを入れると、川崎Fと日本代表でプレーした18年の現役生活で築き上げた考えを明かした。

中西の質問に中村が答える形でサッカートークが進んでいく。

まずは「ドリブルがうまい選手は、うまい選手ではない?」について。

独力で相手を次々と突破できる選手を「うまい!」と感じる人は少なくないだろう。滑らかなボールタッチ、華麗なフェイント、俊敏な足さばき……。技術がないとドリブル突破はできない。中村もフェイントで相手を抜く選手のことをうまいと感じるものの、それが“真のうまさ”ではないと言う。

「相手を抜ける=うまいではないと考えています。ドリブルはあくまでもチームとしてゴールを決めるための手段です。1人で2人、3人を突破できることはすごいプレーですけど、ドリブルで相手を突破することが目的になる傾向があり、それは本質的ではない。相手との1対1を突破して“ゴールに結びつける”ことが、ドリブラーの最大値を発揮できるものですから」

サッカーはゴールネットを揺らす回数で勝敗が決まるスポーツだ。すべてのプレーの目的はゴールを奪うこと・ゴールを守ることであり、サイドを突破できれば得点率アップにつながる。では、相手3選手に囲まれているのにドリブルを仕掛けたらどうなるか。もちろん突破できれば、一気に相手3人を置き去りにできるため、得点の可能性はぐんと高まるだろう。しかし、ボールを失ってカウンターを許すと、自チームの失点リスクが大きくなってしまう。中村は「自分の能力を生かしてチームの得点に結びつけられる選手が、サッカーがうまい選手」と定義した。

その代表例が、世界最高峰のプレミアリーグ屈指のドリブラーで、川崎Fで一緒にプレーした三笘薫だ。

「本当に判断がバツグンでした。自分のマークが1人なら抜きに行くし、カバーしてきたらマークをうまく引き付けてからパスを出す。チームとして得点を取れるプレーをしていました。相手を抜きたいからドリブルをするのではなく、あくまでもチームが点を取るための手段ということをちゃんと認識しているからこそ、『うまい』と思っていました」

選手とはたいてい、自信のあるプレー、得意なプレーをもっているものだ。パスなのか、ドリブルなのか、シュートなのか。それらを使い、状況を的確に判断して最適なプレーを選び、チームの得点に貢献できる選手がうまい選手なのだ。

「いちいちうまい、いちいち正解の選手って、いるんですよ」と続ける。

「イニエスタやヤットさん(遠藤保仁/現ガンバ大阪コーチ)と対戦する時は、自由にやらせたら、自分たちが確実に不利益をこうむる。うまい選手は状況を的確に把握できているから、何気ない横パスにも相手の陣形を乱すなどの意味をもたせているんです」

これまで一緒にプレーしてきた選手や対戦してきた選手を振り返ると「立ち位置」「ボールコントロール」「見る力」の3つが優れている選手をうまい選手だと感じてきた。それはボールを持っている時も、ボールを持っていない時も、だ。

「オフザボールのランニングで相手を意図的に動かせるか。自分たちと相手の形を理解して、空いているところを突く。僕は常に相手の嫌がることをしようと考えてプレーしていたので、性格が悪い選手でした」

うまい選手の究極形は、相手が嫌がる“性格の悪い選手”なのかもしれない──。

たくさん見て、うまくなる

どのようにすれば我が子がうまい選手になれるのか。

親であり指導者でもある中村は「走るタイミング」の重要性を説く。

「いつ走るかを親子で共有することで、子供をいい方向に導けると思います。つい『走れ!』と言ってしまいますが、それを聞いた子供は、がむしゃらに走ることは頑張るんですけど、結果的にオフサイドになることが多い。まずはオフサイドにならないように、いつ、どこに、どのスピードで走るかを伝える。育成年代は走りの質が伸びしろだし、突き詰めると他の子と差をつけられます」

さらに、うまくなるためには「見ること」が大切だと付け加える。

「自分のプレーを映像で振り返ることに加えて、Jリーグや海外サッカーなどの試合を見てください。最初は漠然とで構いません。いろんな試合を見ていくことで、自然と自分の見るポイントが確立されていきます。大事なのは、映像と似たシチュエーションになった時に正しいプレーをできるかどうか。プロのいいプレーと自分のプレーとを照らし合わせながら見ることで、正しい状況判断が身につく。たくさん見ることが大切です」

では、親はどうすればいいのか。「親が気づくべき『うまい』プレーとは?」の議題で、会場に集まったサッカー少年少女の保護者にアドバイスを送った。

「いい崩しの時の動きを保護者もストックとしてもっておくことが大事です」と中村が話すと、聞き手の中西も「親も良かったプレーの理由を理解して言語化し、子供に伝えたり、子供に問いかけて話してもらうことが大事ですね」と呼応した。

その後、話題は我が子に対する親のアプローチに。サッカーをうまくなってほしいという愛情あふれる親心と、携わる選手の力を最大限に伸ばしたいという指導者マインドの両面をもつ中村だからこその考えが存分に語られた。

メモや写真、動画に残して一つでも多くの学びを持ち帰ろうとする参加者に語りかける姿は非常に物腰柔らかで、ていねいだった。周知の事実ではあるが、やはり性格が悪いのはピッチ内だけである。親の気持ちに寄り添い続けた45分だった。

【冒頭4分公開 #05】
中村憲剛(+中西哲生)
「ピッチの問題を解決する“サッカー”がうまい選手とは?」

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