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中沢新一著『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読む

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中沢新一氏の著作『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読み解きます。
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2020年12月の記事一覧

ユングの「変容」ー言語的無意識(アーラヤ織)のさらに先へ 中沢新一著『レンマ学』を精読する(9)

ひきつづき中沢新一氏の『レンマ学』を読んでいる。 今回は第八章「ユング的無意識」である。 無意識と言えばフロイトとユングである。 中沢氏はフロイトの無意識とユングの無意識を、「レンマ学」の言葉で次のように言い換える。 「フロイトの無意識もユングの無意識も、同一のレンマ的知性の働きに根ざしているものであるが、それが混合態で現れるか(フロイトの場合)、純粋態であらわれるか(ユングの場合)の違いがある。」『レンマ学』p.182 フロイトの無意識は「レンマ的知性」の混合態で

無意識-言語-脳をつなぐ「アーラヤ織」 ー中沢新一著『レンマ学』を精読する(8)

中沢新一氏の著書『レンマ学』を読む連続読書note、今回は第七章「対称性無意識」を読んでみる。 これまでのところで「生命」や「言語」が、レンマ学の概念の組み合わせを通して捉え直されてきた。そして第六章、第七章、第八章では「無意識」の概念がレンマ学の概念たちのペアからなる構造に写像され、新たにレンマ学的な対象として浮かび上がることになる。 無意識という概念の発見、あるいはフロイトによるその深化は、「近代」から「現代」への切り替えポイントであるとも言える。 無意識の発見が、

「生命」と「言語」をレンマ学的に理解する ー中沢新一著『レンマ学』を精読する(7)

中沢新一氏の著書『レンマ学』を読む連続読書noteである。 今回は107ページから、第五章「現代に甦るレンマ学」を読んでみよう。 レンマ学は、仏教の華厳の思想を考え方のモデルとして、人間の存在をロゴス的知性とレンマ的知性がハイブリッドになったシステムの運動として記述してみようという試みである。 私たちが日常いろいろと考えたり感じたりしているときの意識は「ロゴス的知性」の働きが前面に際立っている。ロゴス的知性は事物を区別して並べる働きをする。私たちは世界を互いに区別された