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【解説シリーズ第5弾】SALES PITCH 〜突出し、勝てる商談ストーリーをつくる〜

こんにちは。Magic MomentでHiringとAccount Executive担当をしています、渡邊(@Yusuke_W8)と申します。約1年前に出したこちらの解説noteが100越えのいいねを頂戴し、嬉しー頑張るぞ〜と息巻いていたのですが、事業戦略を担当することになったり、採用責任者をすることになったりと相変わらず何でも屋でバタバタの1年を過ごしていたら、気づけば全くnoteを更新できていませんでした。ぐぬぬ。。。

この1年は初回商談に向き合わせていただく機会が結構あり、自分がメンバーの同席をしたり、お客様に初回商談の改善のご提案をさせていただいたり、そんな中で、初回商談だけにテーマを絞ってみっちり話す、というwebinarをやったりもしていました。

ちょっとだけ小出しさせていただくと、初回商談をどのように設計し、価値訴求を最大化するか、ということを解説しています。アーカイブありますので、もしご興味いただける方はぜひ。

5の価値訴求に向けて全て設計し、6以降でそれをフォローする、初回商談の全体像

そして、今回のテーマは、さらにこの5に該当する、価値訴求、セールスピッチに焦点を当てた、9月末に発売されたこちらの本を解説していきます。

今回解説するのは、これまで米国で200以上の急成長スタートアップのセールスピッチを分析してきた、ポジショニングの専門家である、APRIL DUNFORDの『SALES PITCH ~How to Craft a Story to Stand Out and Win~』です。

”セールスピッチ”については、いろんな書籍やNoteで書かれたものがありますが、ここまで体系的かつシンプルにまとまっているものはなかなかなく、とても参考になるとともに、今までの自分の考え方が間違っていなかったと思える内容でした。また、各所でマシューのChallenger Salesも引用されており、ベースとなる考え方が一致しているので、Challenger Salesをバイブルにされている皆さんはぜひ読まれると良いと思いました。

では早速、解説していきましょう!


買うことは、難しい。

この本は、マシューのチャレンジャーセールスや、JOLT EFFECTに大きく影響を受けています。ですから、JOLT EFFECTでの主題になっていた、”顧客が決断できない”という問題から同様に始まっています。情報は多く、選択肢も多い。失敗の可能性もあり、それを恐れている。最も簡単で安全な、購買における意思決定は、何も決めないということである、と。

JOLT EFFECTでは、これらを6つのコミュニケーションの改善で、克服していくことが書かれていました。

決断できない状態であるかをジャッジしよう
あなたのおすすめを提案しよう
顧客が情報の海に溺れることのないようにしよう
リスクを減らす提案をしよう
エージェンシー問題を乗り越えよう
JOLT-ingなカスタマーのロイヤリティを獲得しよう

THE JOLT EFFECTで述べられた6つの方法

これを、コミュニケーションという抽象度の高いものから一段下げて、スライドや、デモなどを含めた、セールスピッチではどうすべきか?ということでより具体化したものが、この本に書かれている内容です。彼女は2019年にポジショニングについての本を書いていますから、これらの内容を実践的な内容に統合したものとも言えるでしょう。


最も優れたセールスピッチの目的は?

彼女のファーストキャリアでは、営業企画的に、ピッチを作る仕事をしていました。過去の慣習を引き継ぎ、社員数や調達金額のスライド、所狭しと並んだロゴ、どの会社でもそう言えてしまいそうな抽象度の高い課題、メインメニューをなぞる機能紹介のデモ、価格表、といった構成でいつも作っていたそうです。

次のキャリアでは、彼女はマーケティングの執行役員になりました。ポジショニングについてしつこく考え、ストーリーで語ることを意識していたそうです。そこで気づいたのが、営業メンバーはほとんどポジショニングや会社の歴史についてピッチの中で触れていないということでした。

