占領下の抵抗(注xxi)
三島由紀夫を志賀直哉と結ぶ線で理解しようとする時、その補助となるのは坂口安吾ではないかと思います。
三島は戦後の無頼派と呼ばれた作家達の中で、太宰治よりも坂口安吾を高く評価していました。
坂口安吾全集の推薦文で三島は
と述べた後、
と述べています。
坂口安吾は何をどのように洞察し見透かしたのだろうか?
有名な「堕落論」の中で坂口安吾は述べています。
だからこそ
のであり、その必要によって生まれた武士道は
これが三島由紀夫が拘った武士道に関する坂口安吾の既定だとすると、
もう一つの三島の思想の鍵である天皇については
どうだろうか?
「天皇陛下にさゝぐる言葉」の中で坂口安吾は述べています。
このような武士道と天皇に関する坂口安吾の洞察を三島由紀夫は受け入れていたのだろうか?
受け入れていたと考えると、三島の武士道と天皇に関する発言と思想も、だいぶ違って響いて来ます。
それは本文中で取り上げた志賀直哉の
と云う朴訥な認識とも更に近づいて感じられて来ます。
引用文献:
① 決定版三島由紀夫全集34
著者 三島由紀夫
発行 2003.9.10. 2刷2012.10.5.
発行所 株式会社新潮社
所収 無題(「坂口安吾全集」推薦文)
〈初出〉坂口安吾全集 内容見本・冬樹社・昭和42年11月
〈初刊〉三島由紀夫全集33・新潮社・昭和51年1月
②「堕落論」青空文庫
2006年1月11日作成 2012年5月19日修正
底本:「坂口安吾全集14」ちくま文庫、筑摩書房1990(平成2)年6月26日第1刷発行
底本の親本:「堕落論」銀座出版社 1947(昭和22)年6月25日発行
初出:「新潮 第四十三巻第四号」1946(昭和21)年4月1日発行
③「天皇陛下にさゝぐる言葉」
青空文庫 2007年2月18日作成
底本:「坂口安吾全集 06」筑摩書房 1998(平成10)年7月20日初版第1刷発行
底本の親本:「風報 第二巻第一号」
1948(昭和23)年1月5日発行
初出:「風報 第二巻第一号」1948(昭和23)年1月5日発行
この記事は↓の論考に付した注です。本文中の(xxi)より、ここへ繋がるようになっています。
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