そして、彼女がIBMへ籍を移した際には、営業担当者が、マーケットを俯瞰した視点からピッチを始めていることに気づき、驚いたそうです。その後、他のスタートアップに移り、セールスの役員とIBMのやり方を真似て成果を出し、その後様々なスタートアップでそのやり方で成果を出していったそうです。これらの彼女のキャリアとセールスピッチへの考え方の変化が、本書の着想の起点になっています。

最も優れたセールスピッチの目的は、トレードオフになる全ての選択肢と、あなたのソリューションを選んだ時に起きることを全て、顧客が理解するのを助けることである。

SALES PITCH P67より引用


セールスピッチの構造

理想的なセールスピッチには、一般的な代替手段も含めてマーケットの全体像を見込み顧客が理解するのを助け、深いところで営業が議論をできるような内容が盛り込まれています。また、他の選択肢と違うクリティカルな独自性を見込み顧客が理解し、自然とデモに引き込まれ、ネクストアクションの設定に至る、そういった内容になります。こうした理想的な内容を構造化すると、下記のようになります。

SALES PITCH P71より引用

セットアップとして、あなたのソリューションを理解する下地をまず作ります。インサイドセールス、ナーチャリングの段階である程度の理解度は揃えておく必要はありますが、それでも商談の開始時点で、市場の全体観、顧客の理解度がバッチリ、ということはほとんどありません。何がわかっていて、何がわかっていないのか。また、過去の経験からどう思っているか、ということを理解し必要な情報提供を行うことができないと、その後のソリューション紹介が、全く相手に刺さらないということが起きます。

全てはポジショニングから始まる

優れたセールスピッチは、ポジショニングに基づいたストーリーになっています。ですから、ソリッドなポジショニングを固めることから始めましょう。

①Competitive Alternatives(競合)
②Unique Capabilities(独自の能力)
③Differentiated Value(差別化された価値)
④Best-Fit Customers(理想的な顧客)
⑤Market Category(市場分類)

SALES PITCH P78 ポジショニングの5要素

もしあなたのソリューションが存在しなかったら、どんな競合がいるのだろうか?と考えてリストアップをしてみましょう。自分達だったら何ができて、競合だったら何ができないのか?を考えていきます。次に、これらの能力が顧客や購買担当者にどんな価値をもたらすかを想像しましょう。この価値が一番多く届く顧客が、理想的な顧客です。そして最後に、市場のカテゴリー分類を定義づけます。ターゲット顧客にとってそれが明らかになるようにすることで、あなたは商談で勝つことができるでしょう。


ストーリーボードを作ろう

ストーリーボード、日本語にするとアニメや映画で使用される、絵コンテという意味になりますが、ピッチを作る際にはまず、ノートを四角で区切って、ピッチの要素を分解して下書きしておく必要があります。これをせずにいきなりスライド作成に入ると、ストーリーが通らず作成時間がとてもかかってしまいます。まずは手書きでやるのをお勧めします。ここからは、先ほど紹介したそれぞれの要素について解説していきましょう。


Step1:INSIGHT 価値につながるインサイトを

マーケットインサイトから始まるセールスピッチの何が良いかというと、その領域における経験や知識からくる権威性を引き立たせ、最終的に差別化された価値につながる定義づけが行われます。他の選択肢から、あなたのソリューションへ自然と話を移行していくことができます。

では、そのインサイトはどうやって作っていくと良いでしょうか。まずは、なぜ理想的な見込み顧客にとってあなたのソリューションの独自な価値が重要であるか?を理解するために、何を知る必要があるか?を考えてみましょう。

マーケットが抱える問題ばかりに目を向けてはいけません。よくあるのは、下記のような表現ではないでしょうか。

お客さんはXXXや、XXXといった問題を抱えています。なので、我々のソリューションは・・・

よくある、課題から始めるピッチのスクリプト


そうではなく、下記のような表現になると思います。例えば、日本の大手企業へ提案をするピッチでは、こんなイメージになるでしょうか。

日本の大手企業では、XXX(過去の問題)を解決するために、XXX(時期)から、XXX(市場で認識されている一般的な手段)をとることで解決しようということをしてきました。その結果、一時的には問題は解消されたものの、結果としてXXX(現在の問題)ということが起きるようになりました。これを解決する手段として、XXXやXXX(代替手段)といったものも出てきておりますが、これらはXXX(自社のポジショニングにつながる制約条件)といった理由で、XXX(競合の理想的な顧客)といった一部の企業にのみ有効な手段となっています。我々はこれまで、XXX(過去の実績)の経験や、そこから得た知見を通じ、XXX(独自性の高いアプローチ手段)という手法をとることで、この問題を大きく改善できるソリューションを持つに至りました。ですから、この問題を解決できるのは我々だけだという市場理解のもと、社運をかけてこのソリューションへ投資を行い、事業を順調に成長させています。

例えば、こんなスクリプトがインサイトを含んだピッチのイメージ


過去や現在のマーケットで認識されている問題、またそれらの一般的な解決手段や、競合にあたるその他の手段の概要、自社の沿革や実績といった情報を散りばめています。これらの情報を顧客が商談前にどこまで理解しているかは、極めてバラバラな状況であり、状況をコントロールするのは非常に困難です。ですから、セールスピッチの序盤で情報提供を行い、その後の話が入っていく下地を作るのです。

なお、これらの情報は、人によっては何度も説明されてうんざりするものも含まれる可能性があります。なので、インサイドセールスでできるだけ理解度を確認したり、商談冒頭の自己紹介で過去のプロジェクト経験を伺い理解度のレベルをはかったりすることで、聞き手がちょうど知らない、Newな情報から提供していくことが必要になります。


Step2:ALTERNATIVES 代替手段は何か?

多くの営業は、競合を悪くいってしまうことが心象が悪いと考え、競合について語ることを避けます。しかし、購買担当者が良い選択をするためには、マーケットを理解し、問題を解決するためのさまざまなアプローチについて、そのプロコン(メリデメ)を理解しておく必要があります。

最も簡単に市場を理解するには、構造化されていない個別具体のプロダクトやベンダーのリストを眺めるのをやめ、ベンダーを問題に対してとられるアプローチ方法によってグルーピングすることです。良い営業は、個別のプロダクト比較よりも、このアプローチの方法を比較します。

購買担当者は、以下の3つの手順で購買を進めていきます。

1、問題を明らかにする
2、ソリューションの必要要件を明確にする
3、複数のベンダーを検討する

SALES PITCH P120

多くのスタートアップは、これらの手順の中で、自社のソリューションは他に競合のいない新しいソリューションだと思っています。しかし、あなたのソリューションが解決できることは、いつも他に解決するための手段が存在しています。手作業やスプレッドシートも含めてです。ここで大切なことは、直接的な競合だけでなく、あらゆる競合が存在するということです。

まさに木下さんがおっしゃっているこれ↑です。これらの競合を理解して、はじめて顧客が見ている世界と営業が見ている世界がすりあってくるわけですね。

バイネームではなく、グルーピングをすることで、あなたのソリューションの価値が伝わりやすくなります。例えばこんな形で、見込み顧客が見ている全体像に対して、アプローチを網羅的に整理する必要があります。

プロジェクト管理ツールにまつわるプロコンの整理例

よく経験の浅い営業が陥る落とし穴は、この整理をもとに、顧客にペインや問題を聞いて、さも顧客が求めているものがもうわかっているのだと言わんばかりに話を進めていってしまうことです。この段階では、見込み顧客はまだ判断基準が固まっているわけではありません。前提条件を理解することに徹すること、またそれを助けるために、類似する状況の他のお客さんがどう考えているのか?という情報を提供するようにしましょう。

できるだけスライドはシンプルに少ない言葉で。顧客と議論を重ねながら、全体像を共有するのが、このステップの目的です。


Step3:THE PERFECT WORLD 理想的な顧客は誰か?

セットアップ、下拵えの最後のステップです。このステップの目的は、購買担当者が理想的な顧客だとしたときに、自分が信じる購買に向けた判断基準を明確に伝え、顧客に合意をしてもらうことです。何が顧客にとって重要で、何が重要でないかを相互理解することです。

理想的な状況を想定した時、貴社のXXX(前提条件)という前提の中では、XXX(問題)を解決するためには、XXX(プロコンで整理した内容)ということが最も重要であるという理解をしています。あっていますか?

例えば、こんなスクリプトで合意形成をしていく


この、”あっていますか?”がめちゃくちゃ重要です。ここで合意を得られていなければ、その見込み顧客はQualifyされていないと言えます。つまり、本質的にはその顧客にはそれ以上やっても売れないということです。一方、”そうだね”という回答を貰えたのであれば、あなたとあなたのソリューションが価値提供をできる顧客だと言えます。ここからは、どのようにその価値が提供できるかを説明し証明していけば良いわけです。

セールスプロセスにおいては、複数の重要な合意形成のポイントがあります。こうした重要なポイントにおいて合意を得られぬまま進めた商談は、ほとんどの場合失注するか、受注できたとしても、価値が発露されずチャーンしてしまうという悲しい結果になります。その購買に関わった全てのステークホルダーにとって、リソースやコストの無駄遣いを招く、こうした振る舞いを減らしたいと、私はリクルートでの営業時代から思っており、それを組織へ実装できる手段としてPlaybookという概念に出会い、私はMagic Momentへ入社しました。

全ての商品の価値が発露するために、正しい顧客に正しく営業をする。そのための合意形成で紡がれたストーリー(エンゲージメント)を設計する。これこそが、最高効率の良い営業の基本だと思っています。


Step4:THE INTRODUCTION プロダクトを紹介しよう

さあ、いよいよプロダクトの紹介に入っていきましょう。単一のプロダクトであれば、それに集中していけば良いです。一方、複数プロダクトを持つ企業の場合、会社ができることを全て並べて、ポートフォリオのようにプロダクトを説明してしまうことがあります。うまく図を使って説明していきましょう。

ファミリー的な図の見せ方をして、相互にうまく連携ができることを示すやり方や、プラットフォーム的に見せるやり方もあります。また、いかに既に導入しているシステムと連携できるかを示すようなやり方もあります。

このパートはできるだけサラッとお話しし、次の価値をどう届けるかという話に時間を使うようにしましょう。


Step5:DIFFERENTIATED VALUE 差別化ポイントは何か?

マーケティング・セールスの全ての中心がここ、価値訴求にあります。ここでは、独自の差別化された価値が、どのようにプロダクトやサービスによってもたらされるのか、顧客が理解できるようにしましょう。

デモとスライドを併用する場合、スライドで価値について伝えた上で、それをデモで示していくというのが良いでしょう。できるだけスライドは手短に、デモで伝えるのが良いです。ここで重要なことは、機能や特徴が伝わることではなく、価値がきちんと伝わるということです。

プロダクトがどう動くのか?というのは、最もよくその価値を伝える手段です。どのように動くか説明するより、見せたほうが早いです。ただ、これはプロダクトを手順ごとにだらだらと説明するということではないです。目的は、どのように差別化された価値がプロダクトが動くことによりもたらされるかをきちんと伝えることです。ですから、独立した3つの価値があるのであれば、それぞれごとにデモが必要、ということになります。

我々は、Aという価値、Bという価値、Cという価値をもたらします。
まず、Aについては、XXという機能がこの価値をもたらします。
次に、Bについては、XXという機能がこの価値をもたらします。
最後に、Cについては、XXという機能がこの価値をもたらします。

SALES PITCH P153

顧客により複雑な個別設定や組み合わせが必要な時は、スライドのみでピッチをするのも良いでしょう。インプリ(導入運用)のイメージがつくような書き方をし、差別化された価値につながるような能力が明確になっていることが必要です。また、初回商談ではスライドのみでピッチをした場合も、セールスプロセスのどこかでは、しっかりとカスタマイズをしたデモを見せておく必要はあるでしょう。

ここで注意なのは、セキュリティ要件といった反対者と議論になるポイントはこのステップでは論じるべきではないということです。これに該当する内容は、Step7のオブジェクションハンドリングのところで話すようにしましょう。

また、このステップでやり切るべき”価値訴求”は、チャレンジャーセールスモデルにおける、”商談直結形の指導”において、必要だとされていた4つの項目を実行した上で成し遂げるべきだった価値訴求とも重なります。

①自社独自のベネフィットを明確にする
②顧客の考え方を覆すインサイトを生み出す
③顧客を誘導するメッセージのなかに、インサイトを埋め込む
④販売員が顧客を挑発できるようにする

チャレンジャー・セールス・モデル P122/マシュー・ディクソン&ブレント・アダムソン

交渉分析をたて、行動計画を立てていくにも、”喉から手が出るほど、そのソリューションに対しての価値を感じていないと”、そもそもの交渉の土台にも乗らないし、チャレンジャー的振る舞いをしてもスベってしまう、ということなんですよね。セールスピッチで、いかにプロダクトがその価値を作り出すのか理解してもらえれば、この状態に持ち込めるというわけです。

Step6:PROOF 顧客を後押ししよう

顧客は購入を意思決定しその価値を享受する上で、さまざまな係数を気にします。享受できる価値の大きさはもちろん、リスクを下げる要素(早く、安く、楽に、確実に)できればできるほど、導入に前向きになるでしょう。

例えば下記のようなものが、よく使われます。

顧客事例
第三者による検証
認証
顧客の統計データ
顧客の声
産業レポートからの引用やレビュー
第三者による産業のリサーチやサーベイ
表彰

SALES PITCH P164

できるだけ、顧客の状況に近い情報を使用するようにしましょう。
全ての価値に対して証明しにいく必要もありません。顧客にとって最も課題解決につながる価値について、説明できるようにすると良いでしょう。

Step7:OBJECTIONS 不安を解消しよう

全ての質問に答えられるのが良い営業だと思うかもしれませんが、典型的な質問については、商談でその質問が出てこようとこまいと、答えられるようにしておくべきです。例えば下記のような内容が多いでしょう。

・実装が難しそうです
・高すぎます/予算が足りません
・エンドユーザーが順応して使い始めるのが難しそうです
・全部はいらなくて、一部あれば良いのです
・レギュレーション(セキュリティやクラウド申請、リーガルなど)を守らなくてはならないです

SALES PITCH P170

オブジェクションハンドリングをするとき、いつも頭に置いておくべきは、
”人は決断できない”、もう少し言うと、”人間は変わりたくないという本質を持っている”ということです。

議論がきちんと前に進むために必要な質問をされているときもあれば、反対者として、あえて難しい質問をぶつけてきていることもあるでしょう。

意思決定フェーズで結論を出すための論拠を組み立てている段階において、情報量が40-70%の段階では勝率が42%であるのに対して、情報量が70%を超えると、勝率は16%にがくっと下がります。ですから、冗長に説明をすることはやめて、顧客が評価し判断するのに必要な範囲に情報を止めるようにしましょう。

THE JOLT EFFECT ~営業プロセスにおいて顧客が”決断できない”という人間の本質とどう向き合うか~ より

いわゆる重箱の隅を突いている状態です。情報も多ければ多いほどいいと言うことでもありません。判断すること、そのために理解することに対して、必要な情報の範囲はどこまでか?ということを常に考えて、顧客とコミュニケーションをするように意識していると、自ずと対面する相手が、本当に案件を進めてくれようとしているのかは感じられるようになっていきます。


Step8:THE ASK ネクストアクションを決めよう

価値訴求が完了し、不安も無くなりました。ここからは、全てを具体的かつ明確に合意していく必要があります。いつ、何があるので、それにむけて何が必要か。だれ・いつ・なにのレベルで決定する。それが明確でないときは危ないサインです。

基本的に、全てのプロジェクトは1日でも早く価値を発露できる状態が望ましいです。ゴールから逆算していく必要があるので、コンペリングイベントを設定して、そこから逆算していくようにしましょう。例えば、XXヶ月後のIR時点では成果を報告できるように、XXヶ月後までにはXX程度の成果が必要である、といった具合です。

こちらに向けて、主には下記の4つを合意するようにしましょう。

誰をPoCに巻き込むか
追加のMTGが必要か
他に必要なステップはあるか
必要なステップがあるとすれば、どうすれば完了できるか

SALES PITCH P177

優れたセールス組織では、受注までの明確なステップがドキュメントになっているものです。もし新しい会社で営業の自主性や積極性が欠けるのであれば、初回昇段の後の工程をみんなで一致させることから始めることをお勧めします。

4回商談で受注しようと思っている営業と、1回商談で受注しようと思っている営業では、全くゴール設定や事前準備、当日の内容の濃度が異なります。ここを標準化するだけで、リードタイムが半分になれば倍の案件を持つことができるようになり、単純に成果は倍になります。それくらい、このステップをしっかりやっていくことは、成果に大きく影響する取り組みになるでしょう。


ストーリーボードをセールスピッチに昇華しよう

さて、これで全てのピッチの要素が揃いました。これらの内容を、どこでスライドを使うか、どこでデモを使うか。どんなスクリプトにしていくかを決めていきましょう。

セールスピッチは、汎用化された一つのものにするのが良いでしょう。作っておしまいではなく、常に磨き込むことが重要です。例えば、ポジショニングを常に最適なものに調整し続けるために、複数のパターンが存在してしまうと、メンテナンスコストが膨大になってしまいます。一つのものを使うから、どこに問題があり、どこを改善したらいいかわかります。また、一つの最善のピッチがあることで、新人のオンボーディング、育成にも使うことができます。

おすすめの方法は下記になります。

Insight - スライド必要
Alternatives - キーとなるプロコンのスライドのみを準備し、基本は会話ベースで行うのが良い
The Perfect World - スライドなしでも可
The Introduction - スライドあり。他ツールとの連携なども図示する
Differentiated Value - スライド&デモ
Proof - スライド(事例・ロゴ)
Objections - スライドなしで会話ベースで行うと良い
The Ask - スライドに明記し議論する

SALES PITCH P190

スクリプトは一字一句まで作成しなくても良いです。ブレッドポイントで重要な要素だけを必ず抑えられるようにしましょう。


ピッチをテストして、使い始めよう

多くの営業は何百何千回と、長い間使い続けて手垢のついたセールスピッチを持っています。ですから、経営や営業推進がおろしてきた、新しいピッチを嫌うのは自然な反応です。お勧めは、まず社内で一目置かれ、尊敬されている一人の営業の方が作り込み、これを営業やマーケティングの責任者にレビューをしてもらうことが望ましいです。まずは社内で調整を重ね、準備ができたところから、可能性の高い見込み顧客へも使い始めるようにしましょう。

社内もしくは一部の顧客でテストをするときは、下記の観点を注意してみておきましょう。

・どこで見込み顧客が興味を失ったか
・どこで見込み顧客がワクワクしていたか
・ピッチがよくわからなくなったり、混乱したりしてしまったことにより起きた質問があったか

SALES PITCH P198

これらに注意してしばらくは改善を重ねましょう。営業がこれ以上改善や検証をする必要がないと感じたり、明らかに以前のものより良いと感じ、使い始める意思決定をできたら、それが成功の証です。

どんな営業も、最高のピッチ、と言われると自信を持って言えるものはなかなかわからないですが、それが以前のものより良いかどうかははっきりとわかるものです。

また、失敗するときはその営業をうまく巻き込めなかったり、ポジショニングが弱いときです。ポジショニングが弱いのであれば、ここからまた見直しを始めましょう。

セールスピッチが出来上がったら、営業組織全体に広げていきます。
このときは、リーダーシップをとれるマネージャーやリーダーへ先にインプットを行い、その後にメンバーに広げていくと良いでしょう。リーダーは先にそのピッチを使い成果を上げてくれます。その成果が、メンバーが新しいピッチを死に物狂いで習得したい、と思える根拠になるからです。

また、資料・デモ環境・スクリプト・動画の4点セットで必ず最新版を常に営業が手元に置いておけるような状況を作りましょう。一番よくあるのがは、一連の取り組みが、一度完遂された後は放置されてしまうというケースです。営業企画や営業推進であれば、本当に共感していただける事案だと思います。誰がピッチに対してのオーナーシップを持ち続けるのかと言うことを、明確にしておく必要があります。本質的には、セールスと、ポジショニングの両方に責任を持てる方、事業部長やCRO(Chief Revenue Officer)といった役割の方がそれに当てはまるでしょう。

また、ピッチの内容について、よくある失敗も先に上げておきましょう。

・スライドを200枚も超えるような大作にしてしまう
・インサイトをあまりにもユニークにしようとして奇をてらってしまう
・Alternativesのところで、議論をせずに説明だけして終わってしまう
・前半のセットアップにピッチの時間を使い過ぎてしまう
・弱い、もしくは独自性の低い価値で戦ってしまう
・Proofで話す内容が顧客の状況にあっていない
・Askで顧客に依頼する内容が複雑すぎる

SALES PITCH P203

以上を改善、営業組織全体に浸透をすること、また定期的な改善をし続けることで、最高のセールスピッチへ向けた改善の旅が始められます。

全てを、セールスピッチから始めよう

まとめです。顧客が自信を持って判断できるようにすることに、全集中しましょう。というのがこの本でもっとも筆者が伝えたかった内容だと思います。

1、売ることは難しい
2、もっとも恐るべき競合は、”何もしない”という判断です
3、セールスピッチは特別です
4、偉大なセールスピッチは、その会社が持つマーケットに対しての独自のインサイトから始めます
5、顧客が取りうる選択肢についての理解を助けることで、彼らが自信を持って判断できるようになります
6、差別化された価値が、最も魅せるべきものです

SALES PITCH P219

セールスピッチの改善は、その効果が見えづらく、多大な工数がかかるプロジェクトでもあるため、なかなか実行されないことも多いです。ただ、効果が見えづらいというのは、効果が見えるまでやり切れる営業組織がほとんどないということも示しています。

顧客に、一歩踏み出す後押しをするべき営業が、自分達が一番変わりたくないと思ってしまっているのは、かなり滑稽なことではありますが、ただそれもまた、人間の性でもあります。圧倒的に誰かが成果を出すこと、その熱狂が周囲に伝播して、変化の起点になることがほとんどですし、だからこそ営業変革はとても時間がかかり大変な仕事なのです。

この本に書いてあることを実行できれば、相当な成果を得られるでしょう。ただ、それに対して、リソースや、変化のきっかけとなる圧倒的な成果が必要であれば、弊社Magic Momentへご相談ください。いつでもご相談お待ちしております。

結局は、自分達の価値は何なのか?そしてその価値を届けられる、正しいお客さんは誰なのか?ということを、自社に閉じずに顧客に伝えるということを目的に整理できるのが、セールスピッチを作る、改善するという作業の良いところです。そして、価値起点のセールスをしていくためには、この作業は最も重要な工程であるとも言えます。まず、セールスピッチから始めましょう。それからプロダクトやマーケを見直しましょう。そしてまたセールスピッチに戻りましょう。みなさんの素晴らしい事業が、顧客に目減りすることなく価値が届いていくという状態は、関わるステークホルダーの誰にとっても、手応えがあり力がみなぎるプロジェクトになるでしょう。私は、世界の景色を大きく変えるのは営業だと信じています。皆さんの営業活動が、実り多きものになりますように。

12月、期末の方もいれば、Q末の方もいらっしゃるでしょう。
皆様体調には気をつけていただき、”良い営業”していきましょう!!!


追伸

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弊社Magic MomentではSales Engagement Platformと呼ばれるSaaS「Magic Moment Playbook」および、「CS BPO」と呼ばれる営業変革サービスを中心に、幅広く事業拡大を進めています。営業でお困りの方はぜひお声がけください。

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